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2.体の変異

 あの映像をみてから、約1週間ほどが経過した。

 俺はいまサクヤの家にある自室で一人、寝転がっていた。


 あれ以来、変な機械のような声は聞こえることはなく普通に過ごしていた。

 買い物に行ったり、サクヤと遊んだり。

 まあ、普通といっても、ただ一つだけ変わったことがあるのだが。

 

「なんで、全部覚えてるんだ……」


 そう、ずっと、忘れることがないのだ。

 昨日なにして遊んだことも、なにを食べたのかもすべて。

 時間も行動もなにもかもだ。

 それに昨日だけじゃない。一昨日もその前のことも。さらには幼い時の忘れていたはずの出来事も、この間見せられてからずっと覚えている。

――つまり、忘れることがないのだ。


「……なんなんだよ一体全体……。あいつが言ってたユニークスキルってやつだっけ。あれが元凶な気がするんだけどな」


 確か、あの機械の声がそう言っていた。

 ユニークスキル《完全記憶能力》とか言ってたっけ。


 まあ、とりあえずはそのユニークスキルとやらが関わっているのならどうにかしないといけないよな……。

 名前からしてヤバそうだし。よくわからんけど。

 てかユニークってなんだよ。普通のスキルならわかるんだけどな……。


 スキルを簡単に説明すれば人の才のことだ。

 魔法の攻撃力が上がったり、早く動けたりするみたいなやつ。

 スキルは生まれた時に自動的に決まって後々、芽生えて来るものなんだが。

 芽生えるっていうよりも……


「最初の映像で俺に与えるとか言ってたよな……」


 一番初めに見させられたあの男女の会話。

 あれから想像するに、このユニークスキルを与えたのは、あいつら二人だろう。

 でも、スキルを与えるなんて聞いたことないし。どうなんだろうか。

 

 それに、俺からしたらあいつらって誰なのかわからないんだよな。

 あったこともない気がするし。誰なんだよ……


 ……あの会話がもう少し詳しくわかれば、よかったんだけどな。

 なんで途切れ途切れになっていたんだろう……。


「……ああ、もう! 考えることが多すぎだろ! どうすればいいってんだ!!」


「うわ、びっくりした! いきなり大声出さないでよレン。近所迷惑だよ」


 後ろを向けばサクヤが何事もなかったかのように座っていた。


「……なに勝手に俺の部屋に入ってきてんだよこの馬鹿! びっくりしたのはこっちだわ!」


「馬鹿ってなによ! 馬鹿って! そんな言い方ないじゃない!」


「勝手に入ってこられて、なんで俺が怒られてんだよ!?」


 はぁ、と大きめのため息をつく。

 相変わらず能天気な奴だな。

 悩みがこいつのせいで吹っ飛んじまった。少し気持ちが楽になった気がする。


 ……ひとまず、ユニークスキルのことは置いておこう。

 まだ、一週間しか経ってないのだ。後々なんかの縁で治るかもしれないしな。

 とりあえずは様子見だな。


「……それで、サクヤ。なんか用か?」


「うん、お母さんが夕飯の準備ができたから来てってさ」


「……もうそんな時間か。……わかった行くよ」


 ご飯か。

 とりあえずは食べにいくとする。


 部屋を出て、リビングに行くとおばさんが食卓を並べていた。

 今日の飯は肉料理だった。俺の大好物でもある。


「あれ、おじさんは?」


「お父さんなら今は自室で疲れて休んでるわ」


「そう、ならいいけど」


「それよりもほら、レン君。今日はたくさん食べなよ。たくさん食べた分だけ強くなれるからね」


「ありがとね、おばさん。いただきます」


 手を合わせてから食事をいただく。


「うん、美味しいよ」


「あら、よかった。できるだけ食べなさいな」


 ニコニコの笑顔になる。


「それにしても最近、レンって変だよね」


「変? 俺が?」


「うん、物凄く変。さっきもそうだったけど、ずっと一人で話してるところとか」


「それ見てたの!?」


 あのシーンをみられていたらしい。

 ……普通に恥ずかしい。それなら声をかけて欲しかった!!


「後、最近ずっと静かにしてるっていうか落ち着きすぎてるって言うか。いつもなら食べる時なんて手なんか合わせず、適当にとって食べ始めるのにさ」


「……そういえばそうだな。なんで、手なんか合わせてたんだろ」


「いいえ、手は合わせるのは普通ですよ。これからもちゃんとやってください」


「……はい」


 おばさんに謝る。

 でもサクヤが言う通り、確かに最近の俺は変だ。

 どうしちまったんだ。


「それもこれもあの時からよ。ほら、急に買い物の途中で倒れたでしょ。やっぱり何かの病気なのよ。一度、村から出て、王都の方で医者に見てもらった方がいいわよ。そこならきっと魔法で治してくれると思うし」


「いや、いいよ別に。そこまで一大事って感じじゃないし。頭の痛みは本当にないしな」


 まだ、どんな感じなのかもわからないのだ。

 それをいきなり人になんか言いたくもないし、ちょっと怖い。

 

「それに村を出るって言っても、そんなお金ないだろ。もう少し節約しないといけないぞ。」


「……そう、ならいいんだけど」


 少し心配そうにつぶやく。

 仕方ない。王都の医者は金が高い。

 そんなところにドが付くほどの田舎に住んでいる俺たちが払えるほどの余裕はない。


 するとおばさんが。


「そう言えば王都で思い出したけど、私、明日から1日王都の方に行くんだった」


「「え?」」


「昔の冒険者仲間と一緒に集まって同窓会を開くのよ。すっかり言いそびれたわ。ホント私って昔から忘れっぽいのよね……」


 すっかり忘れてた風にそう言った。

 どんだけ大切なこと忘れてんだよ!


「え、そんな事より、もしかしてお母さんって冒険者だったの!?」


「あれ、言ってなかったっけ。その通りよ。お父さんともそこで出会ったんだから。勿論、明日お父さんも一緒に行くから」


「10年間一緒に居たけど初めて知ったよ……」

 

 驚いた様子を見せるサクヤ。

 

 正直俺も驚いた。

 おばさんが冒険者だったなんて全然見えないし。なにより、そんな素振りも一切見せなかったのだから。


「私も昔は相当な冒険者だったんだけど。子供が出来てから力がどんどん弱くなっちゃってね。もうほとんど魔力もないから魔法もろくに使えないのよ」


「それでも、凄いよ! 冒険者なんて! 私もなってみたい!!」


「いやいや、冒険者なんか危ないし、やるならもう少しましな仕事にしなさい」


「えー、やってみたいものはやってみたいーー!!」


「まあ、サクヤがやりたいならいいけどね」


 ため息まじりに言う。


「それでね、問題はその後なのよ。私とお父さんどっちも行っちゃうからこの家に残る人が居ないじゃない。だから二人が王都に行きたいなら連れて行くし、行きたくないなら違う家の人に任せて残しておこうって今日の朝お父さんと相談してたのよ」


 なるほど。 

 王都に両親どっちとも行ってしますからどうするか悩んでるのか。

 ……そんな大事なことを忘れるとかちょっと、ボケ過ぎてるところは置いておいても、あんまり王都には行きたくないな。


 少し怖いイメージもあるし。行ったことないけど……。

 だけど、ここで残るってのもな。

 サクヤはまだいいかもしれないが、俺は他の人とかと話せないし……。

 

「……私、行きたい! 楽しそうだし!」


 サクヤが叫ぶ。

 ホントこいつは能天気だな。


「あら、そう。なら行くってことでいいのね?」


「いや、ちょっと待てよ、おばさん。王都に行くって言ってもおばさんたちが遊んでるとき俺たちは何すればいいんだよ。まさか俺たちもそこに一緒に行くのか?」


「そうね。わざわざ一緒に行くのもちょっとおかしいし。王都で遊んでてもらうことになるのかしら」


「なに言ってるのさレン。こんな体験もうないかもしれないんだよ! 行くに決まってるでしょ!」


「お前は一旦黙ってろ」


 おばさんが話を続ける。


「王都っていったらここにはない聖教会があったり、騎士団とか冒険者組合とかあったりするわね。後は《《書庫》》とかかしら」


「書庫!?」


「ええ、本がいっぱいあるところよ。まあ、そんなマニアックな所行く人いないけどね」


 そうは言うが。本か。それはいいな。

 調べものにドンピシャだ。

 もしかしたらこのユニークスキルのことも書いてあるかもしれない。

 行ってみる価値は十分ありそうだな。


「……俺も行くよ」


「あら、そう。なら準備しとくわね」


「やっぱりレンも行きたいんじゃない。最初からそう言えばいいのに」


「調子にのるな」


 サクヤの頭をぽんっと叩く。


「あ、レンが殴った!」


「殴るのはダメですよ」


「……はい、ごめんなさい」


 まずはこの能力について調べよう。

 とりあえず、やることは決まった。書庫に行こう!

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