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1.ユニークスキル《完全記憶能力》の封印が解除されました

「ねぇ、レン。この買い物が終わったら一緒に遊ばない?」


「ああ、そうだな。でも、買い物がちゃんと終わってからだけどな」


 適当に会話しながら俺――レン・クロニクスは田舎道を歩いていく。

 今は買い物を頼まれ、幼馴染であるサクヤ・クロニクスと一緒に商店街に向かっていた。

 まあ、商店街といってもここはウィアード王国の外れにある小さな村だから小規模なんだけども。

 

 彼女は輝くように光っている金髪の長髪にすらりとした顔立ち。

 出るところはきちんと出て、引っ込むところはきちんと引っ込んでいるという完璧なスタイルで、村で人気を集めていた。


「おばさん、今日の材料はなんだって?」


 おばさんというのはサクヤのお母さんのことだ。

 名前はセリカ・クロニクスというらしい。

 ちなみにおじさん(お父さん)はジン・クロニクスだ。


「野菜にお肉。後はお米だって」

 

 一方、俺はというとただの村の子って感じで全然人気ではない。 

 理由はただ単に、両親がいないからだと思う。

 俺が赤ん坊の時、道の真ん中に捨てられてて、一人寂しく泣いていたらしい。

 そして、そのままサクヤの家に拾われて、サクヤと共に育てられた。

 名前はその時、付けられた。だから俺の苗字はクロニクス。つまるところ俺とサクヤは義兄妹ということだ。

 まあ、そんな感じのことも含めて本当におばさんたちには感謝している。

 もしも、拾ってくれなかったら死んでいたと思うし。


「ふーん。それで、遊ぶっていても今日はなにして遊ぶんだよ」


「ふふん、今日はね、お花の王冠を作ってお母さんにプレゼントするんだ!」


「お花の王冠って……子供じゃあるまいし」


 何を言い出すかと思えばそんなことか。 

 面倒だ。


「いいじゃん別に。私たちまだ10歳だよ! 子供だよ!」


「子供じゃないよ。俺たちだって魔法が使えるくらいの年齢じゃないか。魔法が使えるってことは喧嘩も魔法になるし。色々と大人だよ。まあ、まだ魔法を使えるかって言われたら微妙なとこだけど」


 魔法。

 それは魔力を消費することによって発動できる技のことだ。

 基本的に攻撃魔法、防御魔法、回復魔法の3つと特殊魔法から構成されており、その中に火や水、木などの属性が存在する。

 10歳くらいになると魔力の量が増え、使えるようになるようだ。

 そして、どんどんと魔法の才が分かれてきて、自分が得意な魔法とかがわかってくるらしい。


「大体な、お花の王冠なんて貰ってもおばさん喜ばないよ。もう少しほら……ご飯作ってやるとか、洗濯を手伝うとかの方が……」


 すると。


「そんなに言わなくてもいいじゃん……」


 今にも泣きそうな顔をしだした。

 手を目に当てて、声が震えている。

 ああ、ヤバい。どうしようこれ。

 

「……仕方ないな。一緒に作ってやるから泣くなよ」


「……うん!」

 

 嬉しそうに微笑む。

 なんだかんだ言ってこいつの笑った顔をみるのが好きだ。

 心がきゅっと引き締まった感じがする。

 ずっとこの時間が続けばいいのにな……

 

 そんなことを思った瞬間、それは突然訪れた。


『ユニークスキル《完全記憶能力》の封印が解除されました。現時点で得られている情報の確認を開始します』


「……サクヤ今、なんか言ったか?」


「……? ん、私はなにも言ってないけど……どうかしたの」


 周りを見渡すが、サクヤしかいない。

 確かに誰かの声が聞こえた気がしたんだけどな……

 気のせいだろうか……


「……うーんよくわからないけど、なんか知らない声が急に聞こえて来たっていうかなんというか……」


「なにそれ、おかしいなレン」


「あはははは……寝ぼけてるのかな……」


 苦笑いで誤魔化す。やっぱり俺がおかしいんだよな。

 しかし……


『確認を認証しました。これより情報の復元を開始します』


「ぐふ……」

 

 また声が聞こえ、突如頭がかち割れたように痛みだす。


「なんだよこれ……痛い、痛すぎる……」 


 体がおかしくなりそうだ。ずきんずきんと痛みが広がってくる。

 頭痛なんてレベルじゃない。おかしい……


『カウントダウン、3秒前』


 俺は立っていられなくなり、その場で倒れる。


「れ、レン!? だ、大丈夫、どこか怪我したの!?」


 サクヤが驚いた様子で俺をみる。


「……多分、大丈夫だ。すぐに収まるはず……」


『2』


「ぐ……」

 

 そう思っても、さらに痛みが増してくる。

 

『1』


「本当になんだんだ、この声はどこから……」


『0』


 その言葉が聞こえて来たとたん、俺の脳内で知りもしないなにかが流れ込んできた。


『――は俺たちの宝だ。――なんかに渡してはおけない』


『そうね、――にこの能力を授けておきましょう』

 

 目の前には令嬢のような女性と国王のような男性が俺の方を見つめている。

 どちらも高級そうな服を着ていた。

 声が途切れ途切れになっていて、よく聞こえない。 


 なんだよ、これ。

 手を思うように動かせないし、声も出せない。

 いったいどうなってやがる……


『――だけど、もしそれが悪用されたりでもしたら……』


『仕方ないわ。――を封印しましょう』


『封印だと!?そんなことをしたら……』


『でも、やるしかないじゃない。そうしないと――に』


『……ああそうだな。やるしか、ない!』


 そこで男女たちの声は無くなり、今度は違うなにかが流れて来る。


『レン! 一緒に遊ぼ!』


『こら、サクヤ。レン君は今、熱で休んでるんです。今日くらいは休みなさいな』


 目の前にはサクヤとおばさんが映りだした。

 しかし、ただのサクヤではない。

――幼いころのサクヤだった。多分、年齢的に6,7歳くらいだろうか。結構前のことらしい。


『えーでも、レンと遊びたい、遊びたい、遊びたいー!』


『わがまま言わないの。じゃないとレン君に嫌われちゃうわよ』


『えっと、そ、それは……』


『なら、レン君の熱が下がるまで一緒にいてあげなさい』


『……うん!』


 サクヤが嬉しそうにうなずいて、何かが終わる。

 そして、また切り替えられる。


『――美味しいわね、このハンバーグ』


『そうだな、やっぱおばさんの手作りハンバーグはうまいな』


 今度は食事の映像が流れ込む。

 食卓にはハンバーグが並べられており、おばさんやおじさんたちと一緒に食事をしているようだった。

 ハンバーグって確かこの前に食べたような気が……

 ……もしかして、これ俺の記憶なのか!?


 そしてまた違う《《記憶》》に切り替わる。


 同じようなことが何度も何度も何度も続き、そしてやがて終わった。


『情報の復元に成功しました。これからユニークスキル《完全記憶能力》は自動化モードに入ります。――成功しました。よって、初期プログラムを完了に致します』


 その声が聞こえたとたん、頭の中に流れ込んできた映像は全てなくなり、元の視界に戻る。


「……なんだったんだ、今のは……」


 色々な記憶が流れ込んでくる感じがした。

 最初のやつ以外は全て俺の幼少期の記憶でサクヤがいつも一緒に居た。

 ただ、全く覚えていない物が大半で、本当なのかどうかはよくわからない。


「レン、大丈夫なの!? 怪我はしてないの!?」


「ああ……サクヤか。頭の方はもう、大丈夫だよ。全然、痛みとかはないし」


「はあ、よかった。いきなり変なことを言い出して倒れだすからびっくりしたよ~。まあなんにせよ。無事でよかったよ」


 安堵したようにつぶやく。

 

「それよりも気になることがあるんだけど」


「なに?」


「最近、ハンバーグって食べたっけ?」


「うん、食べたよ。7日くらい前かな。でもよく覚えてるね。レンはいつも物忘れが酷いって有名なのに」


「誰がそんなことを言ったのかはひとまず置いておくとして、後もう一つ。昔なんだけど、俺が熱で寝込んでた時、ずっと一緒に居てくれたこととかってあったか?」


「え?」


「……もしかして記憶違いか?」


 やっぱり俺の勘違いなのか。

 そうだよな。流石にありえないよな。だって、覚えていない記憶が流れ込んでくるんだもん。

 多分、疲れてるんだ。きっと。


「……いや、本当だよ。なんで覚えてるのさ! 熱だから一緒に居ても覚えてないと思ってたのに……最悪だよ、もう……」


 顔を隠しながら照れる。

 恥ずかしそうにフリフリと頭を振って、くねくねと体が動かす。 

 意外とそういうところは可愛い。

 そう思った。

 

「……それにしても本当なのか」


 だが、今のではっきりとわかった。さっきの映像は事実だった。 

 つまりあれは正真正銘、実際の。

――記憶ということらしい。

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