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14.王都に到着

 夜になる。真っ暗闇だ。

 結局、昼間倒したあの牛は食えず、サクヤだけちょっと食べたらしい。

 倒した後の姿はなんとも残酷で見たくもなかったから俺は見ていない。

 ……少しどうやって食べたのか気になるな。

 

 まあ、それはいいとしても今は夜だ。

 こんな暗い中、歩こうなんて考えは普通でてこない。

 眠たいしな。


「おい、今日はここで寝るぞ」


 というわけで寝ることにした。少しお腹が空いているけどこれくらいならどうにかなりそうだ。

 明日に備えて、力を蓄えておきたい。


「え……こんなところで寝るの……私虫とかが出そうで嫌なんですけど。せめてテントとかが欲しいんですけど」


「なんでお前あんな変な牛とかいけるくせに虫の方はダメなんだよ。感性が全然わからねぇ」


「女の子はみんな虫はダメなんだよ! これだからレンは村の女の子にモテなかったんじゃん」


「ぐふ……」


 い、意外と胸に刺さるなぁ……

 まあ事実だし。

 ていうか女子どころかほとんどの村のやつに変な奴って思われてたけどね。


「じゃ、じゃあどうすればいいんだよ。テントなんて家から持ってきてないし」


「それならいっそのこと歩けばいいじゃない。そしたらいつの間にか朝になってるわよ」


「足が持たないよ……」


「はぁ……わかったわよ。仕方ないわね。寝てる最中に虫とかが出たら発狂して起きるから」


「……まあ、寝てくりゃなんでもいいか」


 俺たち2人はその場で寝っ転がる。場所が草の中なので非常に寝ずらい。


「……」


 距離がほんの数センチ程度しかなく、非常にサクヤの方を向きにくい。

 ……恥ずかしい。


「ねえ、レン」


「……ん、どうしたんだ?」


 反対方向を向きながら言う。


「あの牛を倒した時、詠唱がなかったじゃない」


「……ああ」


「あれ、どうやったの? あれも魔法なの?」


 詠唱がなかったことを見ていたのか。

 

「どうやったって言われてもな……」


 これは俺の能力、スキルだしな。

 単なる実力じゃない。

 でもそれを言えば、きっとこの能力をすべて言わなきゃいけないと思う。


「……」


 つまり、ユニークスキルのことを打ち明けるか否かってことだ。

 ……正直に言えば言いたい気持ちが強い。

 2年間もずっとこの能力がある。

 記憶がずっとあるなんて普通に考えればおかしいのだ。心配になってくる。

 それに隠し事をサクヤにはあまりしたくないからな。

 だけど……


「そうだな……魔法を練習していたらいつの間にか詠唱無しでできるようになってたんだ」


 それよりも、サクヤに心配をかけたくなかった。

 

「……そう。なら私ももっと頑張って魔法を詠唱無しでも使えるようにならないと……」


 いつか言える日が来るのかな。

 そんなことを思いながら目をゆっくりと閉じた。


「ん~!」


 背伸びをする。

 温かい日が出ていて、気持ちのいい朝だ。


 隣を向けば、気持ちよさそうな顔をしてぐっすり寝ているサクヤの姿があった。


 昨日は一切サクヤの方を向けずに寝ていたが、こうしてみるとやっぱり可愛い。

 守ってあげたくなる可愛さだ。


「……おい、サクヤ朝だぞ。起きろ」


 頬っぺたをつんと指でつく。


「ん……もうちょっとだけ……」


「ダメだ。もう行かないと着くのが遅くなる」


 もう一度つく。


「……あ、レン。おはよう」


「はい、おはよう」


 目をこすりながらサクヤが目覚めた。


「もう行くぞ。準備はいいか?」


「……うん」


 鞄を持ち、歩き始める。

 どんどんと進んでいく。

 道中、さっきのような牛とかには合わなかったが小さな虫とかはよく出て、サクヤが発狂していた。


 そしてついに。


「……着いた!!」


「やった~!!」


 目の前に大きな城があった。

 二年前と少し変わっている部分はあるが、大方は同じだ。

 間違いなく王都に違いない。


「いやぁ……本当に疲れた。何時間歩いたと思ってんだよ」


 足はパンパンで腫れている。多分明日には筋肉痛になってるだろう。

 疲労を回復する魔法とかないのかな。

 それを覚えれば楽なんだけどな。


「……でも欲を言えば、もう一度あの牛、食べたかったな……」


「……それはいいから」


 ようやく着いた。これで冒険者になれる。

 後はライセンスを入手するだけだ。


「……とりあえず、どこで冒険者になるか聞いて回るとするか」


「そうだね。誰かに聞かないとわかんないし」


「……お前は余計なこと言うかもしれないからそこに立ってるだけでいいから」


「なんでよ!?」


 聞き込みをすることにした。

 

「冒険者? それなら冒険者ギルドってところに行くのよ」


「ギルド……ですか」


「うん、ギルド。確かあっちの方向にあるはずよ。頑張ってね!」


「……ありがとうございます」


 近くのおばあさんに冒険者になるためにはどこに行けばいいですか、と聞いた所あっさり分かった。

 どうやら、あそこの城の近くにある変な木造の家ギルド、というところに行けばいいらしい。なにかがあるのだろうか。


「おい、サクヤどこに行くかわかった……ってなにしてんだよ」


 近くにあった壁に寄りかかりながらなにかムシャムシャと食べている。


「この前の牛のお肉よ。お腹が空いたら用に取っておいたのよ。……食べる?」


「……貰っておく」


 一切れ貰った。

 お腹が空いていたし、しょうがない。

 なによりこの肉は見た目とは裏腹に……美味いからな。


「よし、行こうか」


「うん!」


 肉も食べて体力も回復したし、ギルドに行くとする。

 道は相変わらず人が混雑している。

 2年前からほとんど変わっていないらしい。


「それにしてもグレイさんたちはまだ冒険者やってるのかな……」


「私もそれ気になる。前にお父さんも言ってたし。どうなんだろうね」


 そんな会話をしていると着いた。

 一目見たらわかる。ギルドと書かれた看板が外に立っているからだ。

 なんかうさん臭い。大丈夫だろうか。


「……まあいいや。入ろう」


 扉を開け、入ると。


「がははははは……お前ごときが俺に腕づもうじゃ勝てねーってことだ!」


「クソ! もう一回やりゃ違う!!」


 腕相撲をやっている人や。


「お姉さん、これからどこか行かない?」


「え~困っちゃうんですけど……どうしようかなぁ~」


 ナンパをしている人も。


「……あ、ああ……」


「……雰囲気が最悪ね」


 なんだよ、これ。地獄かよ。

 想像しているより100倍変な奴ばかりだ。

 グレイさんとかも変だったけど、こっちの方がもっと頭がいかれてる。


 俺たちはそんな奴らを無視して奥に進む。

 案内と書かれているところだ。


「あの……すいません。冒険者になりたいんですけど、ここでなれるんですよね?」


 目の前にいた女の人に話しかける。

 黒のスーツ姿を着て、金髪の髪をした人だった。


「はい、冒険者になるためのライセンスはここで発行しております。発行しましょうか?」


「……おねがいします。二人分で」


「では発行料金として一人500コロンなので二人分で1000コロンいただきます」


「……え? お金が必要なんですか?」


「そうです。必要ですよ。……持っていないんですか?」


「……は、はい」


 どうしよう。お金が必要だったらしい。

 ……確かにタダで作るのなんておかしいもんな。


 そんなことをしていると後ろの方でデカい声が聞こえて来る。


「おいおい、見ろよ。この新人! 冒険者になろうとしてお金ないんだってよ!」


「ダッセェ(笑)」


「なにそれ(笑)」


 3人組の男が俺たちをバカにしているようだった。

 真ん中にいる男がリーダーだろう。ムキムキな体で覇気を感じる。

 そんな奴らが俺たちの方に近づいてきた。

 

「なあ、ガキ。ここはお前のような子供が来るところじゃねぇんだ。帰れよ」


「「そうだそうだ!」」

 

 子供か。

 まあ、こいつからすれば子供だろう。まだ12歳なんだし。


「ちょ、ちょっと。あんたそんな言い方ないんじゃないの! レンに謝りなよ!」


「あ? お前もこの仲間なのか。ふ……なんだこのガキ。恋人を守ろうとしてんのかよ。気持ち悪いな」


「な……」


「出て行けよ。ほら、出口はあそこだぞ」


 後ろの取り巻きを一緒に鼻で笑いだす。

 隣にいるサクヤ今にでも泣きそうだ。

 

「……おい」


 そこで、俺は怒りが抑えきれず、声をかけた。


「……なんだよ、ガキ。文句あんのか?」


「うるせぇよ、クソ野郎。サクヤをバカにすんだったらてめぇら……潰すぞ」


 脅しではなく本心でそう言った。

 久しぶりの怒りだった。

 いつもサクヤのこととなると怒りが湧いてくる。


「っち……口の利き方には気をつけろよ、ガキ。喧嘩、するか?」


 喧嘩を挑まれる。

 こいつの目がガチだ。本気でやろうとしているのが伝わってくる。

 俺よりも一回り体が大きく、勝気満々なのだろう。

 だけど俺は……


「ああ、望むところだ」

 

 喧嘩を受け入れた。


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