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生き残った捜索隊のメンバーは、まずシャワーを浴びた。
とくに、ジェシーとDは念入りに体を洗う。
それから食堂に戻り、船医と料理人へ何が起きたのか説明する。
船長と副船長へは、航海士が報告した。
そして、
――ジェシー殿とDさんは、一旦、隔離しよう――
船長からそう提案される。
それは、仕方の無いことだった。
万全の準備はしたが、貨物室での戦闘で寄生されていないとは限らないのだ。
船長室から確認した限りでは、二人に【花】の反応は今のところなかった。
しかし、今、反応が無いだけかもしれない。
これから、その反応が出てくるかもしれない。
そんな疑心暗鬼が、ハル以外に灯る。
「なんで、なんで、私が!?
私は被害者なのよ!?
もう少しで食われるところだった!!
それに、私たちはちゃんと注射してるのに、大丈夫のはずなのに」
Dは、悲痛な声を上げる。
そして、Dはキッとジェシーを睨みつけた。
「アンタが私に触るからこんなことになったんだ!!」
滅茶苦茶な論理である。
しかし、ヒステリックに叫ばれてもジェシーは余裕だった。
「じゃあ、あの【お花】のご飯になりたかったと、そういうわけですね。
じゃあ、次からは助けません。
まぁ、監禁というか、軟禁というか、隔離されるんで助けることは出来ませんので。
次からは自分で頑張ってください」
ニッコリと笑顔で嫌味ったらしく返されると、悔しそうにDは黙った。
「問題は監禁時間ですね。
おそらく、数時間から十二時間前後で体調不良等の症状が出るはずです。
前の調査隊の6人と、Aさんが、ちょうどそれくらいでああなったと思われるので」
ジェシーは、落ち着いたままそう説明し、食堂にいる一同を見回して、続けた。
「隔離場所は割り振られた部屋で良いでしょう。
中から施錠して、外からも物かなにか置いて出られないようにしましょう。
これで、さっき言った時間ジッとして、体調に問題がなければ安全のはずだ。
そうですよね?
船長さん?」
他に懸念事項があるとすれば、積んでいる荷の安全確認くらいだろうが。
これはジェシーとハルには関係ないといえば、関係ないことなのでそこまで気にしていなかった。
気がかりがあるとすれば、同行者たちに渡した採取した【花】くらいだ。
しかし、こんなことになった以上、無事とはとてもではないが思えなかった。
採取した【花】は全部で十輪。
暴れているのが貨物室のa区画で見た、あのデカい【花】だけとは限らない。
貨物室には、他にも区画があるのだから。
しかし、今のところ貨物室から出てきた形跡は無い。
出てきたら、ブリッジでわかるはずだからだ。
「ところで、次の港までは何時間かかりますか?」
――一番近い港までは、ざっと十時間くらいだな――
「それじゃ、ひとまずそれまでの時間、部屋で引き篭もりましょう。
連絡は、定期的に通信魔法で行えばいいですし」
話がどんどん進められていく。
そこで待ったをかける人物がいた。
砲撃手と航海士である。
「けれど、彼がいないと万が一の時に対処が間に合わないかもしれません」
「そうですね。
今のところ、あの怪物を相手に立ち回れたのは彼、ジェシーさんだけだ。
いざと言う時、ジェシーさんが動けないとなるとこの船は、最悪沈む可能性が高い。
なにせ、怪物は死なず今も貨物室にいるのだから」
ジェシーだけでも、監禁をなんとか出来ないか考える。
しかし、寄生されてるか否か、調べる方法が皆目見当がつかないのが現状だった。
「あの怪物が貨物室から出てこない、このまま扉や壁を破壊しないなんて保証は何処にもない」
重々しい口調でそう言ったのは、砲撃手だった。
そこで、話題の中心になっているジェシーが手を挙げた。
「なら、俺が体調不良が起こるかもしれない数時間後までに、あの【花】を倒すしかないか」
その場の全員が、ジェシーを見た。
ジェシーは、ポリポリと頭を掻きつつ、砲撃手と航海士を見る。
「普通の武器は無いか?
出来れば、鉞がいい」
と、ハルが口を挟んだ。
「それなら持ってきてたじゃないですか」
「そういやそうだった」
二人のやりとりに、他の者たちはわけがわからなくて不思議そうにしている。
通信魔法で話を聞いていた船長が、ジェシーへ訊ねた。
――【花】には鉞が効くのかね?――
ジェシーは答える。
「わかりません。
ただ、俺たち農民の使う農具はちょっとした特別性なので、効果は少なからずあるかと思います。
あとは俺が実家にいた頃から使ってて、まぁ、手に馴染んでるってだけですよ」
――それじゃ、倒せる訳じゃないのか――
「それについては、可能性は少しだけですがあるんです。
まぁ、でもそれをするにはあの【花】を貨物室から外まで出す必要があるんです。
でも、その前に確認したいことがいくつかあります。
こっちは、もしかしたら当てが外れるかもしれませんが」
――確認したいこと??――
「えぇ、死んだCさんの部屋を調べたいんですよ。
その許可がほしい。
船長と、そして、Dさんに。
とくにDさん、これに協力してくれたらその分は護ることを約束しますよ?」
ジェシーはDに向かって、あの嫌味な笑顔を向けるのだった。




