ジジイとハサミは使いよう
いつもより少しだけ長くなりました。
しかし、エアーチェンジはやっぱりヤバいなぁ。
欠点は生活魔法のため、自分の周囲くらいの射程距離と効果範囲が非常に狭いって部分かな。
範囲魔法みたいな使い方できないし、遠い所だと届かない。
後は手加減が難しい事かな。
どのくらいの濃度でどのくらいの相手がどのくらいの時間で倒れるみたいなのは今の所検証出来ないし。
これに土壌版ないんだろうか?
有りそうな気がする。
帰ったら聞いてみよう。
そんな事をボーっと考えていたら、残ってたレッドキャップは牽制してもらってた皆んながそのまま処理してくれた。
疾風隊強いな!
「これはどういう事だ!」
バカ息子が怒ってらっしゃる。
「どういう事って、あなた達が危なそうだから助けただけよ」
エレオラがとぼけた顔でそう言ってる。
「そうにゃ!感謝してほしいにゃ!」
メイシアもそれに乗っかった。
「いけしゃあしゃあと良く言えたもんだ!
明らかに魔素の独占を行ったではないか!」
「私達は全員このレベルの魔物じゃ魔素は吸収出来ないから、その抗議は通らないわよ」
「アリシアは吸収出来るではないか!」
「アリシアに魔素を吸収させるって無理言って連れ出したのはお前にゃ」
「ぐぬぬぬ、そ、そうだ!
マシューも吸収しておったではないか」
「マシューはお前んところの隊員だろ、それこそ独占してなかった証拠じゃねぇか」
偶然ついて来ただけだったけど、せっかくだから利用させてもらうことにした。
「くそ、もう良い!次は我々と共同で戦え!」
最初からそう言えば良かったのに、自分たちだけとか言って魔素を独り占めしようとするからこんな目にあってるって分かってないだろうなぁ。
「はーい、わっかりましたー」
俺なりに真摯な態度で返事をした。
「あ、待って!
このまま探索つづけるの?」
アリシアが突然会話に入って来た。
珍しいな。
「どうしたの?」
エレオラも不思議がってる。
「あの、レッドキャップって特殊進化種だから、希少種並みに個体が少ないの。
だから、こんなに沢山居るって普通じゃ有りえないの!」
「普通じゃないって事?」
俺もなんか違和感あったんだよね。
妖魔の森で1回もみたことなかったし。
「うん。
でも、レッドキャップが沢山生まれる現象はあって」
そこまで言うと、アイテムボックスからなんか分厚い本を取り出した。
馬車で見た本と別の本だ。
ゴブリン関係だけで2冊も本持ってるのか…。
結構頻繁に実家から送ってもらったり、お願いして買ったりしてるのは知ってたけど、アイテムボックスの中に何冊入ってるんだろう?
「ここ見て、レッドキャップからの進化種のレッドクラウン
通称、ゴブリンキング」
「にゃ!ゴブリンキングなんてある意味オークエンペラーより厄介にゃ!」
「え!そうなの?
オークの方が魔物として強いんじゃない?」
「強さの方向性が違うのよ。
エンペラー自体もトロルよりは強いけど単体では対処できないことはなかったでしょ。
あいつの強さは際限なく仲間を集める事と、オークリーダー的な存在を生み出せる事。
時間が経てば厄介だけど個の強さはそこまでじゃ無いから早い段階ならまだ対処できるの。
ゴブリンキングは個の強さを上げちゃうのよ」
エレオラさんが詳しく教えてくれた。
「でも、レッドキャップが増えるとか聞いた事ないにゃ!」
「そうです。
通常では起こらないのですが、同格のメス。
区別してゴブリンクイーンって呼ばれる個体とつがいになる事で、レッドキャップを繁殖するようになります。
それが、こちらの本に解説されています」
「えーっとゴブリンキングの方がオークエンペラーより個体の強さは強いんだよね?」
「そうにゃ」
「それが2体居ると」
「そうにゃ」
「んで周りはレッドキャップで溢れてると…」
「そうにゃ」
「よし!帰ろう!」
「何を言ってる!ここで帰るなど出来るわけないだろう!」
バカ息子が俺の提案に真っ向から反対してきた。
「え?」
こいつバカなの?死ぬの?
「はぁぁぁ、ヴァレッグ様は今回の遠征で大見得を切って出て来たから、このまま何も成果なしでは帰れないと思ってるのよ」
バカ息子に聞こえないように少し離れてから、これでもかって言うくらいでかいため息の後に、エレオラが解説してくれた。
「勝てる見込みあるの?」
「五分五分にゃ、しかも全員生きて帰れるかは微妙にゃ」
「あいつら見捨てて帰るって選択肢は?」
「無理ね、残念だけど」
「ちょっと1人で考え事して良い?」
「うーん…なんとか時間稼ぎしてみるわ」
さすがエレオラ、頼りになる!
そこにシビレル、憧れるぅ。
「ちょっとごめん、用足しに行ってくる」
大きめの声でそう伝えると、他の人間から離れて木の陰に隠れる。
「ティー、ジジイと連絡とってくれる?」
「いーよー」
空気読んで他の人に姿見せないように胸元辺りに現れて、ジジイに連絡してくれた。
「なんじゃクソボウズ」
見た目はティーのままで声だけジジイの声になってる。
シュールすぎる。
気持ち悪いまである。
「クソジジイ元気にしてたか?」
「クソは余計じゃ、おぬしがちっとも魔素をよこさんから、すっかり元気なくなったわい」
「そうか、それは良かった。
で、相談なんだけど、ゴブリンキングとレッドキャップの群れって俺たちに倒せると思うか」
「おー倒せる倒せる、さっさと行って死んでこい」
「どっちだよ!
真面目な話、樹木魔法まで使ったらなんとかなるか?」
「なんとかなるだろうが辞めとけ、バレたらあのバカ息子に色々言いふらされて人生終わるぞ」
この言いようは、ここまでの事ほぼ全て把握してるな。
「なんか弱点とかないのか?」
「あやつに限った事ではないが、ゴブリン種は火に弱いぞ」
「火かぁ…家に閉じ込めて燃やすか?」
「流石にその程度じゃ死なんぞ、仮にもキングと言われるだけあるからのう」
「うーん…なぁ、エアーチェンジ土壌版みたいのないか?」
「樹木魔法に土壌改良はあるぞ。
植物の育成を助けるものじゃ」
「それって、エアーチェンジと同じで組成そのものを変化出来るのか?」
「無論じゃ、それに人間の使う生活魔法にもアースチェンジはあったはずじゃぞ」
「土壌改良の劣化版?」
「そんな感じじゃな、あの豚の三兄弟のどいつかは使えるはずじゃ」
「そんな事まで分かるんだ!」
「豚の種族特性じゃ、土いじりが好きだからの、3匹居ればどれか1匹くらいは使えるじゃろ」
まぁまぁ、ひどい言いようだけど、この情報は助かる。
「なぁ、俺が火の中で一緒にゴブリンキングと居て、俺だか助かるとか出来ないか」
「おぬしが、属性付与の練習しておるんじゃろ?
なら、それを自分にかければよかろう」
「え!マジで!あれって自分にかけれるの!」
「むしろ、なぜ自分以外にかけれるのに、自分にかけれないと思ったんじゃ?」
「ちなみにどの属性付与するのが良いの?」
「どの属性でも効果はあるが、自身の魔法との相性などにも左右されるからの。
あぁ、同時に2種類かけられる複合属性の方が効率は良いぞ。
おぬしの習熟度次第じゃがの」
「じゃあ樹木属性の方がいいんじゃないの?」
「目立つから辞めておけ」
「そっかー、わかった」
俺はみんなの所に戻ることにした。
「ごめーん大きい方で、なかなか出なくてさー」
「そんな報告いらないにゃ」
「とりあえず行ってみて、やばかったら即逃げるって事でどう?」
バカ息子に妥協案を提出してみた。
「仕方がない、お前達は俺たちが撤退する時には殿をしてもらうからな」
「はーい、わっかりましたー」
俺は工房からくすねて来た処分品のポーションの数を思い出しながら。
真摯な態度で返事をした。
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