④ スピーカースキルで空を飛ぶ
ランセットは《スピーカー》スキルを使いこなすために夢中になっている。
それこそ、時間があるときは全てスピーカースキルの可能性を広げるために使っていた。
それだけランセットにとって《スピーカー》スキルが面白いものになりつつあったからである。
とはいえ、暇な時間を全て《スピーカー》スキルの検証に使っているランセットは何処か病的に見えるのか、家族は心配していた。
結局スピーカースキルを磨くことには賛成しているが、時間制限をつけて学ぶことになった。
(可能性が無限大だわ。この《スピーカー》スキルをどんなふうに出来るかしら)
ランセットは、時間制限をされたものの《スピーカー》スキルを使えない時間も紙にスキルの使い方について考察したことを書いたりしていた。
寝ても覚めても自身のスキルのことを考えているのは、それだけそのスキルの可能性を感じているからと言えるだろう。
ランセットは家族たちと一緒に遠出をしている時も、《スピーカー》について考えている。
(流石に家族でお出かけ中には《スピーカー》スキルを使えないわ。領地の領民たちは私が《スピーカー》を出現させるのに慣れているけれど、違う場所で《スピーカー》を出すのは流石に目立つし)
そういうわけでランセットは、別荘でのんびりと過ごしている。
しかしランセットの頭の中はやっぱり《スピーカー》スキルのことばかりである。
ランセットは家族に連れられて、湖に行くことになった。
ランセットは兄と一緒に湖の傍で遊んでいる。今日の天気は快晴で、心地よい風が吹いている。
そんな場所で遊びまわれることはランセットにとって楽しいことだった。
――ただあまりにもはしゃぎすぎたのであろう。
ランセットは湖の傍ではしゃぎすぎてしまい、態勢を崩してしまう。
そしてそのまま湖に落ちそうになる。
(落ちたくない!!)
だけど、ランセットが湖に落ちたくないと心から願った時、その《スピーカー》スキルが発動した。
「あれ?」
落ちそうになって思わず目を瞑っていたランセットは、自分が水の中に落ちていないことに驚き、目を開ける。
家族の驚いた声が、耳に入ってくる。
「……《スピーカー》?」
発動した《スピーカー》スキル。現れたスピーカーは、ランセットが乗っていても問題がないサイズだった。
そしてそのスピーカーは、宙に浮いている。
(確かに浮かせられるって思ったけれど、これ、乗れるの?)
ランセットはまさか自分がスピーカーに乗るということは考えたこともなかった。だけれども咄嗟のスキル発動で乗ることが出来るということが分かった。
その可能性に気づいたランセットは、遠出から帰宅した後、空を飛ぶことを試行錯誤することになる。
《スピーカー》スキルで発動させたスピーカーの上に乗れば、飛ぶことだって可能なのだ。
……ということを家族に力説すれば、当然危険だと反対された。
幾ら空を飛ぶことが出来るとはいえ、スキルというのは万能ではない。
空を飛んでいる最中に《スピーカー》スキルの効果が切れてしまえば、ランセットは落ちて大怪我……最悪の場合は死んでしまうことだろう。
ランセットの家族たちからしてみれば、ランセットが前向きになったことは嬉しいが怪我をしてほしくない思っている。
しかし、ランセットは折れなかった。
「このスキルには無限の可能性があるのです。私は自分のスキルだからこそ、この《スピーカー》スキルがどれだけ有効活用できるものなのかを、可能性を開拓していきたいのです」
どんなスキルか分からないと、《スピーカー》スキルを蔑むものもいる。
ただの音を発するだけのスキルだろうと《スピーカー》スキルを甘く見るものもいる。
ランセットは、そんな視線を全部蹴散らしたかった。
折角の自分が授けられたスキル。唯一無二の、沢山の可能性を持つスキル。
このスキルを使えば、この空の下を自由自在に飛び回れるかもしれない。
そんなワクワクするような可能性があるのならば、ランセットは試したかった。
ランセットが止めても全く折れなかったので、なんだかんだランセットに甘い家族たちはランセットが空を飛ぶことを許可した。ただしいきなり高い所まで飛んだりしないように、またランセットが落ちた時の場合に受け止められるスキルを持つものを雇ってからということになった。
そういうわけで、風を操るスキルを持つものを雇い、ランセットはスピーカーで空を飛ぶことを試行錯誤し始める。
小さなランセットが乗れるだけの大きさのスピーカーを出現させ、その上に乗り、空に浮かせる。
(まだ高い所までば飛ばせないけれど、確かに浮いているわ。自分のスキルで空に浮かぶことが出来るなんて!! 楽しい!!)
ランセットにとって、他の誰でもない自分の力によって空を飛ぶことが出来ることが嬉しかった。
――それからランセットは《スピーカー》スキルで空を飛ぶために時間を割くことになる。




