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10.目標

「な……」


 一瞬にして目の前で人が死んだ。

 いいや、殺されたのだ。


 抵抗することなく無残にも殺されたのだ。

 

「ふう、これで終わったのかしら。後であいつらに報告しないと。それに騎士団にも……色々やることが多いわね……」


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 俺はそのまま立ち去ろうとするアオサを止める。


「なによ。ああ、サクヤちゃんなら自分で家に連れて帰りなさいよね。仮にもこの事件はあんたがまいた種なんだし」


「……違う! そういうことじゃない!」


「じゃあなんだっていうのよ。これで事件は解決したでしょう?」


「解決って……人が死んでいるんだぞ……」


「?」


 なにを言っているんだ、みたいな顔で俺をみてくる。


「殺したもなにも、これは私たちに課せられた任務よ。私が頼まれていたのよ、冒険者として。だからこれは仕事の一環なのよ」


 そう言ってくる。


「……じゃあ、冒険者ってのは人を殺すのが仕事なのか?」


「さっきから何を言っているのよ。別にそんなことないわ。ただ単に今回の一件が簡単に解決させるためには殺すという手段が最善だっただけよ。殺したくて殺したわけじゃないわ」


「……だからって」


「それにあんたは私に感謝すべきなのよ。私が助けに来なかったら、今頃この人たちにあんた自身が殺されていた可能性の方が高いんだから」


「……」


 なにも言えなかった。


 確かにアオサが助けに来なかったら戦闘が始まっていただろう。

 さっきはあのおっさんに運よく勝てたかもしれないが、今度の相手はなにをしてくるのかもわからない大人二人組だ。なにが起こるかわからない。

 それに俺は子供だ。純粋な力比べなら圧倒的に負けるに違いない。

 

「ふん、ホント子供は気楽でいいわね」


 そう言って、早々去って行った。

 殺された二人の遺体は片付けられることなく、そのままだった。 

 

「ちくしょ……なにもできなかったじゃねぇか」


 結局、なにか出来たかといえば、なにもない。

 サクヤを実質的に助けたのは俺じゃなく、アオサだった。


「……とりあえず、サクヤと帰ろう」


 近くで死んでいる二人を無視し、俺は気絶しているサクヤに近寄る。


「おい、サクヤ。起きろ」


 サクヤの体をゆする。

 ちょっぴり冷たい。


「ん……あれ、レン。どうしてこんなところに……」


「どうしてもなにもお前が逃げたんだろ」


「……ああ、そう言えばそうだった。私が勝手に怒って出て行って、その後誰かに殴られて……」


「その話はもういいよ」


 サクヤの言葉を遮る。


「ごめん……」


「だからいいって。それよりも、早く帰るぞ。きっとみんな待ってる。ほらつかまれよ」


「……うん」


 手を伸ばすと、サクヤが取り、起き上がる。


「あれ……怪我してるじゃない。顔から血が出てるわよ」


「……これくらい大したことないよ。それと……」


 サクヤの目に手を当てて、隠す。


「あ、ちょっとレン。なにするのよ! 手を離してよ! なにも見えな~い!!」


 手を離そうともがくが、俺は離さなかった。


「大丈夫だ。少しだけだから。少しだけ」


「少しってどういうことなの。なんか隠したいものでもあるの?」


「……いや、別に」


「ならなんでよ!」


「……いいじゃん、少しくらい。なんだか楽しいしさ」


「全然楽しくないんだけど。ていうか前がみえなくて怖いんですけど」


「怖がらなくていいからこのまま帰ろう。もし、帰れたら明日俺があの本返しに行ってあげるから」


 提案をする。


「え? あの本ってお絵描きのやつ!?」


「そうそう、対象年齢3歳のやつな」


「子供じゃないもん!」


「はいはい」


 適当にあしらう。


「……それで行ってくれるの?」


「ああ、行くとも。まあでも、お前がこの状態で帰れたらの話だけどな」


「……わかったよ。頑張ってこのままで行くよ」


 そのまま俺たちはその場を後にした。

 どうせ、サクヤが行ったところで道に迷ったりするだけだしな。

 俺が行った方が安全だ。



-------------------------------



「よかった。無事だった!」


 帰るとおばさんが俺たち二人を抱きしめる。もう目隠しは外していた。

 中にはグレイやレインなどはいたが、アオサだけはいなかった。


「ごめんね、お母さん。勝手に出て言ったりなんかして……」


「謝るのはこっちだよ。すぐに助けに行けなくて……」

 

「ごめんよ、僕がみんなに大丈夫だとか言ったばかりに二人の助けに行くのが遅れて……」


 おじさんが言う。


「……何言ってるかよくわかんないけど、大丈夫だよおじさん。なんともなかったし」


「そうは言っても顔を怪我しているじゃないか、おいウィンド! ちょっとこっちに来てくれ」


 そう言うと、人を呼んだ。

 この前踊っていた人だ。


「わかってるよ。治せばいいんだろ」


 すると。


「我が体に導かりし、生命よ。聖なる力で汝の傷を癒したまえ【ヒール】」


 顔の傷がみるみると治っていく。

 触ってみると血はなくなり、痛くもなくなった。


「これは回復魔法【ヒール】だ。自分の傷以外ならほとんど治せる優れものさ。お前さんもいつか使うかもしれねぇし覚えときな」

 

 回復魔法……初めて見た。


「何言ってるんですか、ウィーンさん。この程度の低級の回復魔法なんか軽い傷しか治せないじゃないですか嘘はダメですよ」


「げ、レイン……まあ、それはいいんだ、アハハハハ」


 笑って誤魔化す。

 

「……それよりもアオサさんはどこに行ったんです?」


「ああ、アオサの野郎なら王都の方に今回の件を報告しに行ってるぞ。さっき急に帰ってきて、急に言ってきやがった。くそ、俺も戦いたかったのに……あの野郎、チームってのをわかってんのかよ……」


 グレイが言う。


 どうやら、アオサが言っていたようにこいつらが冒険者として依頼されていたようだ。

 

「……もう、遅いし解散にしませんかね。また明日、ジンさんが帰るときに集まるってことで」


「……そうするか」


 レインの言葉でその場は解散となった。

 みんなが帰り、4人だけになる。

 そして疲れていたのか布団に転がるとすぐに眠気が俺を襲った。



-------------------------------



 朝。

 サクヤの約束通り、本を書庫に返しに行き、帰る準備を整えた。

 おばさんたちと一緒に昨日行った馬車のところにまで行く。


「……」


 そこには死体はなく、血もなかった。

 その道を大勢の人が歩いている。


 少し歩き、乗る馬車を見つける。

 すると、4人の冒険者たちが歩いてくる。あいつらだ。


「……グレイか。相変わらず酒ばっかだな……」


 朝なのにも関わらず右手には酒がある。

 口も臭いし、やめて欲しいんだけど。


「うるせぇ、ジンこそもう行くのか? 俺たちは後二日は王都で暮らす予定なんだが」


「昨日から言ってるだろ、帰るさ。村でもやることがあるし」


「そうかい……まあ今度機会があればまたパーティでも組もうぜ」


「あはは、そりゃあ面白そうだな」


「ほら、お父さん。もう行きますよ。みんなもまたね!」


 荷台に乗る準備ができ、全員が乗る。


「じゃあまた今度。みなさんもお気をつけて」


「……頑張りなさいよ」


「今度は強くなってろよ! 子供たち!!」


 馬が歩き出し、みんなと別れた。

 手を振っている。


 俺はその姿を見て、ふと目標が出来た。


「なあ、サクヤ」


「どうしたのレン。また酔ったの?」


「違うよ。そんな事じゃない」


「?」


「俺、冒険者になろうと思う」


「え?」

 

 驚かれる。

 まあ当然か。最初はあんなに毛嫌いしていたのだし。


「今回の事件で分かったよ。俺、強くならないといけない。それにはきっと冒険者になるのがいいんだと思う」


 強くなりたい。

 そう思った。誰でもいい。大切な人を守れる力が……


「……なら私もなる。私もレンみたいに魔法が使えるようになって強くなる! 一緒に冒険者になる!」


 すると、サクヤがその場で叫んだ。


「……そうかい」


 そして、俺も決心する。

 冒険者になることを。

 このユニークスキルとともに。


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