爺いの独り言 2
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ワシは植物のある所であればどこにでも行ける。
とは言っても、意識だけで本体が行けるわけでは無いが、何かを見聞きするならば充分じゃ。
そして、重要なのは、木は柱や梁になっても死んでいる訳では無い。
朽ちるその時まで木は生きておる。
そして植物は周りで起きた事をある程度の期間は記憶しておる。
ワシはその記憶を取り出す事が出来る。
何が言いたいかというと、ワシがその気になればここ数日に起きた事なら隠し事なぞ出来ぬという事じゃ。
…こちらから干渉出来ぬから、歯痒い思いも随分してきたがの!
道に生えている草花の記憶を辿りとある村の建物まで来た。
この辺の基準では屋敷と呼ぶのじゃろうが、せいぜい大きな家程度に建物じゃ。
その屋敷の柱から記憶を読む。
「言いつけ通り捨ててきました…」
中年の農夫らしき男が、壮年の村長らしき男にそう伝えておる。
「領主の命令とはいえ、辛いな…」
「あんなエロボケ領主のせいで大事な働き手が2人も失うってのは感情的な事を抜きにしても厳しいですよ」
農夫が悔しそうな顔をしてそう村長に訴えかける。
「自分が見染めた女を手に入れる為に、亭主を戦に駆り出して戦死させ、息子を妖魔の森に投げ捨てさせる…とてもじゃないが、まともな人間のやる事じゃ無いな」
「それに逆らえずに加担した俺らも、まともな人間じゃないですけどね」
自嘲気味に農夫がそう返事をした。
「一応死なないように、木が緩衝するように下に落とましたから、もしかしたら生きてあの森を抜けるかもしれませんよ」
その農夫の言葉に
「不可能だろうし、もし生きて森を抜けたのなら、わしらを決して許さないだろうな」
「俺だったら皆殺しにしますね、父親は戦死させられ、母親はよく分からない理由で保護と言って領主の館に連れて行かれて、自分は村の人間に裏切られて森に捨てられたんだから」
農夫が乾いた笑いをあげる。
「あいつにゃ、俺たちを復讐する真っ当な理由がありますよ」
「それでも、わしはこの村を守る為にはこうするしかなかったんだ!」
「もしあいつが森を抜けたらどうしますか?」
「そうなった時の手続きは領主がしておるだろうな、狡猾で慎重なアレのことだからな」
うーむ、ちいとばかりあの小僧を手助けしてみるかの。
何やら暇つぶしできそうじゃしのお!
決して、同情したとか義憤を感じたとか、そんな人間的な感情に揺さぶられた訳ではないぞ、ワシは魔物じゃし。
そう思って森に戻ってきてみると、目を疑うような光景が展開されていた。
おいおいおい!そんなそこら辺の枯れ木を折っただけの木で戦える訳なかろう!
1発で折れてしまうじゃろが!
仕方がないこっそり強度をあげるか。
なんじゃ!その雑な罠は、誰が引っ掛かるんじゃ!
仕方がない、バレんように絡みつかせるか。
こらこらこら、そんなほぼ腐った肉を人間がまともに食えるか!
ゴブリン草でも無理があるわ!
仕方がないゴブリン草の効力を限界まで引き上げるか。
あーもう!そんな木の実食える訳なかろう!
仕方がない、酸味を下げて栄養価を上げておくか。
え!こいつ、コボルトに魔素の塊のゴブリンのドロップ品、食わせておるぞ…。
いくらコボルトでも進化したら、小僧じゃまともに勝てんぞ…。
仕方がない、隠れてこっそりとかいうとる場合じゃないの、姿あらわして本格的に手助けするかのう。
ついでに眷属化しておくかの、ワシにも何か報酬的なもん無いと流石に面倒見きれんわ。
こいつも強くなってきたし、少々力試しさせてみるかのお、近くに異常個体のオウルベアおるし誘導してみようかのお。
ありゃ!やり過ぎた!思ってたよりこの異常個体のオウルベア強過ぎた!
どうしようかのお…おお!協力要請か!これで誤魔化せるぞ!
いやぁ、こやつとの時間はなかなか楽しかったのお。
名残惜しいが、配下の魔物も付かせたし、逐一連絡入るじゃろう。
なんならちょくちょく見に行ってもいいしの!
最後の最後はワシからのちょっとしたサプライズじゃ。
上手い事とりいるんじゃぞ!
わざわざ言わんがの!
ふぉっふぉっふぉ
ふぉっふぉっふぉ
ふぉっふぉっふぉ
ガジュマルはずっと楽しそうに笑いながら、森から出ていく不肖の眷属を眺めていた。




