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風の行く先  作者: 遥ゆとり
2章 高校編

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「……あ、の」

 たまきの遠慮がちな声に、梧は我に帰った。

 慌ててたまきから離れ、

「悪い」

 と、少し距離をとる。たまきから顔を逸らし、気まずさに顔を隠すように口元を手で覆った。

 たまきは胸元をかきよせて、心臓の音を鎮めようと深く呼吸を繰り返す。


 しばらくして、二人はほとんど同時にため息をついた。

 そのタイミングが重なったことに、二人は顔を見合わせ、照れと気まずさが入り混じった笑みを浮かべた。

「……帰るか」

「はい……」

 

 帰りの車内はとても静かだった。

 まだ熱は引かないまま、梧と紫露の間で何があったのか聞くこともできず、たまきはずっと窓の外の流れる景色を眺めていた。


 家の前に着くと、梧はいつものように助手席のドアを開け、「今日は本当に、悪かった……」と、申し訳なさそうな顔で謝ってきた。

 たまきは首を横に振って、「いいえ!大丈夫です!」とは言ったものの、さっきのことを思い出して、また顔が熱くなる。

 梧は、その頬に吸い寄せられるように手を伸ばしたが、途中でためらい、その手を握りしめた。

 たまきはその手の動きを見つめた後、梧と視線を合わせて、微笑む。

「……紫露のことは大丈夫ですよ、きっと」

 まだ梧が不安なのだろうと思ったたまきは、安心させるように励ましの言葉を言った。

 梧は一瞬目を見開いたが、やがてその優しさに降参したように、柔らかく目を細める。

 その様子にほっとして、たまきも微笑みを深め「それじゃあ……、ありがとうございました」と軽く頭を下げると、玄関の方へ踵を返す。

 名残惜しくその背中を見つめていると、たまきは玄関の手前で立ち止まって振り返り、はにかみながら小さく手を振ってきた。

 梧が手を上げてそれに応えると、たまきは会釈をして、家の中に入っていった。

 玄関の扉が閉まった後も、梧はその余韻を噛み締めるようにしばらくその場に佇んでいた。そして、ゆっくり息を吐くと、静かに帰路についた。

 

 その日、たまきは気になって、紫露に“どうして先に帰ったの?”とメッセージを送ってみた。

 紫露からは”課題がやばいほど出てる”というメッセージと泣き顔のスタンプが返ってきて、たまきはなんだかほっとした。

 梧の雰囲気からして、良くないことが起きているんじゃないかとも、少し思ったから。

 ”それならそう言ってよ!”とたまきが返すと”ごめん”と来たっきり、連絡は途絶えた。

 だけど、紫露も忙しいのだろうと思い、たまきも夏期講習で勉強漬けの日々が再開して、紫露のことは次第に気にしなくなっていった。

 

 ――――――――――――――

 

 あっという間に夏休みも終盤になった。

 インターハイですっかり有名人になった心悠は、各所の取材、市長への表敬訪問や、陸上部保護者会による慰労会と忙しくしていて、まともに会えていない。

 よっちんとさっちょんにも聞いてみたが、彼女たちも慰労会以外は会えていないと言っていたから、相当忙しいのだと思う。

 心悠と二人で食事にでも行って、ささやかでもお祝いしようと思っていたけど、落ち着くまでまだしばらくかかりそうだった。

 少しそれを寂しく思いつつ、たまきは勉強に励んでいた。


 その日も夏期講習を終え、帰ろうと外へ出た時のことだ。

「あの……」

 と、同じく夏期講習を受けていた一人の青年に声をかけられた。

 背は、紫露よりも少し高いくらいで、しっかりした体形、ベリーショートの爽やかな青年だった。

 同じ教室にいた気はするが、知らない人だ。何か忘れ物でもしただろうか。

「……はい?」

 たまきは一応、自分に声をかけられたのか、あたりを見渡してから返事をした。

 その青年は、伺うような顔つきで、

「……冴島……たまき?」

 と、たまきの名前を呼んだ。

 どうして知っているんだろうと、たまきは目を見開いて驚く。

「え……?あ、はい……」

「あぁ!やっぱり、たまきだよな!」

 相手の青年がそう言って、ほっとしたように表情を緩めたが、たまきは何が何だかわからない。

 知り合い……?と、たまきは目をすがめて相手を見つめ、首を傾げた。

 それに気づいた青年が、思ったような反応をしてこないたまきの顔を訝し気な表情で覗き込みながら、

「……もしかして、覚えてない?」

 と、言った。

「あの、ごめんなさい……」

 反射的にたまきが謝ると、相手は自身を指さし、

「……佐伯(さえき)琉輝(りゅうき)。覚えてない?」

 と、今度は少ししゅんとした表情で訊いてきた。

「……さえき……りゅうき……」

 たまきはその名前を繰り返した後、「あ!」っと声を上げた。

「りゅうくん!?」

「そうそう!やっと思い出したか~!」

「うそ!全然わかんなかった!」

 佐伯琉輝は、たまきが災害で引っ越すまで住んでいた地区で、近所に住んでいた同級生で幼馴染だ。

 たまきは琉輝のことを下から上まで眺めて、さらに驚いた顔をした。琉輝は小学生のころ、背も大きくなかったし、何より少年野球に入っていて、くりくりの坊主頭だった。

「たまきは全然変わってないから、すぐわかった」

 と言って、顔をくしゃくしゃにして笑う。

 その笑う顔を見てようやく、たまきは彼が琉輝だと実感がわいた。

「……ん?待って。それって私が小学生から変わってないってこと?」

 そう言ってたまきが少し頬を膨らませて言うと、 

「ははっ、怒るとむくれんのも変わってない」

 と、琉輝はさらに大口を開けて笑い声をあげた。

「そんなに笑うことないでしょ?りゅうくん変わり過ぎだよ。野球やってて、くりっくりの坊主でさ、背だって私と変わらなかったじゃん」

 自分の頭のあたりに手をかざし、水平に手を振って見せる。

 今やそれは琉輝の肩よりも少し下のあたりだ。

「さすがにお前より背は高かったよ」

「……負けず嫌いなとこ、変わってない」

「え、ホントの話だろ?だいたい、お前よりチビなんていなかったし」

 得意げになって琉輝が畳みかけると、たまきは口を尖らせた。

「……私のこと、いじめるとこも変わってない……」

 たまきはそう言ってため息をつくとふいっと顔を逸らし、踵を返して、琉輝を置いて早足で帰り道を歩きだした。

「え?ちょ、たまき?あ、ちが……、ごめん。ちょっと調子乗った。ごめんごめん。悪かった。たまきと会えたのが嬉しくて、ついさ……」

 琉輝は慌てて何度も謝ると、たまきを追いかけ、回り込んでたまきの前に出た。

 ツンと口を尖らせていたたまきは、その琉輝の慌てっぷりを見て足を止めると、

「……そーゆーとこも、変わってないね」

 と、言いながら、ふっと笑った。

 困ったように眉をハの字にさせていた琉輝は一瞬動きを止めたが、それを聞いて安心したように脱力した。

「なんだよ、もー。まじで怒ったと思って……」

「怒ってはいるよ?小学生と同じようないじりする人は嫌いだから」

 たまきがさらっとそう言って再び歩き出すと、そのたまきの背中を見送りながら、「……え……」と、呟いた琉輝の表情が凍り付いた。

 再び琉輝はたまきに駆け寄り横に並ぶと、恐る恐る、その顔を覗き込んだ。たまきは横目でちらっとその琉輝を見る。

 琉輝の表情がこわばっているのを確認して、たまきはまたふふふっと笑った。

 すると琉輝は眉間に皺を寄せ、片眉を上げる。

「……おい、たまき……」

 何か文句を言いたげな表情をしたが、琉輝は大きくため息をついて、たまきの隣に並んで歩調を合わせた。

「ごめんごめん。りゅうくんにはいっつもいじわるされてたから」

 そう言うと、琉輝は気まずそうな顔になって、額のあたりを指先で掻いた。

「……それは……、まあ……。ガキだったんだな……」

 もごもごと小さい声で琉輝が言ったのを、よく聞き取れなくて、たまきは「ん?」と首をかしげた。

 琉輝は「何でもない」と首を振ると、たまきは微笑みながら「そう?」と言った後、また前を向く。

「でも、何でいるの?震災の後も、りゅうくんちは地元に残ったよね?」

「あー……、まあ、いろいろあって、高二の夏からこっちに引っ越したんだ」

 歩きながらたまきが訊くと、琉輝はこめかみのあたりを指先で掻きながら苦笑した。

「そうなんだ」

 何か事情はありそうだったけれど、琉輝が言いたくないなら聞くつもりもなかった。

 聞いてほしいなら話してくれるだろうし、それを話してくれなくても、琉輝との関係に変わりはない。

 たまきだって、言いたくないことはある。

「……たまきはどこ受けんの?大学」

 話を逸らすように琉輝が訊いた。

「私?東都医療大学。りゅうくんは?」

「え!?俺も!マジか!たまきも看護師?」

「ううん、私は理学療法士。りゅうくん看護師なの?一緒の大学なんてすごい偶然」

「へえ、そうなんだ。でもそっか……、受かれば春から同級生か」

 琉輝は嬉しそうに顔を緩め、親指で鼻先をこするように触れている。

 そう言えばそんな癖もあったなぁ、と、たまきはぼんやり琉輝を眺めつつ、たまきと同じで喜んでいるなんて、こっちへ来てから一年程、知り合いがいない土地で、寂しかったんだろうなと思った。

 たまきが引っ越したのは小学生の時だったが、その寂しさを思い返してみて、一人でも地元の知り合いが居てくれたら、ほっとできただろう。

 もしたまきにできることがあるなら、力になりたい。たまきの場合、幸運にも、心悠や紫露が居てくれたおかげで、ここまでやってこれたから、二人のようなことができたらいいなと思った。

「りゅうくん、夏休み終わっても塾通う?」

 たまきが声をかけると、琉輝はパッと弾かれたようにたまきに顔を向けた。

「……あ、いや。……俺、とりあえず夏期だけなんだよ。あとはオンライン授業とか受けるつもり」

 琉輝がなぜか視線を迷わせながら答えると、たまきは訝し気な表情で首をかしげた。

 琉輝はさすがに夢のキャンパスライフを妄想していたとは言えず、気まずそうな顔をしつつ「たまきは?夏休み終わってからも続ける?」と話をそらした。

「うん。教科はしぼって、主に自習室使うくらいだと思うけど」

「そっか……。あの、でもさ、たまきさえ良かったら、……たまにどこかで一緒に勉強しねぇ?」

「うん、いいよ。私のバイトしてるカフェ、結構静かだし良いかも」

「マジ?じゃあそうしようぜ。連絡先、いい?」

 その提案にたまきが即座に乗ると、琉輝は嬉しそうな笑顔になった。

「もちろん!」

 たまきも笑顔で答えると、カバンからスマホを取り出して琉輝のスマホにかざし、連絡先を交換した。

 ふと、琉輝はたまきの待ち受け画面に目が留まり、

「それは?」

 と、訊いた。

 それは中学の卒業式で撮った、心悠と紫露の三人の写真だった。

「あぁ、これ?中学の卒業式のときに撮ったの。私の親友と、後輩」

 たまきは嬉しそうにその写真を見つめる。白目の写真だと紫露があんまりにもかわいそうだったので、一番マシそうなのを選んだ。……それでも、十分ひどい泣き顔だが。たまきはあの時のことを思い出して、笑みを浮かべる。

 琉輝はちらっとそのたまきの表情を見てから、目をすがめてまた待ち受け画面に視線を落とす。

「……こんな、ぐちゃぐちゃになるまで泣くなんて、情けねーな。これじゃ頼りになんねーだろ」

 鼻で笑うように琉輝がそう言った。

 すると途端にたまきはムッとした顔をして、

「失礼なこと言わないで。紫露は涙もろいけど優しくて、私が辛い時に助けてくれた、大事な後輩なの」

 と、珍しく強い口調で言った。

「……ごめん」

 ムキになったたまきに圧されて、琉輝は気まずそうに謝り、後頭部に手を当てる。

 その姿勢のまま、しょんぼりと俯いた琉輝を見つめて、たまきは軽くため息をついた。

「……私も、ごめん。強く言っちゃって……。でも、本当に二人とも私にとって大事な人なの」

「いや!……今のは俺が悪いよ。きっと、たまきがこっちに来て一人で頑張ってた時に、助けてくれた人たちなんだよな?……俺……、すぐ軽口叩いちゃうからさ……悪ぃ」

 たまきはその感覚を忘れかけていたけれど、今みたいな軽口はたまきの父方の祖父もよく言った。

 本気で情けなくてダメな奴とバカにしているわけではない。

 もー、仕方ない奴だなぁ。くらいの、愛情のあるいじりだ。琉輝もたぶん、そのつもりだったんだろう。

 琉輝は引っ越してきて、まだ一年くらいで日が浅いのに、幼馴染のたまきと会って気が緩んで言った軽口くらい、許してあげればよかったと思いながら、紫露を悪く言われるのは、どうしても黙っておけなかった。

 琉輝をみると、まだ肩を落としている。

「……りゅうくんが悪気がなかったの、わかってる。なのに怒ってごめんね」

「たまきは謝んなよ。俺が悪いんだからさ。……今度、カフェで勉強するときは、おごるから。それでチャラな」

 たまきが謝ったのを聞いて、琉輝は目を丸くした後、そう言って、照れたように笑った。

 たまきはほっとして笑顔を返すと、

「りゅうくんも、大丈夫だからね。まだ慣れないかもしれないけど、りゅうくんの周りにいる人たちも、きっと、優しくてりゅうくんを助けようとしてくれてるはずだから」

 と、穏やかに言った。

 琉輝はまた面食らった表情で動きを止めた後、微苦笑を浮かべて、「そーだな」と言って、分かれ道に差し掛かったところで、「俺、こっちだし」と、たまきが進もうとした方向とは別方向を指さした。

「……勉強の話は、また連絡するから」

「うん。わかった」

 琉輝がスマホを軽く上げてそう伝えると、たまきは微笑んで頷いて「じゃあね」と手を振って、帰路に就く。

 琉輝はその後ろ姿を少しだけ見送った後、踵を返して自分も帰路に就いた。

 

 ――――――――――――――


 新学期に学校に登校すると、”祝 陸上女子100M優勝”の横断幕が掲げられ、たまきは嬉しさに小走りで教室に向かった。

 「心悠ぅ!」

 教室で心悠を見つけるなり、たまきは大きく両腕を広げて心悠に近づいていった。

「たまきぃ!」

 気づいた心悠も、その場で両腕を広げてたまきを迎えると、二人は教室の真ん中で抱き合う。

「会いたかった!」

「私も!」

 教室全体からおぉ~とかヒュ~とか、歓声が上がったのを気にもせず、たまきたちはしばらく抱擁を交わすと、

「心悠、おめでと!」

「ありがと。電話でも聞いたけど、たまきから直接言われるのが一番嬉しい」

 と、そう言いながら、笑顔で見つめ合った。

「なぁにぃ?私らからじゃ嬉しくなかったとぉ?」

 聞き耳を立てていたさっちょんとよっちんが肩を組みながら近づいてきて、心悠は呆れたような顔をして二人を見た。

「いや、嬉しかったけど?」

「けどぉ~?」

「たまきには敵わないだろ~」

 と、デレデレした顔でたまきの方を見て、たまきも嬉しそうに微笑む。

 二人は再び抱き合い、

「きぃ~~!!じぇらしぃ!」

 それを見たさっちょんが声を上げて、よっちんがそれを「私たちをコケにしてっ!」などと言ってなだめるようにさっちょんの頭を撫で、心悠とたまきはそれを見て笑う。

 クラスメイト達からも笑いが漏れたところで、四人は寸劇を終えて、それぞれの席に着く。

「こは、実業団と大学からかなりの数声かかってんだって?」

 よっちんが心悠に言うと、

「ん~、まあね?」

 と、ちょっと自慢気に心悠が答えた。

「より取り見取りじゃん?どこにすんの?」

「まだ悩んでる。もう正直、記録はどうでもよくて、長く続けられるのが一番重要なんだよね」

「長距離に転向するかもってこと?」

「まあ、それも視野に?短距離を長く続けるのって難しいしさ」

「っか~、相変わらず、たまき優先ってか?もったいないなぁ」

 もったいないと言った割には、よっちんの顔は嬉しそうに微笑んでいる。

「コーチや顧問も、私の意向はわかってくれてるしさ。すぐに種目は変えないにしても、怪我なく走り続けられるところを相談しながら決めていこうかなって感じ」

「そっか。ま、こはらしいね。決めたら一直線」

「かっこいいだろ~?」

「かっこよすぎて眩暈がしそう」

 よっちんは額に手を当てて目を回すような仕草をした。

「おおげさ」

 と、自分で言ったのに照れたように心悠が言うと、二人は笑いあった。

「そーいや、さっちょんの進路聞いた?」

「んえ?聞いてない。どこ?」

 思い出したようによっちんが言うと、心悠は目を見開いて首を横に振った。



「えっ!さっちょんも東都医大受けるの?」

 同じ教室内で、たまきが声を上げる。

「だよだよ~。まぁ、あたしは看護だけど」

「ほんとに!?全然知らなかった!」

「言ってないも~ん。嬉し?」

「もちろんだよ!嬉しい、嬉しい!」

「えへへ~」

 ぱあっと明るい笑顔で頷くたまきに、さっちょんは満足げに微笑む。

「あ、そういえばね、私の地元の友達がこっちに引っ越してきてたの。その人も看護だって言ってたんだ」

「そーなの?一緒だ~。受かったらみんなでご飯食べたりしよ~」

「うんうん、そーしよ!わぁ、嬉しいなぁ。さっちょんと一緒に通えるなら頑張らないと」

 たまきは嬉しそうに表情を緩めつつも、胸元でこぶしを握って気合を入れる。

「あたしも~。たまと一緒に通えるように頑張る」

 少し離れた自分の席から心悠が「いいな~!」と声を上げたのを聞いて、さっちょんは舌をペロッと出し、「いいだろ~?」と満面の笑みを浮かべた。

 近づこうと腰を浮かせたところで担任が教室の中に入ってきて、仕方なく心悠は椅子に戻った。



 全校朝礼で心悠は表彰を受け、軽く挨拶をした。

 部活の顧問やコーチ、部員、教師、生徒……全員に感謝を述べながら、心悠の視線はずっとたまきに向けられていて、たまきは胸の奥がじんと熱くなり、今にも泣きだしそうだった。

 だけど、せっかくのお祝いの場に、たまきは唇をかんでこらえたが、心悠がクラスの列に戻ってたまきの傍に来ると、やっぱりこらえきれず泣いてしまった。

 生徒たちから湧き上がる拍手の中心で、心悠がたまきを引き寄せ、二人は、抱きしめ合って喜んだのだった。

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