プロローグ
テレビに映るキラキラと輝くアイドルに憧れて、自分もそうなりたいと思った。
高校卒業と同時に上京し、アイドルを目指してオーディションを受け続けるも全敗。これで最後にしよう、そう思って臨んだ複数の事務所が集まる合同オーディションでは、緊張しすぎて出だしから転倒し、審査員はみな苦笑。その後の歌唱では歌い切ったものの、声がかかることはなかった。
…これはもうだめだ。そう思っていたのに。オーディションの帰り道、一人の女性に声をかけられた。
「…ねえ、あんた、柏木響、で合ってる?」
「どちらさま、ですか?」
「アイドルになりたい?」
「そりゃあ、まあ…」
「…だったら私があんたをアイドルにしてあげる」
「え…?」
その女性が差し出してきたのは名刺だった。そこに書かれていたのは誰もが耳にしたことのある事務所名。
「TAKAKI…プロダクション!?そんな大手がどうして…」
「あなたの歌は、まさに私が探していた理想だったの。どう?とは言っても、ある条件付き、だけどね」
—こんなチャンス、二度とない。ここで逃げちゃ、終わりだ。
「私にできる事なら、何でもやります。お願いします。アイドルは……小さいころからの夢、なんです」
「いいわ、私があんたをアイドルにしてあげる。ただし、——男として、だけどね」
「は?」
柏木響、20歳。念願のアイドルデビューはどうやら前途多難のようです。
少しづつ更新していけるよう頑張りますので、見守っていただけますと幸いです!