岩の山から
評価ありがとうございました。
特に5をもらうとモチベが上がります。
side:アリシア
私は楽しい日々を過ごしていた。
自分でも自覚しているが、良く言えば活発的、悪く…いや一般的に言えばじゃじゃ馬だ。
小さい頃から冒険者に憧れ、暇さえあれば魔物図鑑や冒険譚を読み漁り、屋敷中を走り回る。
そんな女の子だった。
今回のナルニマートへ人質として出向くことにも何も悲壮感はなかった。
開拓者という二つ名があるけれども、最近ではダンジョンが大量に発見され、冒険者の国と言われるようになっている。
そんな国でなら私も冒険者になる事も、出来るかもと密かに期待してた。
オークに襲われた時もずっと馬車の中に居たために、現実感が何もなく、気づけば魔素によって自分が強くなっていたという実感だけが残って居た。
念願のテイム魔法も教えて貰える事になり、他の魔法も少しづつ使えるようになっていた。
ジョブこそ、何もついていないが、充分冒険者になれるという自信があった。
そんな時に急遽廃村の探索に同行出来るという話が来た。
もちろん二つ返事で受けた。
お供のメンバーはみんな強く、目の前で強敵であるはずに魔物達をどんどん倒す。
冒険者の活躍を特等席で観覧している。
しかも、少しだけど参加もして、冒険者の仲間入りもさせてもらえる。
そんな気分でずっとついて来ていた。
その途中でフェニックスをテイムするというは破格の幸運にも恵まれた。
さらにダンジョン探索まで出来た。
ずっと憧れていたものがいっぺんに手に入った夢のような時間だった。
そんな私は今、心から後悔していた。
私は誰よりも先にカオスホッパーに気づいた。
しかし、それをそんなに重要だとは思わなかった。
カオスホッパーは足が黒い、誰でも気づく特徴を持っている。
私といつも一緒にいる彼はとても強い。
だから、様々な知識が非常に偏っている事を失念してしまった。
私の声かけが遅れた事で、カオスホッパーのスキルが解放されてしまった。
魔素で強化されていても私は普段は何も身体的な訓練はしていない。
緊急で逃げるような時にその弊害が出てしまった。
転んだのである。
だが、望んでここまでついて来たのは自分である。
一端の冒険者になった気分でいた。
自業自得だと思った。
だから、逃げてと叫んだ。
だけど、彼はそんな私を見捨てなかった。
その光景を見て動けなかった。
「あいつの覚悟を無駄にするな!」
誰が言ったのか認識出来なかったけど、その言葉で必死に岩山まで走った。
コールホッパーの鳴き声があたり一面から聞こえてくる。
それでも何とか岩山までたどり着いた。
ダンジョンの階層を移動するための出入り口周辺は不思議な結界で魔物が近づかないセーフティゾーンになっている。
その岩山を少し駆け上がり来た方向に目を向けると、私たちを追って来ていた魔物も彼に向かって行ってるのが見えた。
「どうしよう!」
どうする事も出来ない自分がなんと情けないことか。
「大丈夫、あいつを信じるのよ!あいつは強いから!」
故郷からずっと一緒だったエリシアがそう私を励ましてくれる。
その言葉通り彼は強かった。
あれだけの数の魔物を掻い潜り、厄介なデスファントムを上手くいなして確実にこちらへ近づいている。
そんな時にひときわ大きな魔物が現れた。
「…オーガジェネラル」
この状態で最悪の魔物が出てしまった。
オーガジェネラルから一瞬波動のようなものが出る。
スキル『統率』である。
これにより指揮下に入った魔物は強化され、さらに兵士のように組織化された動きをするようになる。
あっという間に形勢が逆転していく。
「あぁ、あぁ、あぁ」
私は何も出来ない、ただ、涙を流して見ていることしか出来ない。
助けに行く勇気も力もない。
そんな時に急に胸が熱くなる。
「パパ!」
私の中で眠っていたはずのリンカが私の感覚を共有して状況に気付いてしまった。
でも、とても助けに行けるような状況ではない。
「リンカちゃん聞いて、今のあなたでは助けに行けるだけの力が残ってないの…。
それでも、私に力をあげれば少しだけなら動けると思う。
でも、リンカちゃんはそれで力尽きてしまうかもしれない…。」
「パパを助ける!アリシアちゃんお願い!力をわけて!」
私は今出来る事をする事に決めた。
テイム魔法を唱える。
「我が親愛なる従僕よ、我が血肉を持って力を与えん『デディケート』」
自分のテイムした魔物に魔素とMPの半分を与える事で消耗した魔物を急速に回復する魔法。
魔素を与えるのでレベルは半分になり、与える分とは別に発動のためにもMPを使うため、この魔法を使った後のテイマーの代償が大きすぎて、ほとんど使われない魔法である。
「リンカちゃん、あとはお願いね」
私は弱い、それでも彼を助けたい。
リンカちゃんこんな無理をさせてごめんね。
アリシアは崩れ落ちるように座り込んだ。
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