プロローグ:その日、王国に一つの知らせが響き渡った。
そのヴィーダレン王国は、五百年の歴史を持つ由緒正しき王国である。海に面する海洋国家。それでいて自然も豊かである。
そのヴィーダレン王国は、賢王と呼ばれている国王陛下が治めており、国民たちは国王陛下と王家を慕っている。
さて、周辺諸国との関係も良好なその国で、国民達はこの国の未来に対して希望を抱き、微塵も不安を感じていない。
『わたくし、ランセット・ベーデーは婚約破棄されましたの』
その日、ヴィーダレン王国に一つの知らせが駆け巡った。
その声は、この王国でも有名な一人の令嬢――ランセット・ベーデーの声である。
王太子の婚約者という立場であり、色んな意味でこの国で有名な存在である。
その淡々としたランセットの声は、スピーカーから響いている。そのスピーカーは、その日、突如として国内中のあらゆる場所へと出現した。
何もなかった場所に、スピーカーが出現してもこの国の人々は大して驚きもしなかった。何故ならこの国の国民にとって、なじみ深いものである。
何故なら、ランセットは“スピーカー令嬢”と名高い令嬢であり、そのスピーカーを見た事がある者は多い。スピーカーが出現することは言ってしまえば、その国にとっては日常茶飯事なことであった。
その日、国中に出現したスピーカーから、漏れたのは王太子から婚約破棄をされたという知らせであった。
――その知らせはスピーカー令嬢の、スピーカーによって瞬く間に国中に響き渡った。
※10話程度で終わる予定なので、勢いのままと投稿です。