僕のあだ名を知ってるかい、ボンクラ野郎と言うんだよ
それは、まだ朝日が昇る前に起きた。
「起きて、起きて」
ティーがうるさい。
「おーきーてー、ねぇ、ねぇってば、起きろー!」
「あぁ!うるさい!なんなんだよ、まだ日も登ってないじゃないか!」
「ジジイじゃなかった!ガジュマル様から連絡来てる!もう!いっつもジジイって言うからうつっちゃったじゃない!」
ジジイを正式名称にしてしまえば良いのだよ。
しかし、珍しいな?
「もう、ジジイで名前統一して良いんじゃないか?とりあえず繋いで」
「うん」
これは、名前統一のうんなのかな?繋いでの返事のうんなのかな?
「ジジイを認めたつもりはないぞ」
「そうなの?まぁ、ジジイって呼ぶけど、そんな事より何かあったの?」
「うむ、ちとまずい事になったのじゃ」
「なになに?」
「ここの領主が北の辺境伯になってしまいそうじゃ」
「は?」
「現領主と宰相が新たな開拓地の視察現場にて行方不明となった。
ここの法律で1週間不在なら、北辺境伯が暫定領主になる。
1か月不在のままなら、暫定領主が正式に領主になって前の領主が見つかっても戻れん」
「ジジイなら場所分かるんじゃないのか?」
「流石のわしも完璧な場所は把握出来ておらんが、ここじゃろうって場所はある」
「どこ?」
「開拓地のそばの嘆きのダンジョンと呼ばれているレイスやバンシーが中心のダンジョンの地下25階じゃろうな」
「なんだ場所分かってるなら救出に行けば良いだけじゃん」
「それがな、そもそもそんな所に彼奴らが居るのは、落とし穴の罠にはまって落とされたせいなんじゃが、このダンジョン全50階でまだ30階ほどしか攻略出来ていない高難度ダンジョンなんじゃ、今から行ってもおそらく救出に1か月かかってしまうじゃろうな」
「その救出に俺が行けって事?」
「いや、おぬしが行ってもさして変わらん」
「じゃあ、俺がする事無いじゃん」
「おぬしは察しが悪いのう、北の辺境伯が領主になったら、おまけでバカ息子もついてくるのだぞ」
「そりゃそうだろうね」
「アリシアは人質として領主が預かるのじゃぞ」
「…ちょっと出かけるわ」
俺はジジイとの会話を強制的に終わらせて、部屋を出る。
そのまま出口方向に向かって歩き出した。
「おい!お前!どこに行くつもりだ?」
途中で警備のおっさんに見つかった。
「あ、悪いね、俺ちょっと行かなきゃならない所あるから、ここ出るわ」
「そんな事出来るわけ無いだろう!止まりなさい」
「邪魔するなら、コロスヨ」
おっさんに殺気を当てた。
今の俺ならこれくらいは出来る。
「連帯責任でここの全員が迷惑するんだぞ!」
足がガクガク震えているが、必死に訴えかけてくる。
思ってた以上にこのおっさん根性あった。
押し問答をしているうちに、人が集まってきた。
どうやら時間稼ぎをされていたらしい、警備員だけじゃなく、剣闘士達もやってきた。
「お前ら、俺を止めるつもりなら覚悟しろよ、腕や足じゃなくて首の骨折るからな、そのつもりで来いよ」
日頃から、ボッキボキに折ってきてた実績のおかげか、周りの人間が明らかに怯んでいる。
「あと半年もしたら解放戦に挑めるじゃ無いか」
「そこまで待てないんだよ」
どんどん緊張感が高まっていく。
「俺の権利をこいつに渡す!それならいいだろ?」
ブルームの声が割って入った。
「権利の譲渡なんて今まで聞いた事無いぞ」
警備のおっさんがそう言い返す。
「だが、どこにも駄目だってかいてねぇじゃねぇか、それともあれか?ここで殺し合い始めた方が良いのか?」
「…わかった、上に掛け合ってくる」
そういうと警備員のおっさんが出ていった。
「そういう事だ、何があったか知らねぇが、日が昇るまで待て。
それくらいは待てるだろ?」
俺は黙って頷いて、自分の部屋に戻った。
俺の頭はアリシアをどうやって連れ出すか?
でいっぱいだった。
歌詞




