苛立ちが渦巻く (I)
ナダンだ。いよいよ俺の登場なところまで着いたや。
興奮している!出来るだけ早くそれぞれの新しい章を読んでもらいたいなと思っているから・・・
なので、各章を細かく分ける事にしたんだ。
これは第一草を構成する4つ部分の最初のものだ。
~ 第一 ~ 苛立ちが渦巻く (I) ~ 第一 ~
「次回、レンは宝をゲットするのか?それとも火玉ボールを顔に食らうのか?宝ヒーローズのスリリングなシーズンフィナーレをお見逃しなく!」
アナウンサーによくあるドラマチックな言い方で、がらがらな男性の声が言った。
「勘弁や!あと10秒だけだろ!長くて15秒で戦いはお終いのは間違いないじゃないか!!で、もう結果も分かってるよ。レンがな、ちょっとカリカリなるし・・・センがヒールしてあげるし、ゴーレムは倒れし。やがって、パーティは宝を手に入れんだ。いつも、いつも金貨も宝石もトリンケットも何でもゲットや!なんで待たせるんだよ?うう、毎週の番組は嫌いだ」
トコーの少年、ナダンが体を伸ばし過ぎてバランスを崩す。
花瓶が砕け散り、剣が割れた陶器に混じってむき出しの床にガタガタと叩けた。
ナダンは叫んだ。刀身がもう少しで片方の足元を切り落とすところだった!
剣ってこんなに重くなくきゃならないのかよ。
「ナダン!マーのお気に入りだったのに!」
腰に両手を当てた姿勢でエレミンは弟にドタドタと歩み寄り、ため息を吐いてから剣を引きずった。
両腕の力を入れても剣を動かすのに苦労している。
「そんなに遠くなければ、川に投げ込んでやるのに!」
外で喧嘩している怒った猫を連想させる音で切っ先が、キーーっと床をかすった。
小さく丸い耳に手を当てるナダンは顔をゆがめた。
「刃が鈍るだろうが!」
「それなら壁から外すのを止めてよ。おもちゃじゃないんだから、ナダン。ああもう、あ、もうっ!観てないなら消しなさいよ。頭が痛くなってきた」
ふらつくエレミンは、鋭利な金属をできるだけ体から離すようにしている。
テレビでは靴下型イヤーウォーマーのインフォマーシャルを流していた。
「...お得なキャンペーンで今から六十分以内にご購入いただくと、1足の値段で4足が手に入る!」
長い黄色髪で、頭の両脇に紫色の靴下をはいたプレゼンターが言った。
靴下を関わらず、可愛い女の子なのだ。ハルジャルにしてはな。
ナダンが遠観を切った。妹は説教を続けている。
リリアンに誓って、マーよりも非道いのだ!
「君、何故あんな番組を見るの全く解かんない。あたしらみたいなトコーが宝探しに選ばれると思う?その前に王はロバに王妃の冠をいただくでしょう!」
深呼吸をしたエレミンはドレスのポケットに手を突っ込んだ。
ナダンはまるで布越しに拳を握っているのが見えないと思ってやがるのかよ。
「今日も学校に行かなかったよね」
少年はため息をついた。
剣を持ち上げて壁に引っ掛けた。ケリング武器を振った時だけ、剣は彼にとって重すぎるのだ。
「学校なんて時間の無駄や、姉。ダーも、マーもそう思った」
つま先立ちになり、ナダンを見上げるエレミンの顔には苛立ちと心配が渦巻いている。
まだ、弟は幼いころの脂肪が付いていた。
そのせいで、顔は傷ついたリンゴみたいに丸みを帯びて見えた。
ナダンは、その腐ったリンゴのように、姉が自分を追い出したがっているのではないかと感づいた。
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