③ スピーカースキルを検証してみる
ランセットは《スピーカー》のスキルがどんなふうに使用することが出来るのだろうかと検証を進めることにした。
ランセットの家族は、ランセットが前向きになってくれることが嬉しいようでそれを応援してくれている。
――ランセットは音を出す検証を進めてみる。
まず、箱と棒状のものを離しても声が出るのか。そういうのを試してみる。
「……結構話しても声が響くのね。一方通行だけれど、伝達のためにはなるわね」
それなりに距離を離しても声は響いた。ただし、やはり限界はあるらしかった。
(でも今の段階ではそうでも、もっとスキルを磨けばもっと先までおけるようになるのだろうか? スキルってのは確か磨いていけるもののはずよね。それならば――このスキルの可能性はもっと広がるはず)
ランセットはスキルを磨いていけばどうにでも出来るはずだとそう思った。
スキルというのは、そもそもどのような効果があるかというよりもその使い方が重要なのだ。同じようなスキルだったとしても、使い方次第ではそれは別物になっていく。
ランセットのスキルは、周りから馬鹿にされるようなものである。それはそのスキルの有用性が分からないからだ。
ランセットはその可能性を広めていくことにした。
(そもそも、この箱って一つしか出せないのかしら?)
このスキルをどのように使っていくことが出来るだろうか――。それを想像していくと、ランセットは沢山の可能性を見出していった。
箱は、今のところもう一つしか出せなかった。でも二つの箱から、同じ音声を出せた。ちょっとだけ疲れたので、この疲れが感じなくなっていけば――スキルの熟練度が上がればもっと数を増やせるのではないかなどとランセットは考える。
(この可能性をもっと増やしていければ、私はこのスキルを有効活用できるようになる。このスキルはもっと他に何が出来る?)
ランセットは、その《スピーカー》スキルの可能性をずっと考えてワクワクしてきた。誰も開拓したことのない新たな可能性を見つけられると思うと、その可能性をノートへとメモしていく。
何が出来るだろうか? どんなふうにこのスキルで遊べるだろうか? そんなことを考えると、楽しくてそのことばかりに夢中になる。
しばらく令嬢教育よりもスキルに時間を割いているが、家族はそれを容認している。
スキルの可能性を広めるために、もっといろんな検証をしていく。
自分が見ていない場所にも箱を出せるのだろうか? などとそんなことを思いながら、目をつむって出してみる。普通に出た。目の前に出すことは出来た。離れたところになんとなくで出してみようとしたらうまくできなかった。だけれども次に父親の隣とか、想像力をきかせてみると、出現した。
突然出てきたことに父親は大変驚いたらしい。
でもそうやって目で見てもない場所にその箱――スピーカーを出せることにランセットの父親も可能性を見出してくれた。
凄いとそんな風に褒められるとランセットは嬉しくなった。
ひとまず、領地内の告知事項がある際に使ってみることにした。
領民たちは説明文が書かれていたその箱を不思議に思ったらしい。その箱の中から領主の声が聞こえてきて再度驚いたらしいが、こういうスキルもあるのだと感心したらしい。
何回もそのスキルを使用すると、領民たちもそのスキルに慣れてきたようだ。
家族と一緒に領地に出た時に、そのスキルのことで声をかけられることも多かった。
ランセットは凄いと言ってもらえることが嬉しかった。
そうやって周りに認められ、自分のスキルが凄いものだとそうやって自信が湧いてくると、それだけでランセットは生きていけると思った。
落ち込んでいる暇もなく、このスキルをどんなふうに使おうかとそればかり考えている。
領地内での情報の告知にどんどんスキルを使い続けた。そうすれば《スピーカー》スキルを使いこなす令嬢として領地内で有名になっていく。
ランセットはこのスキルをどのように成長させようか、とワクワクしている。
この箱を使うための、操るためのスキル。
ならば、もっと面白い使い方が出来るのではないか。
(操ることが出来るものならば、この箱をどんなふうに出来るかな。浮かせるとかもできる?)
そういうことをランセットは考えて、念じてみる。
そうしたらその箱が空中に上がる。
だけれどもそんなに長い時間は空中には上がらなかった。
(なんだか、こう……力が抜けていく感じがするわ。もっと私がスキルをうまく使えるようになったら、もっと面白い使い方がきっとできる)
――検証を続けてランセットは、箱を飛ばしたり、見えない場所に出現させたり、複数出したりというのが出来ることがわかり、楽しい気持ちになった。




