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スピーカー令嬢無双。  作者: 池中織奈
スピーカー令嬢が、スピーカースキルを使いこなすまでの道のり
13/14

⑤ スピーカースキルを武器にしてみる。



 スピーカースキルで空を飛ぶ練習をランセットは続けている。最近、領内では空に浮かぶランセットの姿が度々見られている。


 ――ランセットは空に浮かぶと、とても楽しい気持ちになる。

 ランセットは最近、高い位置まで登ることが多くなった。そのすぐ下には、受け止めるためのスキルを持つ使用人が少しだけ浮かんだスピーカーの上に鎮座して一緒に並走している。

 ランセットは建物の三階分ほどの高さのところまで上がっている。

 



「はぁ、楽しいわ!!」


 空の上で朝から散歩をするのが、ランセットは最近好きである。

 ちなみに低速飛行している使用人はランセットが高い位置を飛んでいるのではらはらしている。視線をそらさないように、落ちた時にすぐに対応できるようにとじっとランセットを見つめているものである。



 ランセットは自分で操っているスキルなので、落ちる予定は全くない。

 落ちたところでまたスピーカーで受け止めればいいとさえ思っており、こうして飛行することに全く不安や恐怖を感じていない様子であった。


 不思議な箱に乗り、飛び回る公爵令嬢。

 当然領地内でも噂になっている。


 ――お嬢様が不思議なスキルを手に入れて、おかしなことをしている。


 そんな風に噂されてはいるが、ランセットは全く周りから何を言われようと気にしていなかった。


 ランセットはスピーカースキルが発現するまでは、公爵令嬢として普通に、貴族令嬢らしく生きていた。ランセットは箱入り娘であったと言えるだろう。

 しかしスピーカースキルを手に入れてからのランセットは、その普通の枠組みから外れてしまっている。


 箱入り娘であったのに、今やもうスピーカースキルで空を自由に飛び回っている。



 他のものへの興味や関心はなく、スピーカースキルのことばかりランセットは考えている。

 ランセットのことは領内でも、その外でも噂になっており――、その噂は悪人たちの耳にも届いていた。




 公爵令嬢がおかしなスキルで、飛び回っていると。

 それは悪人たちからしてみれば恰好の獲物のように見えただろう。

 幾らスキルを持ち合わせていたとしても、ただの少女で、箱入り令嬢。ならばどうにかして攫って、何かしら出来るのではないか……と、そんな風に彼らは思ったのだろう。



 ――そういうわけで、いつものようにスピーカースキルで空を飛行していたランセットの目の前でまずは低飛行していた使用人が脅された。

 流石に高い位置を飛んでいるランセットをすぐにとらえられなかったらしい。

 そういうわけで使用人を人質に取り、宙に浮かぶランセットを引きずり降ろそうとしたようだ。





「おい、こいつがどうなってもいいのか、お嬢様」

「降りてこい!」



 声を上げるならずものたち。

 体格の良い複数名の男たちが、使用人を人質に取り、ランセットのことを見上げている。




 ――ランセットは、少しだけ焦った。

 けれど、すぐに自分の心を落ち着かせる。





(どうしよう……。このままただ降りたのでは、お父様たちに迷惑をかけてしまうわ。貴族令嬢である私がそういう人たちに攫われたというだけでも、欠点になる。ただ使用人を見捨てられはしないから……)


 ランセットは自分の乗っているスピーカーを見る。





(私は私のスキルで何が出来るかを考えた方がいい。……まずは、油断させてスピーカースキルを発動させる。それでもしかしたらどうにか出来るかもしれない。それに少し離れた場所にだってスピーカーは設置出来るから……よし、やったことがないけれど、一度やってみよう)



 ランセットが出来ることは、スピーカースキルを使用することだけだ。

 そのスキルは箱を出現させ、音を伝えるだけのもの。だけれど、空だって飛べるのだ。もっと、このスキルには可能性があるはずだとランセットはそう信じている。



 だからランセットはゆっくりとスピーカースキルで下降し、彼らを油断させながらもスピーカースキルを使っていくつかのスピーカーを出現させる。


 まずは使用人を抑え込んでいる男だけに狙いを定めて、大きいものを一つ落とす。使用人にまで被害がいくかハラハラしたものの、なんとか、男だけにダメージを与えられた。

 突然現れた物体に、他の男たちが動揺している隙にマイクに大音量で声を流す。

 ――男たちの耳元に出現させた小さなスピーカーから音が漏れ、その大音量に驚いた男たちがすくむ。


 その隙に使用人の足元にスピーカーを出現させ、そのまま飛ばさせる。

 



「お、お嬢様……」


 退避は出来た。しかし、下には男たちがいる。

 それにランセットはこれだけスピーカーを出現させたのは初めてなので、中々飛行させているスピーカーを操るのは難しい。



 だけど、青ざめている使用人と違ってランセットは笑っている。


「大丈夫よ。多分、しばらくすれば騎士たちが来てくれるから」



 ――そしてランセットが言うように、それからすぐに領地の騎士たちがやってきた。

 これはランセットがスピーカーを、父親の元へ飛ばした結果である。それだけの長距離離れた場所へスピーカーを出現させるのはランセットは初めてだった。

 だけど、成功したことにランセットはほっとする。



 その後、騎士たちがならず者たちを捕らえたのを見て安心したランセットは意識を失った。

 流石に、スピーカースキルを使いすぎたらしかった。




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― 新着の感想 ―
[一言] スピーカーを落とされるとは…かなり痛そう…。
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