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20.中級魔法

「おいおい、どうなってんだよ! もうわけがわかんねーよ!!」


 後ろを一瞬振り返るとやはりそこには頭がおかしくなるほど大勢の炎トカゲが追いかけて来ていた。


「ちくしょ。最悪だ!」


 俺は【ウィンド】を使い、サクヤを抱え連れながら、逃げていた。

 しかし、速さは俺と同じかそれ以上で、これじゃあと少しで追いつかれそうだ。

 

「……なんで、こうなったのよ。別に悪いことしたってわけじゃないのに!!」


 走りながらサクヤが言う。


「……《死の粉》っていう炎トカゲの固有スキルらしい。死んだときに仲間を呼ぶ特殊なにおいの粉を出すんだとさ」


 さっき知ったことをそのままサクヤに説明する。


 ……しまった。スキルのことをそのまま言ってしまった。

 大丈夫だろうか……


「なにそれ、そんなのあるの!? ズルくない!? ていうかなんでそれをレンが知ってるのよ。知ってたなら倒すまえから言ってよ!」


 案の定サクヤが不審に思い言ってくる。

 そりゃそうだ。サクヤにとってこんなこと知っているはずがない。

 それを俺はなにも考えず行ってしまった……

 どうしよう。なんていえば……ってああああ、もう面倒くさい!


「……俺もさっき知ったんだからしょうがないだろ!」


 俺は考えるのが嫌になり、やけくそになった。

 スキルのことは言うつもりはないが、適当にはぐらかした。

 もう面倒になった。


「なにを言ってるの。頭大丈夫!?」


「うるせぇ! いまは喧嘩なんかしてるときじゃねーだろ。もう少し考えろ!」


「なんでそんなに悪いことばっかりいうのよ! レンのアホ! 馬鹿! ドジ間抜け!」


「マジでうるさい。いまどんな状況かわかって言ってんのかよ。死ぬかもしれないんだぞ!」


 そう言いながら一生懸命走る。

 足を動かし、元の道を戻っていく。

 きっとこいつらの居場所はこの火山だけなのだ。

 外に出れれば、こっちの物。


 そう思っていたのだが……


「くそ、ダメだ!」


 逃げ切れる前に炎トカゲはすぐそこまで迫っていた。

 体力もあり、速さもあるようだ。

 わかっていたけど、能力自体は意外と強い。 

 そこら辺のモンスターよりも厄介だ。

 そう考えると急に心配になってくる。


 ていうかなんでこんな化け物がブロンズに居るんだよ。

 初心者殺しとか言ってたけどあの受付の人とかなんにも言わなかったし、酷くないか!? 初心者に酷くないか!?

 

「がるぅぅぅぅぅぅ!」


「うお!?」


 すると、一番近くにいた1匹の炎トカゲが追い付いて俺にかみついてくる。

 体全体には当たらなかったが、上の服が少しやぶけた。


 ヤバい。

 これは本当にヤバい。


「【ウォーター】【ウォーター】【ウォーター】」


 焦りながらもとりあえず、近くにいた奴に向かって水をたくさん発射する。

 まえと変わらず、炎トカゲはすぐに倒れ、俺たちから離れていく。

 やはり1匹1匹は弱い。

 しかし、うしろの方にはさらに多くの炎トカゲの姿があり、倒しても倒してもあまり意味がない。


「おい、サクヤも手伝え!」


 【ウォーター】だけでなく【エアー】でも攻撃をしていく。

 だが、意味はほとんどない。

 だが、塵も積もれば山となるというし、意味が全くないというほどではないだろう。


「無理よ。詠唱なんか唱えてたらやられちゃうわよ。こいつらから体を逸らすので精一杯よ!」


 サクヤは炎トカゲの攻撃からどうにかして避けていた。

 ちなみに俺はなんどもなんども噛まれ過ぎて、服がどんどんちぎれていく。

 最悪だ。新しい服を買わないと……


「ってそんなことはどうでもいい! ヤバい。これ絶対負ける奴だよ。どうにかして倒さないと!」


「そうだよどうにかしてよ。ジョンとかいうやつも一瞬で倒したくせにこんなのも倒せないの? それじゃあブロンズからシルバーなんかいけないよ!」


「ぐぅ……た、確かに……」


 これはブロンズのクエストなんだ。一応はクエストを完了しているがブロンズのモンスターなんだ。

 そんなのもクリアーできないなんて……ダイヤモンドなんか夢のまた夢。

 いいや、絶対になれない。

 あの人ならきっと一瞬でこの極地を脱することに違いない。

 それなのに俺はなにをやっているんだ。ここに来たのは強くなるためじゃなかったのか。

 こんな奴を倒す方法……考えろ、考えろ、俺!


「あ、そうだ。あいつが使ってた技……」


 ジョンが使おうとした技を思い出す。

 レオンさんが止めた中級魔法【ドラゴンバースト】のことだ。

 俺でさえあの威力は死ぬと思ったほどだ。

 もしかしたらこの状況をどうにかできるかもしれない。


 ……だけど使えるのか。ジョンが魔法石を使わないと発動できなかったんだぞ。魔力が足りるのか。それにレオンさんが危険で、使ってはいけないとか言ってたよな。

 大丈夫なのか。


 そんなことを考えていると。


「ああ!?」


 いよいよサクヤが炎トカゲに噛まれる。

 

「サクヤ! 【ウォーター】」


 【ウォーター】を使って炎トカゲから放した。


「……ありがと」

 

 痛そうにしながら言う。我慢しているみたいだ。


 くそ。なに迷っているんだ、俺は。

 この場で使わないと勝てなくて死ぬ。

 出し惜しみしている場合じゃない。

 やるぞ。俺は!


「……レン?」


 一度その場で止まり、サクヤを下ろす。


「我が体に導かりし、炎よ。聖なる力で汝を打ち滅ぼしたまえ!」


 サクヤのことを無視しながら、詠唱を唱え始めた。

 体からありえないほどの力が出て来るのを感じる。

 これが力だと俺にもわかるほどだった。

 俺はそのまま魔法を発射する。


「【ドラゴンバースト】」


 そう叫ぶ。

 その瞬間、俺の目の前がぴかりと光り、爆発音がその場に轟く。

 衝撃によって発生した風が俺たち二人を弾き飛ばした。

 ころころと転がっていき、倒れる。


「いたたたた……どうなったんだ……」


 そう言って起き上がり、まえを向くとそこには。


「なんだこれ……これが中級魔法、なのか……」


 なにもないただの道が広がっていた。 

 さっきまでいた大勢の炎トカゲは跡形もなく消えさり、そこにはなにもなかった。

 文字通りなにもないのだ。

 モンスターも。植物も。何も……


「強すぎる……」


 レオンさんが使っちゃいけないと言っていた理由がわかった。

 こんなものを日常で使っていたなら世界が滅ぶに違いない。

 そしてジョンはこんなものをあそこで使おうとしていたのかと驚きもその場で生じた。

 レオンさんが止めなかったらこのようになにもない野原が広がっていただろう。

 それにこれでまだ中級魔法なのだ。上級魔法となるとどんなことになるんだろうか。わくわくと興奮と鳥肌が俺を襲う。


「ってあれ……」


 急に体が重くなる。立ち上がれず、そのまま寝ころんだ。

 こんな体験を前にしたような……


「だ、大丈夫!? 怪我とかない?」


「大丈夫だと思うけどなんだかこれは……」


 そうだ。

 思い出した。

 これは……きっと……


『記憶容量がオーバーヒートしました。よって自動化モードから検出モードに切り替え、休憩時間とします。なお、これを無効化することは不可能です』


 ああ、やっぱり黒渦だ。

 初級魔法ならあんなに使えていたのに、中級魔法なら1回だけしかダメなのか。

 それは流石に……やばい……色々とやばい……


「ああ、眠たくなってきた。くそ、なんだか勝った気がしない……」


 そう思いながら、俺はそっと目を閉じた。

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