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「おはよー」
たまきが教室に入っていくと、さっちょんとよっちんが「おはよ~」と出迎えた。
「あれ?心悠は?」
いつも一緒にいるはずの心悠が、教室内を見渡してもいない。
「こは、今や有名人だよ?コーチに呼ばれてった。多分取材の打ち合わせじゃない?」
さっちょんがなんだか誇らしげに言った。
「えっ!そうなの?すごい!そっかー、インハイ優勝候補だもんね」
たまきも嬉しそうな顔で頷くと、
「そゆこと~」
と、よっちんも満面の笑みで頷き返す。
たまきが席につくと、さっちょんとよっちんはたまきの近くの席から椅子を借りて囲むように座った。
「……どーかした?」
たまきが不思議そうに首を傾げると、二人はたまきに顔を寄せ、
「たまさぁ、イケメン王子といつから付き合ってんの?」
と、ニヤニヤ顔の二人から問われて、たまきは一瞬なんのことか分からずに動きを止めたが、それが梧のことだとわかると、途端にたまきは顔を真っ赤にした。
「えっ!?なっ!つ、付き合ってないよ!?」
思いの外大きな声を上げたたまきは教室中の視線を浴びたが、よっちんが「しー!!」と人差し指を口元に当て、さっちょんが周りのクラスメイトに「なんでもないよ〜ん」と笑顔を振りまいて、とりあえずその場をやり過ごすと、たまきの肩を掴んで屈ませ、三人はより顔を近づけて、小声でやり取りを始めた。
「隠さなくたっていーじゃん!あの日、二人がずっとくっついてたの見えてたんだよ?」
「やっ、あ、あれは、違っ……!」
「違わないでしょ~?帰りのバス、その話題で持ちきりだったんだから」
「噓!?違うって!私が緊張してて、私が手……、離さなかったから……」
「えー?でもずっと繋いでてくれたわけでしょ?王子も嫌って顔じゃあなかったなぁー?」
「そ、それは……梧さん優しいからで……。ほら、親戚の子供とか、そーゆーふうにしか見られてないんだよ?」
「いーや。あの王子の優しい眼差し……、あれは子供を見る目じゃない。恋人を見る目だったね」
「……彼女じゃないってば……」
弱々しい声で言いながら、たまきはあの日の梧のまなざしを思い出して、顔が熱くなっていくのがわかった。
たまきも実はあの後、家に帰っても時折フラッシュバックのように思い出してしまい、一人で悶え、祖父母から訝しがられていた。
部員に見られていて噂されていたなんて、恥ずかしくてたまらない。気づかなかった自分も自分だけど、穴があったら入りたい。
「ええ〜?」
さっちょんとよっちんが声を上げ、たまきは手で顔を覆う。
「……おい、何たまきいじめてんの?」
「よっ、心悠。おかえり~」
低い声で言いながら登場した心悠を見上げ、さっちょんが軽い調子で応えるが、心悠は二人を睨みつける。
「怒んなよ、こは。いじめてないし、ただの事実確認だってば」
「事実確認?……あ。それか」
一瞬、訝しんだ心悠だが何をしていたか理解したらしく、納得した声を出した。
たまきは心悠からも詰められるのかと、指の隙間からその表情を窺うと、目が合った心悠が、
「てか、もう授業始まるし。二人とも、散った散った」
虫を払うように手を振って、二人に席に戻るように促す。
「ちぇ」
「は~い」
口々に何かいいながら、二人は席を立って椅子を戻す。
たまきは手を外し、心悠の方をほっとしたような顔で見つめた。
心悠はウインクして微笑んだ後、たまきの前の席に座る。
そして頬杖をついてたまきの顔を覗き込みながら、
「……んで?どっちから告白したの?」
と、さっきの二人と同じように、ニヤついた顔を見せた。
たまきは、顔を真っ赤にして頬を膨らませると、
「も~!心悠まで!」
怒って心悠の肩を叩いて抗議し、さっちょんとよっちんは笑ったのだった。
「ごめんて、たまきぃ」
たまきは放課後になっても怒った表情で、心悠ともろくに口をきかなかった。
「もーいいです」
何度も謝っているが、この調子で許してくれそうにない。
さすがにふざけ過ぎたかなと思っている心悠は、
「いや、確かにさ?付き合うことになったんなら、私に何の報告もないのはおかしいなぁとは思ったし、まだ付き合ってないかなとも思ったよ?……だけどさ~、梧さんがたまきを見つめる顔がさ、めっちゃ嬉しそうって言うか……あま~い感じでさ……。紫露父まではいかないけど、そんな雰囲気でさぁ」
と、たまきの顔を覗き込みながら、言い訳がましく説明する。
覗き込まれるたびにたまきはふいっと顔を逸らし、聞く耳を持たない。
心悠は、気まずそうにこめかみのあたりを掻きつつ、
「……報告がないのはちょっと寂しいとは思ったけど。たまきたちがうまくいって、幸せならいいなと思ったんだよ?」
少しトーンを落として言うと、たまきは動きを止めた。
しばらく黙った後に、
「……わ、私だって、混乱してる……」
たまきが、ふと、弱々しい声を漏らした。
その震えた声に心悠ははっとして、たまきの正面に回り込む。
眉尻を下げて困ったような顔で、だけど、顔を赤くして、そこには嬉しさが滲んでいた。
「そんなわけないって……、思うの。……でも、あんな顔されたら……。……ずるいよ」
たまらず、心悠はたまきを抱きしめる。
「……12歳も離れてるし……梧さんにとって、私なんて子供だって、わかってるのに……」
……でも、もしそうなら、嬉しい。嬉しくて、どうにかなってしまいそう。
たまきはそう思った。胸の奥のソワソワがずっと止まない。
心悠は抱きしめているたまきに頬を寄せ、口を開いた。
「もしさ、もしだよ。わかんないけど、梧さんとたまきがそうなったらいいなって、私は思ってるよ」
心悠に大人の男性の気持ちはわからないけど、あの表情を見てたら、絶対たまきのことを好きだと思う。
だけど、たまきの不安もわかる。
あんなイケメンで優しくて完璧な男性なら、どんな女性も惹きつけてしまうし、言い方は悪いかもしれないけど、選びたい放題だ。
そんな梧と比べたら平凡なたまきが選ばれるなんて、信じられないということだろう。
でも、心悠は信じたかった。
梧はずっと、たまきを大事に思っていてくれている気がする。
それと……、たまきは誰よりも、めいっぱい、幸せになっていいってことを。
――――――――――――――――――――――
「まさかアオからこんな相談を受ける日が来るなんてねぇ」
若者に人気のブランドからハイブランドまで軒を連ねる街の一角、霞がオーナーを務めるブランド”Fri Vind”の奥にある特別応接室で、感慨深げに霞は梧に向かって言った。
からかいの雰囲気を含んだ霞の顔に、梧の表情は気まずそうに顰められている。
「……女性に贈り物をしたいなんて。あの、色恋にまったく興味のなかったあなたが」
ふふふ、と笑う霞とは対照的に、梧は眉間にしわを寄せてため息をつき、視線を逸らす。
頼まなければ良かったかもしれない、と、多少の後悔を感じながら。
その反応を面白がりながらも、霞は少し離れていたところに控えていたスタッフに片手を上げて合図し、カタログを受け取ると、梧の前に広げていく。
「まずは、どのラインか、からね。kvinnaかしら」
霞のブランドは女性向けで、年代別にFlicka、kvinna、Damといったラインを揃えており、若い世代から熟年層まで幅広い人気がある。
「……そうですね。俺はよくわからないので、お任せします」
梧が言った瞬間、霞の顔が途端に曇った。
「……お任せ、ですって?なぁに、その言い方。寿司屋じゃないのよ。お相手の好みも知らないの?」
「……あ、いや……、それは……その」
霞から責めるように畳みかけられ、梧は言葉に詰まった。
言われてみれば、仕事ならば事前に相手のリサーチは必須である。そういう意味で言うと、梧はたまきのことを何も知らない。何が好きで、何色を好み、何に喜ぶのか。
くるくると変わる表情はいくらでも思い出せるのに。
黙って俯き、考え込んでいる梧に、霞は呆れたようにため息をついた。
ひとまずカタログをテーブルの隅に避けると、スタッフに「紅茶をお願い」と頼み、
「……どんな方なの?」
と、梧に向き直って、そう訊いた。
普段、霞直々に接客をすることはほぼないが、こういう、何のアイディアもなく来店する客もいないわけではない。
そういう時は、相手との関係性やイメージを聞き取ることが大事になってくる。
梧は一度顔を上げたが、少し視線を下げて口元を緩めた。
梧の珍しく柔らかい表情に、霞は驚く。
「いつも……、自分のことより他人を優先して……、人の成功を自分のことのように喜んで。……努力家で、仲間想いだから、彼女の周りにはいい仲間が集まって……。感情のままに泣いて、笑って、時に口を尖らせて頬を膨らませて怒って……、照れ屋で」
つい先日会った、たまきのことを思い浮かべながら語った梧は、普段よりも良く喋り、霞が今まで見たことがないくらい柔らかく微笑んで、愛おしさが溢れているのが目で見てわかるほどだった。
霞は頬杖をついてそれを眺めながら、
「あなた、……そんな顔もできたのね」
感心したように呟くと、梧はハッと我に返って「……どういう顔ですか……」と、わずかに照れたような表情で顔をそむけた。
霞はいたずらっぽく微笑み、
「とても素敵な方っていうのはわかったけど、その話だとその方の雰囲気や似合うものがわからないわねぇ」
茶化すように言うと、梧は途端に顔が赤くなり、口元を押さえた。
どんなものが似合うかという意味の問いだったのに、それに沿った答えではなく、自分の気持ちを吐露してしまったことに気づいて、梧は項垂れる。
「あらあら」
楽しそうに霞がそう言ったところで、スタッフが紅茶を持って二人の前に置いていく。
「ありがとう」
霞は受け取り一口飲んでから、避けてあったカタログをいくつかに目を通し始めた。
「仕事は何をしている方?事務系なら普段使いのバッグでもいいし、職場にもよるけどアクセサリーでも良さそうだけど……」
「いえ、まだ学生です」
その答えに霞は顔をあげ、驚いた表情で梧の顔を見た。
「えっ、大学生なの?」
二十代前半を想定した霞の言葉に梧は少し気まずそうな顔になると、
「……今年受験で……高校3年生……です」
と、視線を泳がせた。
「はぁ!?高校生!?」
思わず取り乱し、霞は大きな声を上げるが、自分の品のない言動に慌ててカタログで口元を覆った。
そのあと少し喉を鳴らして、気を取り直すと、
「……ひとつ確認だけど……、あなた、その子と付き合っているの?」
と、聞きながら、梧は今年いくつになったんだっけ?と、頭の中で相手との年齢差を計算する。
贈り物をしたいとなれば、それなりに特別に想っているだろうし、彼女のことを語るさっきの様子を見れば、梧の気持ちは明白だ。別にいくつ離れていても偏見があるわけではないが、梧の相手がそこまで年下だとは思わなかった。
「いいえ!違います。……紫露と一つしか変わらないんですよ?彼女からしたら親戚のおじさんみたいなものでしょう。……彼女に失礼です」
その言葉を聞いて霞は動きを止めた。
「……親戚の?」
霞の中で急に何かがかみ合う感じがした。相手との年齢差はひと回りくらいで、”親戚の”子供だと思われていると言った一人の女の子が霞の脳裏によぎる。名前も聞けなかった、純粋で優しい恩人の女の子。
「……何か似たような話を聞いたわねぇ……」
霞が小声で独り言を呟くと、梧が首を傾げて「なんですか?」と聞いてきた。
首を軽く振って「何でもないわ」と言った後、
「……もしかしてだけど、あなた、前にもその子にうちのブランドのものを贈ったことない?」
と、聞いてみた。
「……えっ?はい。紫露と一緒にFlickaのパスケースを贈りましたけど……」
梧は驚き、不思議そうな顔で霞を見つめながら答えてきた。
案の定、という顔で霞は頷いた。
それと同時に、世間の狭さに驚く。霞にとっての恩人が、まさか梧の心をここまで掻き乱している少女だったとは。
「なんで知ってるんですか?」と言う梧に「女の勘よ」と適当にはぐらかす。
しかし、相手のことを考えているときの表情とは裏腹に、自分を親戚のおじさんだと卑下するとは。年齢差を気にしているにしても、梧はずいぶんと拗らせているようだ。と思った。
「……大学生になるならkvinnaラインでいいとは思うけど、あなたはこれを贈りたいってもの、ないの?」
言われて梧は押し黙る。
顎に手を当てて、しばらく考え込むような顔をした後、
「誰かに……何かを贈りたいと思ったことがないですからね……」
と、あまりにも無頓着極まる発言に、霞はソファーのひじ掛けにもたれ、頭を押さえた。
まぁ、以前の無表情無関心だった梧がここまで表情を変えて語り、誰かに贈り物をしたいと思うだけでも成長だと考え直し、kvinnaラインのカタログを梧の前に広げて、ゆっくりとページをめくっていく。
「じゃあ、いつも持っているバッグの色やサイズ感、何かアクセサリーをつけていたとすれば、そのモチーフやデザインを思い出してみて。他にも、彼女に持ってもらいたい、つけているところを見たいでもいいわ。サイズがわかりにくかったら現物を持ってきてもらうから、言ってちょうだい」
おそらくではあるけれど相手の女の子が誰であるかがわかってしまったから、霞にかかれば似合うものを選ぶことなど造作もないけれど、それでは意味がないし、彼女を喜ばせることはできない。
わからないにしても、梧が悩んで決めることに意味があるのだ。
梧は真剣な顔でカタログに目を落としながら、たまきのことを思い出していた。
いつも、たまきは斜め掛けのショルダーバッグを持っていた。それほど大きくはない。スマホと財布、ティッシュやハンカチくらいが入る程度のサイズだ。アクセサリーをしていた覚えはない。運動部だったし、病気もあってそういうものをつけることを避けていたのかもしれない。それとも、アクセサリー類は苦手なのか。
「……」
考えれば考えるほど、たまきのことを知らないと思い知らされる。たまきがどれを喜ぶのか、全くわからない。そもそも、梧が勝手に選んだもので喜ぶのか、という疑問も脳裏に浮かぶ。
悩んだまま動きを止めた梧に、霞は待機しているスタッフに視線を送った。
スタッフは一度部屋を出て行くと、すぐに一冊のノートを持って戻ってきて、それを霞に渡した。
霞はそれを梧の前に広げる。
それは鉛筆で描かれたデザイン案のようだった。
バッグやリングなど商品の形をしているものもあれば、ただモチーフとしての絵が描かれているものもある。
「……これは?」
「デザインの元となるスケッチよ。フルオーダーの参考として見せることがあるの。あなたが気になるものがあったらそれをもとにどの商品にするか決めてもいいわ」
梧は難しそうな顔をしながらも真剣なまなざしでそれを見つめ、一枚一枚吟味しながらめくっていく。
霞はその真剣な顔つきを見つめて、どう見ても相手のことを大事にして愛しんでいるのに、前に進めないのはどうしてかと考えた。
体裁上、年齢差を気にしていることは大いにありうる。だが、それ以外にも何か引っ掛かっているように感じる……と考えをめぐらせて、ふと、梧にも前世があり、誰かを探している、と言っていたことを思い出した。
「あ……」
その時、梧が小さく声を上げ、手を止めた。
霞は考えを中断し、梧の手元を見る。
それはしなやかな流線で表現された、翼のようなスケッチだった。
紙の隅にVindens vingeとデザイナーの走り書きがある。意味は“風の翼”だ。
「それが気になるの?」
霞が静かに聞くと、梧は「……はい」と頷いた。
それを聞いて霞は身を乗り出すと、
「そのデザインだとアクセサリーがいいわね。ネックレス、イヤーカフ、ブレスレット……」
独り言のように呟きながら、頭の中でデザインをアクセサリーとして組み立てていく。
「……ネックレスの方が、邪魔にはならない……ですよね?」
なるほど。合理的かつ実用重視の梧らしい回答である。
ブレスレットは手元でいつでも見られるということもあるが、邪魔に思う人もいるだろう。
彼女はアクセサリーをつけないタイプのようでもあったから、ネックレスは一番無難かもしれない。
「いい案ね。小さな石をつけてもいいと思うけど、何かイメージする宝石はある?」
「…………エメラルドは、どうですか」
さっきまで消極的だったのに、控えめながら意見を言うようになってきた。
どうやらイメージが掴めたようで、霞は微笑む。
方向性が決まると霞は片手をあげ、スタッフはその意図を汲み、素早い動きで霞にタブレットを手渡した。
そのタブレットで先ほどのスケッチをスキャンし、画面上で細かな数値を入力し始める。
「デザインのベースはこのままでいくけど、翼の曲線は首筋に沿うように少しだけ内側に絞ってみるのもいいわね。エメラルドは……翼の付け根に一石、ドロップカットのものを揺れるように配置するのはどう?」
霞は言いながら画面上で、まるで魔法のようにデザインを立体化させていく。
「……揺れると、邪魔になりませんか」
梧が眉間にしわを寄せ、難しい表情をした。
「揺れるのが気になると言う人もいるけど、動くたびに光を拾って、彼女の胸元で『風』を感じさせると思うと……どう?悪くないでしょう?」
いたずらっぽい笑みを浮かべ、提案する霞を見て面食らったが、梧は少し考えて「……いい、と思います」と頷きながら答えた。
霞は満足げに頷き返し、
「若い女性だから、そのくらいの遊び心があっても楽しいと思うわ。長く使えるように、あまり子供っぽくならないデザインにして、エメラルドはもちろん最高品質のものを用意するわよ。少し青みの混じった鮮やかな緑をね」
梧に向かってウインクまでして見せ、霞は生き生きとした表情で作業を進めていく。
本当にこの仕事が好きなのだな。と梧が感心していると、すかさずスタッフがいくつかの素材見本を目の前に置いた。
プラチナの白銀、18金のイエローゴールド、そして柔らかな輝きのピンクゴールド……、梧の目ではその違いがわからない中間の色も見比べられるようにグラデーションで並べられていく。
「地金はどうする?……彼女の肌に馴染む色はわかる?エメラルドが引き立つのはプラチナか、ホワイトゴールドだけど……。女性らしいピンクゴールドや柔らかい色のシャンパンゴールドでも悪くはないわ。あぁ、あとアレルギーの点で言うと、プラチナは起きにくいとされていて、肌には優しいわね」
梧は、並べられた金属の板をまじまじと見つめたが、見当もつかない。霞に助けを求めるように視線を送ったが、圧の強い微笑みを浮かべたまま、何も言わないところを見ると「自分で選べ」と言うことなのだろう。
仕方なく梧はまた素材見本に視線を落とす。
肌の色に馴染むかどうか……と言うのはよくわからないが、確かにプラチナやホワイトゴールドなら、彼女の純粋さや爽やかさと馴染む感じはした。
「……彼女に、アレルギーがあるかはわかりませんが、起きにくいと言うならプラチナで。無垢で純粋なイメージも合う……と思うので」
不安げな梧の答えに、霞は優しい微笑で頷き、同意を示した。
梧はほっとするも、
「一週間以内に、いくつかのエメラルドの裸石を取り寄せるわ。それから一ヶ月後には、ワックスで実物大の模型を作るから、もう一度ここに来てちょうだい。私は一度帰る予定だけど、他のスタッフに引き継いでおくから。実際に手に取って、翼のボリューム感やチェーンの長さを確認して。……完成して引き渡せるのは、大体9月の中旬くらいになるわね」
と、畳みかけるように続けられた霞の言葉に、一瞬、言葉を失った。
「はい……」
やっとのことで返事をすると、その後も予定を確認してスケジュールが埋められていき、あれよあれよという間にすべてが決まっていく。最終的に梧は、霞の言うことにただ頷くだけになっていた。




