浮世に咲いた徒花よ
出発は下に行く階段を確認した後、ここの安全地帯が1度効能が切れるまで待って、それが復活したタイミングで移動することにした。
少しでも時間稼ぐ為である。
襲って来た奴らに同情している程こちらに余裕はない。
殺すつもりで来た奴らは殺される覚悟もしなければいけない。
月並みな言葉だけど、そういうものだと俺も思う。
俺的にはもう少し積極的な専守防衛で、殴って来そうな奴は先に潰しておきたいと思ってる。
でもまぁ、今回はここから脱出したら領主は北の辺境伯になってるだろうなぁ。
ちょっと、殴りに行くにはハードル高いな。
「ここから出たら、どうする?」
出る所までは考えてたけど、出てからのこと考えてなかったよ。
「ガジュマル様が作ってる拠点に行くわよ」
エレオラが当たり前の様に返して来た。
「ほえ?拠点?」
「あれ、聞いてないの?」
聞いてないよー
コクコクコクと頷いてみた。
「ダンジョンがガジュマル様のものになった時に、ギルドから貰ったものあったでしょ」
ギルドでの出来事を思い出してみる。
“中サイズのコアを2つ用意せい、1つはお前らがここに来て監視するため、1つはわしが取り込んでここの環境を整備する為じゃ”
あれ?取り込んで整備?
ダンジョンコアは取り込んでたよね?
ん?ん?
「ギルドからなんでダンジョンコア貰ったんだ?」
「ダンジョンの外側にもダンジョンを作るのにダンジョンコアがあるとやりやすいんだって。
リソース?がなんとかって言ってたよ。
それで、今は洞窟だけじゃなくて、あの森全体もダンジョンになっていて、ガジュマル様が管理しているの」
「そのダンジョン森に拠点を作っているにゃ、ファイファー達もそっちにいるにゃ」
藁の家じゃないよね?
レンガでとは言わないから、せめて木で作ってて欲しい。
そんな話をしながら、順調に30階まで降りて来た。
25階の魔物を2人で凌げたんだから、当然といえば当然だよね。
そして、このダンジョンの攻略を30階で留めている元凶まで辿り着いた。
“ガシャ髑髏”
俺が見た時に真っ先に頭に浮かんだ名前がこれだった。
どうやら、前世の記憶が影響してるっぽい。
「ギャザースケルトンですね。
1体に見えますが、無数のスケルトンが集まって構成されてます。
ある程度ダメージを与えるとそこが取れて、複数のスケルトンになって襲ってきます。
それで時間稼ぎされているうちに、スケルトンを呼び出し欠けた部分をそれで修復してしまうんです。
その為持久戦になって、疲弊させられて探索を断念するため、この先は攻略されてない状況です」
アリシアがいつも通りにアイテムボックスから本を取り出して説明してくれた。
ここにくる時に必要な物資はほとんど俺のアイテムボックスに入れたんだけど、もしかしてアリシアの方に入れなかったのって、本で容量埋まってる?
流石にそれは無いか。
…ないよね?
「消耗を考えて戦って勝てる相手じゃねぇな、最初から全力で行くぞ」
ガヴェインが凄い形相で戦闘体制に入ろうとしてる。
あ、凄い形相じゃなくて、普通に顔が怖いだけだったわ。
「あーちょっと待って、待って、こういう面倒な奴の用にジジイから魔法教えてもらったんだから、俺に任せて」
そう言いながらアイテムボックスから闘技場で貰ってきた豆の余りを取り出す。
念の為ゴッソリ貰ってきたら、思ったより余ったんだよね。
植物の種を触媒に俺はジジイに教えてもらった魔法を唱える。
初めてなんで、ちゃんと声に出して魔法を使っておこう。
「枯れ地に花を咲かせましょう。
大きな大きな大輪を。
枯れ地に花を咲かせましょう。
『繁茂召喚!炎魂華!』」
繁茂召喚は植物モンスター限定の召喚魔法だ。
種族が限定される上に触媒まで必要だけど、その分魔物の格や場所、種族以外の縛りが非常に緩い。
存在しない魔物は召喚魔法出来ないから、どんな魔物が居るかちゃんと把握しておかないとならないけどね。
そして、炎魂華は青白い炎の花弁を持つ植物の魔物だ。
動く事も、誰かを攻撃する事も無い、人間にとってはまったく無害な魔物だ。
ただ、こいつはアンデッドの魔素、一般的に瘴気と呼ばれるものにだけ反応する。
それを取り込んで成長するという性質を持っている。
ジジイに、とにかくアンデッドに強烈に効果のある魔法を教えてくれって言ったら、この魔法と炎魂華の存在を教えてくれた。
「オ…オ…オ…オ…ォ…」
ガシャ髑髏の瘴気を吸って青白いデッカなヒマワリみたいのが、俺がまいた豆の分だけ咲いていた。
あっという間にガシャ髑髏は身体を維持できずに崩れていく。
「アリシア、リンカとローズも出してあげて、魔素吸わせるから」
「あの花は魔素に還るんですか?」
「うん、見た目は完全に植物だけど、ちゃんと魔物だからね、あれ」
ガシャ髑髏をたっぷり吸った炎魂華を摘み取り、魔素へと還していく。
…この魔法とんでもないMP使うじゃねぇか!
あのジジイにコスパとか効率とかいう概念無かったわ。
「みんなごめん!ちょっと休んでいい?」
俺はそう言いながらヘナヘナとその場にへたり込んだ。
くっそーかっこ良くきめたかったのにぃ!
何かの時代劇か演劇のセリフです。




