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12.冒険に出よう①

「そう言えばこの前ね、お母さんと一緒に料理を作ったの」


「はいはい、凄い凄ーい」


「それでね、たくさんお肉を切ったんだよ!」


「はいはい、凄い凄~い」


「後ね、野菜も……」


「長いわ! どんだけ喋ってるんだよ!」


「いいじゃない。最近は魔法の練習ばかりで遊ぶこともなかったんだし。まあおかげでこんなに強い魔法が使えるようになったんだけどね」


「……」


 サクヤと歩きながら話をする。

 まだ家から出たといってもそこまで離れてなく、適当に歩いていた。


「……どうしてこうなったんだよ。やっぱ、俺一人で行ってた方が良かったのかな。そっちの方が強くなれる気がするし」


「あ、一番言っちゃいけないこと言った! 酷い奴!」


「だって仕方ないだろ。さっきからずっと話してんじゃん。疲れるんだよ……」


 修行のせいもあるけど最近は疲れが酷い気がする。


「疲れるってなによ! 私を厄介者みたいに言って!」


「だから、厄介者なんだって!!」


「酷いよ! 馬鹿! アホ!」


 それを聞いて、俺は深いため息をついた。


 なんだか本当にバカらしくなってきた。なんでこんな喧嘩をしているんだ俺は。

 今更何言っても遅いってのに。結局、サクヤは俺が守らないといけないってのに。


「ねぇ……冒険者になるって言ってたけど今からどこに行くの? 近くに冒険者になれるところなんてあるの?」


 少し間が開いてからそんなことを言い出す。


「……うーん、冒険者になるにはとりあえず王都に行けばいいかな。よくわかんないけど」


 そう言えばそんなことは考えてなかったな。 

 冒険をすれば冒険者じゃダメなんだっけ。どこかでライセンスっていう証明書を作らないといけないって確かおばさんが口にしてたよな。

 まあ、王都ならなんとかなるだろ。なにせ国の中心だしな。


「王都か……あの時は子供だったな……」


 2年前を思い出しているようだ。


「今も子供だけどな」


「全然違う! 子供じゃない!」


「はいはい、そうですね~」


「もう、さっきからずっと馬鹿にして!」


 全く。そういうところが子供だっていうんだ。

 わかっているのか、こいつは。


「まあいいわよ。それで、どうやって王都に行くの? 歩き?」


 そんなことを聞いてくる。


「……いやいや馬鹿か。歩きなんかで行ったら死ぬぞ?」


「ふーん、じゃあどうやって行くのよ」


「そんなの2年前と同じで簡単に行ける馬車に決まって……ってあ!?」


「……どうかしたの? 怪我したとか」


「いや……違うけど」


 答えている途中に俺はとんでもないことに気が付いた。

 この世で最も重要なこと言っても過言ではないだろう。これがなかったら生活できないっていうほどの……マズイ。

 

 俺は慌てて、服のポケットを探す。


「ない……いや、大丈夫のはずだ。俺にはまだこれがある」


 俺は手に背負っている鞄を手に取る。

 家を出る時のために前から用意していた鞄だ。食料なども少し入っている。


「前に入れた記憶があるからな。大丈夫に決まってるさにさ。……見てみよう」


 確か、この中に入れていたはずだ! 記憶にある。能力に誓おう。


 俺はゆっくりと鞄を開け、中を確認する。

 しかし。


「……嘘、だろ。何故だ! 何故ないんだ! 金が……」


 そう、探しているのはお金だ。馬車に乗るためのお金だ。

 当たり前だが、馬を借りるにもご飯を食べるにもなにをするにもお金がかかるのだ。

 そんな大切なものが俺の鞄にはなかった。

 あったのは適当な食料と服一式だけだった。


「え? お金がないの!?」


「……う、うん」


 入れていたはずのお金がない。

 いったいどうして……


「……ってそう言えば、おばさんから少し前に買い物に行けって頼まれて、鞄から一旦取り出したんだっけ……そしてそのまま……」


 ふと、記憶を振り返ってみると、そんなことを思い出す。

 この能力のことだから本当のことに違いない。


「……あああああああ、なんで! 今更になって思い出すんだ! ユニークスキルの馬鹿! 最悪だあああああああああ」


 こういう時に限って使えないな、この能力!

 ポンコツ野郎!


「……もう最悪だ。一体どうしたら……サクヤお金持ってない?」


「持ってないわよ。そんなもの。私はレンと違ってお金の管理はお母さんがやってたんだからね」


「そりゃそうだよね」


 サクヤにお金とか渡すとろくなことなさそうだし。

 賢明な判断だよ。

 

「ていうか、なんでそんなにさわいでいるのよ。そんなにお金が欲しいなら一度家に帰ってお母さんにもらいに行けばいいじゃない」


「馬鹿かお前は? 馬鹿なのか!?」


「なによ馬鹿って! どういう意味!!」


「いいか、よく考えてみろ。さっきまで『いつでも帰ってきていいのよレン君』とか言ってたのにいざ今帰ってみろ。完全に感動している雰囲気ぶち壊しじゃないか!」


「た、確かに……」


 状況をようやく把握したのかサクヤも納得したような顔になる。


 つまりはお金を手に入れるのは無理だということだ。

 ……くそ! なんでもっと計画立ててやらなかったんだよ、俺。

 

「まあ、でもよかったんじゃない。これで冒険者らしい旅ができるってもんよ。どう憧れるでしょ」


「いや、前から言ってるけど憧れないから。むしろ引くから」


「なんでよ!」


 そんな会話をしながら道を進んでいく。

 やがて、道は二つに分かれる。

 一つは馬車に向かう方で、もう一方は直接王都に向かう道だ。

 こちらの方が着くのは近いが、見た感じ整備がきちんとされてなさそうだ。

 まあ、でも時間が速い方がいい。

 

「馬車にはもう乗らないから、普通の道を行くよ」


「合点承知!」


 そう言うわけで歩きで王都に行くことになった。

 馬車でも半日ほどかかったのだ。

 歩きなら最悪その2倍はかかると思った方がいいだろう。

 てことは夜は家無しで寝ないといけないのか。


「はぁ……いきなりハード過ぎるだろ」


 歩きながらそうつぶやいた。

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