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閑話(初詣小話)

寝ぼけた頭で書いたので、歯切れ悪くてごめんなさい。

本編の時系列的には少し前後していますが、楽しんでいただければ幸いです。

2026.1.3最後を書き換えました。

 色々あった一年を越して、たまき、心悠、紫露の3人は初詣に行こうと誘いあって待ち合わせをしていた。

 元日の昼近く、行く予定の神社の参道の入り口で、紫露は二人を待っていた。

 さすがに元日となれば人通りが多く、紫露は二人を見逃さないようにと首を伸ばしてあたりを見渡す。

 そこに、振袖姿の女子二人が目に入った。

 元旦に着物もいいなぁ、なんて眺めていると、その二人が紫露に向かって手を振る。

「あけましておめでとー!今年もよろしくね、紫露」

「あけおめー、ことよろ!」

「え?」

 紫露が目を凝らすと、それはたまきと心悠だった。

 着物で来るとは聞いていなかった紫露は驚いて固まり、口元を押えて目の前にやってきた二人を見つめた。

「……オメデトウゴザイマス……。ってか、マジで?」

 ようやく出た言葉はそれで、

「どーゆー意味?」

 化粧もしてもらって、結い上げた髪の心悠が、不満そうに顔を顰めていつも通りの悪態をつく。

 それでも紫露はまだ固まったまま二人をじっと見つめている。

「なんか感想ないの?紫露」

 たまきも少し口を尖らせて言うと、紫露は俯いて顔を覆った後、照れた表情で、

「マジ、着物イイっすね……」

 と言った。

 しかし、女子二人は口をそろえて「反応、きもッ」と返して後ずさる。

「なんすか、その反応!」

 今度は紫露が不満そうな顔をした。

「……いや、キモイだろ……、今のは」

「どう言えばいいんすか~……。久々に会ってそんな綺麗な格好されたら、俺だって照れますよ。俺、完全に一人普段着だし」

 ほんのりと赤らんだ顔を二人から逸らしながら、紫露は自分の服装を見下ろして「せめていい格好して来いって言ってよ……」と呟きながら、ぶつぶつと言い訳をしている。

 たまきと心悠は顔を見合わせ、ふっと笑うと、

「なるほどね?」

「照れ隠しだったか~」

 そう言いながら、二人は紫露を両脇から挟み込んだ。

「両手に花ですねぇ、紫露さん」

 茶化すように微笑むたまきと、

「さ、お参り行こうよ」

 満足そうな笑顔でそう言って腕を引く心悠。

 照れた顔をしながら、紫露は「仕方ないなぁ」と、参道の人波に混ざっていった。


 たまきたちの着ている着物は、着物が好きで集めたたまきの祖母の持ち物から二人でそれぞれ選んだものだった。

 朝から心悠の母の知り合いの美容師さんに頼んで着付けとメイクをしてもらった。

「っていうか、紫露が進学校行ってるとか、マジでまだ信じられないんだけど。ちゃんと勉強してるの?」

「失礼っすねぇ、ちゃんとやってますよ」

 外見は見とれるほど綺麗に着飾っているが、中身はいつもの心悠だな。と思いながら紫露は答えた。

「休日も先生にわからないところ聞きに行ったりしてるみたいだよ」

「え?補習じゃなくて?」

「身も蓋もねぇな。赤点なんかひとつも取ってませんよ~だ」

 人波の中で三人は身を寄せ合い、久々の再会に、近況の話に花を咲かせている。

「それが解せない。中学だって部活メインで、テストも平均って感じだったでしょ?うちらの中学の平均でどうにかなるような偏差値じゃないじゃん」

「そこっすよ。俺は頑張ればできる子なんだぞ」

 そう言って胸を張って見せる。

 紫露が褒めてほしいモードを発動させたのを察知して、

「紫露は偉い、偉い」

「まぁ、すごいよ。紫露は」

 たまきと心悠が棒読みで紫露を褒める。

 中学時代の部活のノリだ。

「心こもってねぇ~」

 と、頭をがくっと下げて紫露は大げさにため息をつくが、この雰囲気が懐かしくて紫露は口元が緩むのを抑えられない。

 鼻のあたりを掻くふりをして、紫露は口元を隠した。

 

 そんなことをしているうちに、たまきたちが参拝する順番が近づいた。

 去年一年、いろいろなことがあった。

 なんだか三人は神妙な顔になっていく。

 神殿に近づく段を一段ずつのぼり、お賽銭を投げ込むと、どうか今年はとびっきりいい年になってほしい。と、そんな願いを込めて、三人はそれぞれの想いを秘めて、心を込めて手を合わせた。

 

「おみくじひこー」

 打って変わって心悠は言って、着物とは思えないほどおみくじの場所まで素早く駆けて行き、二人を手招きしている。

 たまきと紫露は、はしゃいだ様子の心悠を見て微笑むと、そちらへ向かった。

「じゃ、せーので開けよう」

 三人が顔を見合わせ、巻かれたおみくじの紙を「せーの」で広げた。

「おっしゃ!あたし大吉ぃ」

「うそ!私も大吉ぃ」

「うそだろ……俺、末吉なんだけど……?先輩二人に運吸い取られてない?」

「吸い取ってねーわ。なんか面白いこと書いてあった?」

「おみくじに面白さ求めんなよ?」

 紫露はおみくじを眺めながら、意気消沈した声で答える。

「……願望、諦めず努力すれば叶う兆しあり、学問、基礎に立ち返り、焦らず努力を重ねよ。待ち人、寄り道してくる。恋愛、遅れて好転する」

「寄り道する待ち人ってなに?」

「知らないっすよ、まっすぐ来いよ……」

「寄り道先で良いもの調達してるのかもよ」

 紫露が読み上げていく内容に、たまきと心悠が茶化しながら笑い声を上げた。

「大吉組はどうなんすかぁ」

 不満そうに顎を上げて、紫露が言う。

「私はねぇ、願望、すぐ叶う。学問、自信をもって完徹せよ、待ち人、確実に来る、恋愛、近くに良縁あり。たまきは?」

「私は、願望、必ず叶う、学問、安心して勉学せよ、待ち人、来る。たよりあり、恋愛、愛情を信じなさい」

「いいじゃん、いいじゃん」

 心悠はニヤつきながら、「愛情を信じなさいだよ~、信じちゃいなよ~~」と、たまきを茶化して、

「もー、なにそれ?……心悠だって、近くに良縁あるんでしょ?」

 と、何となく照れながら心悠を小突く。

「え?誰かいる?クラスとか良い奴いたっけ?全然思いつかない」

 真剣な顔で首をかしげる心悠を横目で見ながら、

「マジでおかしい……。ここにイイ男がいるじゃないの」

 と、不機嫌そうに唇を突き出して紫露が言う。

「紫露が一番ないよ」

「はぁ?どーゆーこと?俺、優良物件だよねぇ?」

 バッサリと断言する心悠の言葉を聞いて、ますます不機嫌な顔をして、たまきに同意を求める。

「んー、紫露に関してはいい人かどうかじゃないよね」

 たまきが首をかしげて、どちらかと言うと心悠の意見に同調した。

「あ?」

 紫露の態度がますます悪くなりそうなところで、心悠は紫露の肩に手を置き、

「まぁ、おみくじは結んでさ、甘酒飲めば運気上昇するって」

 と適当に話をそらした。

「大吉に挟まれてれば、末吉も大吉に変わるって」

 たまきもそれに乗っかる。

「いやいや、運気の話じゃないでしょ、今。しかもなにその、オセロ理論みたいなやつぅ。慰めが雑だよ」

 着物女子二人に挟まれて紫露は肩を落としながらも、おみくじが結ばれている木の方へと向かった。

 三人は仲良く並んだまま、各々のおみくじを木に結ぶ。

 たまきの言ったとおりに、紫露のおみくじをたまきと心悠の大吉で挟む形で結ぶと、たまきと心悠は紫露の背中を叩いて

「はい、これで大吉」

 と、にっこりと微笑んだ。

「雑ぅ」

 紫露は一言突っ込んでから、甘酒を配っている社務所の近くへと向かう。

 甘酒を受け取りながら、「写真とろーよ」とたまきがスマホを取り出した。

「いいねぇ。……白目むくなよ、紫露」

 心悠が紫露に近づきながら言うと、こめかみのあたりを指先で掻きながら、ほんのり恥ずかしそうに耳を赤らめて、

「するか!とびっきりのイケメン顔してやる」

 と反論して顔を逸らした。

「どんなだよ」

 心悠はふはっと笑って紫露の肩を叩いて、紫露は小さく「いて」と呻く。

「はいはーい。じゃあ紫露、とびっきりのイケメン顔お願いしま~す」

 たまきがスマホを構えて茶化すと、紫露は何通りかのキメ顔を見せたのでそのたびにシャッターをきり、たまきたちは写真を確認しながら笑いあった。

「いや~、今年初笑いだわ」

「笑われる覚えはないスけどね」

 まだキメ顔をして、口の端を持ち上げて笑いながら紫露がツッコむが、

「はいはい。じゃあ次、うちらのツーショよろしく」

 と、すぐに切り替えて心悠が紫露にスマホを渡す。

「……うわ、絶対俺このために呼ばれたじゃん」

 不満そうにまた顔を歪めた後、すぐにノリノリで「そこもっと近づいて」とか「視線こっちお願いします」と言いながら撮影をし始めた。

 また写真を確認して批評すると、三人はまた笑いあう。

 

 その後、少しあたりを散策していると、着物の二人はさすがに疲れてきたらしく、沿道の店舗の軒先にあったベンチを借りて休憩をとった。

「さすがに疲れた~足も痛いし」

「やっぱ、着物は大変だねぇ」

 二人が一息ついていると、紫露がニッと笑って

「さっき迎え呼んだんで、ちょっと待っててくださいね~」

 と、スマホを確認している。

「迎え?」

「時雨さん?杠葉さんと初詣デートとかしないの?」

 そう言って聞くと、紫露はふふんと鼻を鳴らして自慢げに胸をそらした。

「最高の運転手呼んだんで」

「……どうせ、梧さんだろ」

「えっ?」

「どうせとか言うな」

「時雨さんじゃなかったら梧さんしかいないじゃん」

「え、ちょ、梧さん呼んだの?」

「良かったね、たまき。()()()()でしょ?深夜のラブラブ電話事件」

「ななな、なに言ってんの?」

「は?俺それ聞いてない。何?深夜に電話?どゆこと?」

「紫露にはまだ言えないな~。刺激強すぎ」

「うっそ、なになに?」

 言われて心悠は舌をペロッと出して、肩をすくめる。

「ちょ、誤解を生むようなこと言わないで!……お正月にゆっくりしてるのに悪いじゃん。断ってよ、紫露」

 たまきが慌てて立ち上がり、右往左往していると紫露がふっと笑って、

「まぁ、もう遅いっすね」

 と言うと、視線をたまきの後方に投げた。

 たまきが恐る恐る後ろを振り向くと、梧が走って駆け寄ってくるのが見えた。

 とっさにたまきは隠れるように紫露の後ろに回った。

「……待たせたか?」

 息を切らせた梧が、三人の顔を見つめて言う。

「アオ君あけおめー。今年もよろしくね。待ってないよ。ちょっと休憩してただけ。むしろめっちゃ早いじゃん」

 スマホで時間を確認して、紫露がニヤつく。

 梧は若干むっとした顔で紫露を軽くにらむと、紫露は肩をすくめてから素早く横に避けて、たまきの背中を押して梧の方へと押し出す。

 たまきは慌てたが、観念して俯いた。

「明けましておめでとうございます……」

 梧は心悠とたまきを交互に見て、

「……あけましておめでとう。良く似合ってる。借りたのか?」

 と、微笑んだ。

「たまきのお祖母さんに借りました。着物がお好きらしくてすごくいっぱいあって、選ばせてもらったんです。ね?」

 心悠がたまきに同意を求めると、遠慮がちに俯いたまま頷く。

 ……梧はそんなたまきに一歩近づき、ふと手を伸ばす。

 ゆっくりと頬に手を近づけると、たまきが驚いて顔を上げた。

 梧と目が合うと、ふ、と梧が目を細めて微笑む。

「わ……」

 その表情の梧を見たこともなくて、紫露が小声で声を上げ、まるで乙女かのように顔を赤らめて口元を両手で覆った。

 気配を消しながら心悠の隣に座ると、心悠も声を立てないように口を手で覆って二人の様子を見つめた。

 梧はたまきの頬にそっと指先で触れた後、

「……ずいぶん、綺麗にしてもらったな」

 と、今度は少し怪訝そうに眉をひそめて言った。

「……無事に二人の騎士(ナイト)の役割は務めたのか?紫露」

 視線を紫露の元に投げて、梧が言うと、乙女のように身を縮めていた紫露がハッとして、居住まいを正すと、

「そりゃあ、もちろん」

 と胸を張った。

 心悠は紫露を小突いて「そんなこと考えてなかっただろ」と、ツッコんでいる。

 たまきはそんなやり取りなど耳に入らないようで、顔を真っ赤にして固まっていた。

 心臓がどくどくと高鳴って、頭に血が上り、卒倒しそうだ。

「……もう帰るか?」

 梧が三人の顔を見渡してそう言うと、たまきはハッと我に返った。

「……そだね」

 もう少し甘い雰囲気の二人を見れるかと思っていた紫露が残念そうに答えると、立ち上がった。

 振り向いて、さりげなく心悠に手を差し出すと、心悠は少し驚いた顔をした後に、その手を取って立ち上がる。

「二人とも、歩けるか?」

 たまきと心悠に声をかけると、二人は顔を見合わせて「大丈夫です」と答えた。

 梧は「すぐそこの駐車場だ」と告げて、二人の歩調を気にしながら歩きだした。

 その隣に紫露が並び、心悠はたまきの横に並んだ。

「たまき、大丈夫?」

 少しニヤつきながら心悠が小声で聞くと、たまきは軽く心悠を睨んだ後、「だいじょぶじゃないよ……」とため息を漏らして胸元を押さえた。

「……こりゃあ苦労するね、たまき」

「……勘違いしそうになるでしょ?」

「勘違いじゃないかもよ」

「そんなわけないじゃん……」

 ハルのことを抜きにしても、たまきは梧にとって子供にしか見えていないんだとしか、たまきには思えなかった。

「そうかなぁ?……愛情を信じなさい、だよ?」

「惑わせないでよ……」

 そう言うと、たまきは沈んだ表情をした。

 心悠は、どうしてそんなに信じられないんだろうと思いながらも、梧が触れた方とは逆の、たまきのほっぺたを軽くつねった。

「いたっ」

 たまきが声を上げると、前を歩いていた二人が振り向くが、たまきと心悠は首を横に振って「何でもない」と笑みを作る。

 梧と紫露は首をかしげてまた歩き出す。

 それを見てから、心悠はたまきに顔を寄せ、

「お正月からそんな顔しないの」

「……ごめん」

「人生、何が起きるかわからないんだから。決めつけは良くないぞ」

「……う~ん」

「たまきぃ?」

「はぁい」

 たまきは返事をして、心悠と共に先を歩く二人についていく。

 二人はいつもよりゆっくり歩いてくれているようだった。


 駐車場に着くと、梧の向かった先が今までと違う車だったので、たまきは首を傾げた。

 他を見渡しても、以前の車は見当たらない。

「車、変えたんですか?」

 梧はたまきの方を振り返ると、すぐに車の方に視線を戻して「……あぁ」とだけ答えた。梧と並んで歩いていた紫露が顔を覗き込んで、梧は紫露から顔を逸らしている。

 梧は後部座席のドアを開けて、たまきと心悠をエスコートする。

 スマートなエスコートに心悠とたまきは照れつつも車に乗り込んだ。

 前より車高が低いので、着物でも乗り込みやすかった。

 その間に紫露はとっとと助手席に乗り込んでいて、梧が最後に運転席に乗り込んで、「どこか他に寄りたいところはないのか?」と梧が振り向くが、心悠が「だいじょうぶです」と答えて、たまきも頷いた。

着付けで早起きして、この時間になるともう疲れてしまっていた。

「わかった」

 と、梧が言って出発すると、しばらく何か喋っていたたまきたちがすぐに静かになった。

 紫露が後部座席を見ると、二人は互いにもたれ合いながら眠ってしまっている。

「……寝てるし」

 紫露が小声で呟くと、梧もバックミラーで二人を確認して微笑んだあと

「疲れたんだ。朝早くから着付けをしたんだろう」

 と、言うとできるだけ静かな運転を心がけた。

 姿勢を戻して、紫露がチラッと梧の方を見た。

「……アオ君が車変えたのは、たまき先輩のため?」

 少しニヤついた顔で紫露が言ったのを梧は横目で見たが、梧は何も答えない。

 その沈黙が答えだと思いつつ、紫露はニヤニヤ顔のまま、満足げにしている。

 梧は前の車の車検を取ったのにも関わらず、たまきの病気がわかったあと、車を変えた。

 梧は後先を考えないタイプではないし、無駄遣いもほとんどない。初めから変えるつもりなら、車検は取らなかったはずだ。

 前の車は車高が高くて、膝に負担がかかる。

「……お前はなんで、陸上をやめたんだ?」

 梧の質問に、紫露は動きを止めた。今度は紫露が沈黙する番だった。

 梧はその理由をどうしても聞きたいわけではなかった。ただ、お前にも答えたくないことはあるだろう?と言いたかっただけだ。

 だが、紫露は、しばらくしてためらいがちに口を開く。

「……たまき先輩が走れないからじゃないよ。前から決めてた。……理由は、時期が来たら話すよ」

 そう、真剣な顔をしたので、梧は驚いて、そのまま口をつぐむ。

「ねぇ、アオ君。行って欲しいところあるんだけど」

 梧は、紫露の提案に頷いたのだった。



「心悠先輩、たまき先輩!起きて」

 紫露の声に二人は同時に目を覚ました。一瞬、梧の車の中だと言うことを忘れていて、たまきたちは顔を見合わせてから、紫露の開けたドアの先を寝ぼけ眼で見た。

「え……?」

「わぁ……」

 それぞれに感嘆の声を上げた二人に、梧ももう片側のドアを開けて、それぞれエスコートの手を差し出す。

 そこは有名な海辺の夕日スポットで、沈みゆく茜色の夕日が空を美しく染め上げて、水面にもキラキラと反射してとても綺麗だった。

 他にもカップルや家族連れが浜辺にいる。

「すご……」

「きれー……」

 夕日に見惚れている二人に、紫露と梧は顔を見合わせてから、満足げに微笑んだ。

 少し眠って充電を済ませた二人は、着物のままはしゃいで自撮りを撮っている。

 すぐに梧が「俺が撮ろう」と、二人の写真を何枚か撮ると、紫露の背中を押して3人で撮ってやると言うと、紫露は「俺はいいよ」と言ったけれど、二人が紫露の手を引いて、3人で写真を撮った。

「梧さんも一緒に撮りましょー!」

 と、心悠が声を上げると、梧は「俺はいい」と紫露と同様に拒否してみたが、たまきと紫露が梧の手を引き、心悠が近くにいた人に写真を頼むと、今度は4人並んで写真を撮ったのだった。

 

 そのあとは、静かに並んで太陽が水平線に沈んでいくのを眺めた。

 その綺麗さと、儚さに、たまきはなんだか胸がきゅんと苦しくなった。

 悲しいわけじゃない。この瞬間をみんなで過ごしていることが嬉しかった。

「どうかしたか?」

 その様子に気づいて、梧がたまきに声をかけると、たまきは首を横に振ってから、

「みんなとここに来れて、よかったです」

 と、言って微笑んだ。

 それを聞いた心悠が「わたしも!」と、言ってたまきを抱きしめる。

 たまきを抱きしめながら、

「連れてきてくれて、ありがとうございます。梧さん」

 と言うと、梧は紫露の方に視線を送って

「お礼は紫露に言ってくれ。提案したのは紫露だから」

 と言った。

 紫露はギョッとした顔をしたあと、梧に向かって口元に人差し指を立てる仕草をする。

 だがもちろん、時すでに遅し。

「マジ?紫露の提案?」

「ありがとう、紫露!」

 言って二人は紫露の頭に手を伸ばし、もみくちゃに撫で回す。

「や、やめろってぇ!」

 紫露が声を上げると、たまきたちは笑う。

 しばらくそうしてじゃれあった3人を微笑んで見つめたあと、

「……さ、帰るぞ」

 と、梧は踵を返した。

 まだ戯れながら車へと向かう心悠と紫露を置いて、たまきは少し早歩きで梧の方へと歩み寄って、その服の裾を引いた。

 驚いた梧が振り返ると、たまきが、

「紫露の提案だけど、梧さんも連れてきてくれて、ありがとうございました」

 と、嬉しそうに微笑んで、軽く頭を下げた。

 梧は面食らって一瞬固まったあと、

「……いや。楽しかったなら……よかった」

 と、答える。

 車の方へと向かうたまきを見て、呆然と見送っていると、後ろから来た紫露が、梧の背中を叩いて

「さ、帰ろ、アオ君」

 と、ニヤついた顔をした。

 なんだかムッとした梧が、紫露の頭を二人がしたのと同じように、……いや、もう少し雑な扱いで撫でてから、背中を叩き返した。

「いってぇ!」

 声を上げた紫露を置いて、車に向かう3人は「遅いぞー」と紫露に向かって言った。

「なんなん、もー。みんな俺の扱い雑すぎん?」

 そう呟きながら、紫露は車の方へと走っていったのだった。


皆様、良い一年を過ごせますように。

今年もよろしくお願いいたします。

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