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風の行く先  作者: 遥ゆとり
2章 高校編

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 たまきは開店時間ギリギリにカフェに滑り込み、何とか着替えを済ませて店頭に出ると、開店とほとんど同時にお店に入って来たのは梧だった。

 また行くよとは言っていたけど、まさか今日来るとは思ってなかったたまきは、ついさっきまで相談していたのもあって心の準備ができておらず、驚いて固まった。

 

 梧もそのたまきと目が合って、一瞬足を止めたが、夏海が「いらっしゃいませー」と言うのを聞いて、ようやく我に返ってレジ前にいたたまきに近づき、「久しぶり……だな」と、気まずそうな顔でぎこちなく微笑んだ。

「は、はい……」

 緊張した面持ちでたまきがそう答えると、接客も忘れてしばらく見つめあってしまった二人に、夏海は軽く喉を鳴らしたあと、「ご注文は〜?」と、横から声をかけた。

 たまきと梧は二人とも弾かれたように身をビクッと震わせた後、

「あ、えっと、て、テイクアウトですか?それとも店内で?」

「……あー……、店内で……食べる」

「あ、空いてるお席でお待ちください……」

 慌てながらぎこちなく二人はやりとりして、梧は頭をかきながら窓辺の席へと移動した。

「レジ変わるんで、冴島さんオーダー取って来てください」

「えっ!?あ、……はい……」

 たまきは驚いた声は上げたものの、戸惑いながら静かに返事をした。

 夏海としては、どー考えてもお互いに意識しちゃっていそうな二人の間には入りたくないし、首を突っ込むつもりもない。ただ、以前にちょっと、余計なことを聞いちゃった気がするので、その罪滅ぼしの気持ちは少しだけあった。

 

 たまきは一度深く息を吸って吐いた後、軽く前髪を整えてから、席についてメニューを眺め始めた梧をちらっと確認した。

 久々に見る梧は、相変わらずかっこいい。

 ただ、少し顔に疲れが見えるような気がした。仕事が忙しいのかな……と思いながら、意を決して梧の席へと近づく。

 梧が気付いて顔を上げ、たまきと目が合わせた。

 目が合った瞬間、たまきの心臓はドキッと跳ねたが、悟れないようにできるだけ平気な顔をして、梧の元へ行くと「どうぞ」と水を梧の前に置いて、「ご注文は……お決まりですか?」と、いつもの接客を心がけながら訊いた。

「……おすすめは、あるかな?」

 と、梧がメニューに視線を巡らせた後、困ったような顔でたまきの方を見てそう言った。

 たまきは面食らったが、その表情が可愛く見えて、胸がきゅんとする。なんか、前にもそんなことがあったような気もするが、大人の男性に可愛いは失礼だよねと、たまきは一度唇強く引き結んでこらえた後、ごまかすために梧の開いているメニューを覗き込んだ。

「えっと、……朝ごはん食べました?」

「……まだ食べてない」

 メニューを覗き込んできたたまきを、梧は横目でチラッと見て微笑み、答えた。

「じゃあ、しっかり食べれた方が良いですね」

 と、たまきは手を伸ばして、メニューの頁をめくる。

 しかし梧はメニューに視線を落として、

「いや、軽くで良い。朝はそんなに食べないんだ」

 少し慌てたように言った。

「えっ?」

 たまきは驚いて目を真ん丸く見開いて、梧の顔を見つめた。

「え?」

 梧は何に驚かれたのかわからず、たまきの顔を見つめ返すと、たまきは戸惑いつつ視線を泳がせてから、また梧の顔を見つめる。

「……朝ごはん……、いっぱい……食べないんですか……?」

 生活習慣のギャップに驚いたようで、たまきはそう言った後、少ししょんぼりした顔をした。

「あ……あぁ。コーヒーだけの時もある……」

 その表情に、何となく罪悪感を覚えながら正直に答えると、声は上げなかったが、たまきは更に目を見開いた。

 しかし、たまきは気を取り直してメニューの頁をめくり直して、

「じゃあ、軽いものですね……。サラダにお肉プラスでもいいですし、パンケーキとか、サンドイッチ……、ホットサンド。あとは、マフィンでもいいかもしれないです」

 と、おすすめをいくつか指さして、説明した。

「……じゃあ、サンドイッチとコーヒー……で、お願いします」

 梧はたまきの表情の変化を気につつ、注文した。まだ驚きを隠せないままのぎこちない笑顔だったが、

「はい。かしこまりました」

 と、定型の返事をしてきた。

 軽く会釈をしてたまきが立ち去ると、梧はその背中を見送りつつ、水を飲む。

 たまきは朝食しっかり派なのか……?と漠然と考えながら、梧は窓の外を眺めた。



 カウンターに戻って、たまきはキッチンに注文を伝えた後、レジにいた夏海の方へそっと近づいた。

「……どーかしました?」

 首を傾げた夏海に、たまきはその顔を覗き込んで、

「夏海ちゃんは、朝しっかり食べる?それとも軽め?」

 と訊いた。

「え?……軽めです。シリアルとか、ヨーグルトくらいかな」

 それを聞いたたまきはまた目を見開いた後、少ししょんぼりして「そっか……」と呟いた。

「ん?なんですか?冴島さんは、しっかり派なんですか?」

 何の質問なんだろうと疑問に思っているようだったが、夏海が訊き返してきた。

「うん……。ご飯とみそ汁と……おかずも食べたい」

 そう、たまきは少し暗い顔で答えた。

 なんでたまきがそんな表情なのかと訝しみながら、夏海は「いいじゃないですか、めっちゃ健康的で」と思ったままを言った。夏海としては朝はぎりぎりまで寝ているし、時間がなくて軽くしか食べられないだけなので反省すべきことなのだが、たまきは「そっかぁ……」とまた呟いている。

 たぶんまた、どうでもいいこと気にしていそうだな。と、すっかり慣れたたまきの性格を見透かして夏海は思った。

 お客さんが入ってきたので、また休憩時間にでも話そうと思いながら、夏海はたまきと声をそろえて「いらっしゃいませ」と言った。


 入ってきたお客は時雨だった。

 たまきが驚いて会釈すると、時雨も会釈を返す。

 誰かを探すように店内を見渡したので、たまきは一歩前に出て、「梧さんと、お約束でしたか?」と小声で訊いた。

 時雨は「えっ?」と声を上げて、ホールに目を向けて梧を見つけ、驚いた表情をする。二人は軽く頷きあったが、別にお互いに近づくわけでもなく、時雨はレジ前に立つと「いや、約束じゃないんだ」と答えた。

 それでも、カウンターの内側にも視線を向けたのを見て、たまきはもしかして、と思い「森庵さん、ですか?」と、訊いた。

 ようやく時雨は頷き「いないみたいだね」と苦笑いをして言うと、切り替えてテイクアウトのメニューを確認し始める。

「……森庵さん、今年六年生なので、本格的に試験に向けてバイトは減らしていくみたいです」

 たまきが少し寂しそうな声で付け足すと、時雨は視線を上げずに「そうなんだね……」とわずかに沈んだ声で答えた後、

「じゃあ、カフェラテと、ベーグルをひとつ、テイクアウトで」

 と顔を上げた。

 レジは夏海が対応し、たまきはコーヒーの準備を始める。

 支払いを終えてテイクアウトのカウンターで待つ時雨に、たまきは商品を「お待たせしました」と手渡しながら、その紙袋をじっと見つめた。

「ありがとう。……どうか、した?」

 お礼を言った後、時雨はたまきの視線を気にして小首を傾げた。

 たまきは「あ、いえ……」と言ったが、やはり何かを気にしているようで遠慮がちに、

「……それ、朝ごはんですか?」

 と、訊いてきた。

 言われて時雨は紙袋に視線を落とした後、

「ううん。朝ごはんはしっかり、杠葉さんの手料理を食べてきたよ。これは、おやつみたいなものだね」

 と答えた後、「食べ過ぎかな?」と照れたような表情で笑いながら付け足した。

 すると、たまきの顔はパッと明るくなり、

「そんなことないです!朝はしっかり食べてもいいですよね」

 と微笑む。

 なんのことかわからない時雨はまた首を傾げつつも、「うん、そうだね」とひとまず調子を合わせた相槌を打って、「じゃあ」と会釈すると、

「ありがとうございましたー」

 たまきがほっとした顔を見せて、頭を下げた。

 


 時雨は帰る前に梧の席に近づいた。

「おはよう。来てたんだね」

 そう声をかけると、梧は頷く。

「あぁ。お前もな。朝から霞さんのところかと思った」

「先に紫露に行ってもらってるよ。俺もこれから行くけど」

「……なにか、用があったのか?」

 霞のところに行く前に、わざわざコーヒーを買いに寄ったわけでもないだろう、と思って梧は訊きつつ、ふと、特に意味はなかったが、カフェの入り口に視線を投げながら言った。

 ちょうど誰か、お客が入ってきて、たまきたちが「いらっしゃいませ」と出迎えている。

「……森庵がいれば、と思ったんですが……」

 と、時雨もその視線に釣られて、入り口に視線を向けつつ、答えた。

「森庵?何かあったのか?」

 首を傾げて、時雨の方へ視線を戻すと、

「いや……何かというわけでは……」

 と言いかけたところで、時雨が動きを止めた。

 その視線が、お客の一人を捉えている。

 梧が疑問に思ってその視線の先を確かめると、そのお客が、レジの前でたまきと話していた。

 どうやら知り合いらしく、たまきは笑ったり驚いたりと、くるくる表情を変えて楽しそうだ。相手はこちらに背を向けているから、顔が分からずに梧が睨むように目を凝らしていると、

「…………スイ…………?」

 ちょうど、時雨がそう呟いた。

 言われて梧がもう一度その男を見ると、ふと見えた横顔が、確かに以前に見た翠の顔であった。

「……あぁ、そうだな」

 と声を上げて、梧は眉間を緩めた。

 すると時雨が梧の方へ視線を戻して、

「……彼と、話したことは?」と、真顔で言うので、

「少しな……」

 と、答えたものの、いや、あの時は梧が一方的に捲し立てただけで、会話とは言えなかったと思い直し、

「まぁ……話したと言えるほどではないかもしれない……」

 と、付け足した。

「そうですか……」

 梧の言葉など耳に入っていないような返事をして、時雨がまたレジに視線を戻すと、翠も振り返って時雨たちの方を見たので、目が合った。

 翠が慌てた様子で会釈したので、梧と時雨も会釈を返す。

 翠はすぐにレジの方に向き直って身を縮めると、たまきとコソコソと何やら話をしている。

「……近くないか……?」

 たまきと翠の様子を見て、梧がぼそっとそう呟いて眉間に皺を寄せたが、時雨はそれに反応せず、翠をじっと見つめた。

 翠はもう一度おそるおそる振り向き、翠の方を見ていた二人にぎこちなく微笑んでから、たまきと視線を合わせて頷きあうと、緊張した面持ちで時雨たちの方へ歩み寄ってきた。

 時雨は、彼から声をかけて来るとは思わなかったので、驚いた顔で翠を迎える。

「し、霜槻さん……ですか?」

 やせ型で手足が長く、背の高いところはスイによく似ているが、顔立ちは違う。吊り目が垂れ目になり、狐が狸になったくらい違う。スイは常に飄々としていて嘘も真実のように話すふてぶてしさがあったけれど、彼は遠慮がちで誠実そうにも見えた。

「……はい」

 緝が時雨たちのことをどこまでどう翠に話したのかわからず、どう接するべきか迷って時雨は返事だけをした。

 彼は一度軽く頭を下げて、

「孤崎翠と言います。……今、少しお時間ありますか?」

 自己紹介をしてから、眉尻を下げて窺うような視線を時雨に向けて言った。

 時雨は面食らったが、時計を確認し、

「……一時間ほどなら、大丈夫です」

 と答える。

 ちょうどその時、たまきがテイクアウト用の紙袋を持ってきて「……翠さん」と声をかけた。

「あ。ありがとう」

 翠は一瞬緊張が解けた顔でお礼を言ってそれを受け取り、また時雨に向き直ると、

「ええと……、外で……いいですか?」

 と、梧にも視線を送る。梧を見る時、わずかだが翠の顔に緊張が走った気がした。

「……どうぞ?」

 梧が翠と時雨の顔を交互に見ながら答えると、翠は時雨の顔を見る。時雨も頷き「……じゃあ、梧。また」と言うと、店の出口へと向かっていった。

 梧は出ていく二人を見つめ、そのまま窓の外へと視線を投げた。

 外へ出た二人がそのまま立ち話しているのが見えたが、もちろん、なんの話をしているかは分からない。

 

 確かめたわけではないが、彼はスイの記憶を持っていないだろう。スイだったら梧を見た時に何か言うはずだ。

 人を食ったような表情で「おや?坊ちゃん」とか声をかけてきてもおかしくない。この後に及んで、知らないふりをして誤魔化したりはしないだろう。

 彼のあの態度が、演技だとも思えなかった。

 前世の記憶がなくても、緝からは聞いているのかもしれないが、その上で、梧には目もくれず、時雨に声をかけた姿を目の当たりにすると、得も言われぬ切なさが胸に去来した。この感覚の正体は、わかっている。

 頬杖をついて外を眺めながら梧は、真剣な顔で会話をしている二人を見つめた。梧は確かめもせず翠を怒鳴った経緯もあるし、先ほどの様子から見て、翠からよく思われてはいないだろう。

 緝や、……今、たまきとも話していて、時雨は頼りになるとでも、言われたのかもしれない。

 やはり、たまきが頼るのは自分ではないのだろうなとぼんやり考えていると、

「……梧さん、お待たせしました」

 と、たまきの声がして、梧は店内に視線を戻した。

 頬杖をやめて姿勢を正し、たまきが持ってきたプレートを置きやすいようにコップやおしぼりをずらすと、「ありがとうございます」と、小声で言って、テーブルにサンドイッチとコーヒーを置いてくれる。

「ご注文の品は、お揃いですか?」

 たまきが微笑んでそう言うと、「あぁ」と答えて彼女を見つめた。たまきの表情が少し照れたものに変わると、梧の胸の奥が熱く締め付けられる。

 たまきが「……ごゆっくりお過ごしください」と言って頭を下げて、その場を立ち去ろうとしたとき、思わず「たまき」と呼んで、その手を掴んだ。

「……えっ?」

 たまきは驚いて振り返り、

「ど、どうかしましたか?」

 と、焦って声が上ずり、たまきの頬がわずかずつ紅潮していく。……梧の鼓動が、自分でもわかるほど、早くなっていた。


 —————だめだ。


 頭の中で冷静な言葉が響いて、梧は我に返って手を離して、たまきから視線を逸らした。

「悪かった……」

 と、呟き、顔を隠すように眉間を押さえる。

「あ、いえ……」

 たまきはそう言ったが、その場からすぐには動かなかった。

 正直、すぐにでも立ち去って欲しかった。

 自分の感情が身体中を複雑に巡って、頭が混乱している。

 前世の記憶を思い出した時、こんな感覚だったかもしれない。どこまでが前世の自分で、どこからが今世の自分のものなのか曖昧で、今の自分が何を考えて、何を感じているのかがわからなくなっていく。

 久しぶりに、頭痛までしてきそうだ。

 

 感情が整理できない。……今感じているのは……疎外感か?

 さっき感じた切なさも、そこからくるものだろう。

 前世でも、何度も感じたことのある感覚だ。

 スイとハルは風のもの同士で、ゼンを含めて、彼らは親子や家族のようだったし、わかり合っていた。王宮以外のことを知らず、世間知らずだったカザネからしたら、平民上がりのサギリだって、スイやハル、ゼンとの話題にもついていけていた。

 カザネが知らないことは多かった。彼らがそれを教えてくれることもあったが、立場のせいか気遣われ、カザネだけが聞かされない話もたくさんあったと思う。


 —————いじけているのか?今更?


 梧は自分が情けなく感じた。

 

 急に俯いて黙った梧を、たまきは心配そうに見つめた。

 声をかけていいのかがわからなくて、顔を覗き込むと、苦しそうに顔を歪めている。

 あまりにもギュッと眉間に力を入れているように見えたので、たまきはどうにかしたくて、ひとまず「梧さん」と、声をかけた。

 梧は、その声に姿勢を少しずつ解くように緩めて、眉間から少しだけ手を離した。だけど、その手は顔を覆うようにかざされたままで、たまきの方に視線を戻そうとはしない。眉間の皺も、そのままだ。

「……大丈夫ですか?」

 たまきは再び声をかけた。

「……あぁ、大丈夫だ……」

 どう見ても大丈夫なようには見えないが、その姿勢のままで、梧は答えた。

 たまきは迷ったけれど、意を決して、梧の真正面に回り込んだ。そして、梧の顔の前で両手の人差し指を立てると、

「……失礼します」

 と言った。

 梧が、驚いて顔を上げる。

 たまきはその人差し指で、梧の眉頭を優しく押さえて、眉間の皺を伸ばすように指を動かした。

 その、たまきの突拍子もない行動に、梧は驚きすぎて、数分、動けなかった。

 時が止まったのかと思った。

「……なっ……?」

 ようやく、無意識に止めていた息を吐き出して、梧がそう声を上げると、たまきは我に返って慌てて指を離した。

「……ご、ごめんなさい!眉間の皺をなんとかしなきゃと思って……」

 そう言ってたまきが頭を下げると、梧が状況を理解するまでの間、沈黙が落ちた。

 そして、ふっ、と梧が息を漏らす。

 恐る恐る、たまきが顔を挙げると、「ははっ」と声を上げて、梧が笑い出した。

 一瞬、キョトンとしたたまきだったが、ひとまず梧が笑ってくれたので、ほっとして微笑んだ。

 ひとしきり笑った後、梧は自分の眉間を撫でて、

「……眉間の皺か……」

 と呟いた。

「ごめんなさい、痛かったですか?」

 力加減は調節したつもりだったが、なにぶん必死だったので、もしかしたら思ったより力を込めてしまったかもしれない、と思ってたまきが言う。

 梧は首を振り、

「全く問題ない。……悪かったな、気を遣わせて」

 と、ようやくたまきの方へ視線を向けて謝った。

「いえ!こちらこそすみません、変なことして……」

 そう言って苦笑いを浮かべた。

「いや、ありがとう」

 梧も、少し気まずそうな笑顔を浮かべながら言った後、コーヒーを一口飲んだ。

 たまきは店内を見渡して、新たなお客さんが来ていないことを確認して、梧に視線を戻した。

 梧は、まだ立ち去らないたまきの視線を感じて顔を上げる。

「……どうした?」

 たまきは話していいのか迷いつつ、

「……あの……、翠さんと森庵さんなんですけど……」

 と、切り出した。

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