17.小金持ちになりました
「はい、これで冒険者登録は完了です」
「あ、ありがとうございます」
「……はい」
これにて受け付けは完了らしい。
はぁ……やってしまった。結局あのレオンさんから貰ったお金を使ってしまった。
事件の後、ジョンはレオンが出て行ってからすぐに逃げるように走り去り、冒険者たちからは不気味がられて距離があいていた。
そんな中、受付の人もレオンに言われた通り、現金を袋に入れて渡してきて、一体全体意味がわからない状況になったのだ。
しかも意外と重いし。この鞄にぎりぎり入るくらいの大きさだし。
……まあ結果的にそのお金で冒険者になれたし、宿舎に泊まれる金も出来たからいいんだけどさ。
だけど、正直実感がわかない。本当に100万も貰っちゃったんだよな。
しかもこのお金で冒険者に登録するとかなんか嫌だな……
申し訳ないというか、なんというか、もやもやする。
「では最後にこのカードをご確認ください」
そんなことを考えていると、受付の人からカードを渡された。
「これはライセンスです。無くすと発行するのにまたお金が取られるので気をつけてくださいね」
とりあえず俺たち二人はそのカードをみる。
これがライセンスか。意外と小さいな。
カードは服のポケットに入るくらいの大きさだった。なんか色々書かれているようだ。
「補足説明をさせていただくと、このカードに書かれているのは氏名とこのギルドの冒険者としての位です」
「……位ってもしかしてここのブロンズって書いてある所ですかね?」
カードの下の方を指さす。
「はい、そこです。それは冒険者の位、すなわちランクのことです。ランクはブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンドみたいに分かれていて、それはモンスターの討伐数やクエストでの活躍によってランクが上がって行きます。受けられるクエストもランクによって違うのでご注意ください」
「……なるほど」
ランク制度みたいなのがあるのか。
受けられるクエストもそれによって多分難易度も変わるんだよな。
だったら俺は一番下ってことか。
入ったばっかだし、仕方ない。これからたくさんクエストをクリアーしてどんどん高いランクに行こう!
「ちなみにレオンさんはダイヤモンドランクなので、それくらいになれるように頑張ってくださいね」
「……」
やっぱりあの人はダイヤモンドなのか。
あのレベルになるにはどれほどの訓練を積まないといけないんだろう。
想像が出来ない。俺もなれるのだろうか。
「では、これからの冒険者ライフをごゆっくり。クエストを受けたくなったらまた声をおかけください」
「わかりました。ありがとうございます」
「はい、こちらこそ」
「……とりあえず一旦ここから出るぞ」
隣でライセンスをみているサクヤに話しかける。
王都内がどんな感じになってるとかも見たいしクエストはまだお預けの方が良さそうだ。
「うん。わかった。お姉さんも色々とありがと」
「はい、お嬢ちゃん。頑張ってね!」
受付の人がニコリと笑う。
サクヤも嬉しそうでなによりだ。
さっきの事件も解決したっちゃ解決したしな。
俺はサクヤと一緒にギルドから立ち去る。
やっぱり冒険者からは変な目で見られていた。
「どこに行くの?」
「そうだな……最初は宿舎でもいいけど。お腹が減って来たから、やっぱり商店街かな」
「商店街……なにか美味しい食べ物あるかな」
「……あるといいな。本当にお腹ペコペコだし」
あの牛の肉を少しばかり食べたとはいえ戦闘もあったし、なにより夜なにも食べずにここまで歩いてきたのだ。流石にお腹が減った。
食べたい……
歩いていると、商店街に着く。
人だかりが多く、見つけやすかった。
「くんくん……いい匂いがいっぱい! これは期待できそうですなぁ!」
「……本当だな。これは旨そうな匂いだ」
美味しそうな香りがまわりからぷんぷんとしてくる。
その匂いに思わず、固唾を飲んだ。
流石は王都の商店街だ。きっとこの、ウィアード王国の美味しいものが数多く集まっているんだろう。
……早く食べたい。
「まずはあれ食べよう! お肉!!」
目の前にある店を指す。
串に肉が刺されたものだった。
店に近づく。
「へいらっしゃい! 美味しい鶏肉だよ~食べれば頬っぺたが落っこちるよ~」
「……2個ください」
「いや3個で!」
「3個ね。1個250コロンだから750コロンだよ」
「……はぁ」
俺は鞄から現金を取り出し、750コロンを払った。
払うのも結構面倒だ。
というとコロンは1コロン、5コロン、10コロン100コロン500コロンは硬貨としてあるのだが、1000コロン、5000コロン、10000コロンは紙としてある。
つまりなにが言いたいのかというと、100万コロンは10000コロンを100枚合わせたものでお釣りを受け取るのが面倒くさいのだ。
「毎度あり! また来なよお兄ちゃんたち!」
そう言って別れる。
受け取った鶏肉はタレがとろとろと垂れており、めちゃくちゃにうまそうだ。
「あむあむ……美味い!」
「本当だね! 美味しいねレン!」
俺もサクヤも同じ意見らしい。
本当に美味しい。
「……前から思ってたけど、サクヤって肉好きで食欲旺盛だよな」
「ぎく!?」
「あんまりいうのもなんだけど……太るぞ」
「う、うるさいわい!」
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「ふう、もうお腹いっぱいだ。結構色んなやつを食った……」
ベットの上で横になりながら言う。
宿舎だ。
商店街でご飯を食べた後、2年前からあったあの宿舎に泊まることにした。
案内のおばちゃんは俺のことを覚えていたらしく、簡単に泊まれた。
扉を壊したのが印象強かったんだろう。一応俺じゃないことになってるけど。
「そうだね、美味しかったね。ざっと1万コロンは使っちゃったんじゃない?」
「ああそうだな。誰かさんが肉をいっぱい食べ過ぎてな」
「それは言わないお約束でしょ!?」
「……まあそれはいいとして、これからどうするかだな」
「どうするって?」
「ランクのことだよ。まずはブロンズからシルバーにあげないといけないし」
「なんで上げる必要があるの? いっぱいお金が入ったんだから家でゴロゴロしておうよ」
「お前な……」
なんでこいつわざわざこんなところまで来たんだよ……
なりたい職業ランキング1位なんじゃないのか?
「とりあえず、明日からクエストに行くから。それも難しそうな奴」
「なんで!?」
頑張ろう。
強い冒険者になるために……
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