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未知との遭遇


 数日経過しただろうか?


 あれから全くと言ってもいいほど何も起きない。

動けないし、何かに触られている感じもしない。モクモクと思考を重ねる毎日を過ごしている。

やばい、そろそろ発狂しそうだ。話したい。動きたい。


 でも、不思議と眠くもならないし、腹も減らない。

この思考できる環境はあっても、自分では何もできないもどかしさ!


 誰か! 誰でもいい! いっそ犬でも猫でもいい! 俺を拾って何とかしてくれ!





――さらに数日後


 おーい! 白髪の男! 聞こえてるか!

俺をこの世界に送ったお前だよ! 聞こえてるんだろ! 何とか、何か言ってくれよ!

お願いだよ、どんな言葉でもいいから俺に声をかけてくれぇぇぇ!




――さらに数日


 おっと、そいつはもう死んでるぜ。

そっか、そいつはしかばねーなー。


 あーはっは! しかばねーなーだってさ!

超ウけるんですけど。 まじパねーっすね!

流石アニキ! 

そうだろ!

お前もそろそろギャグの一つでも言ってみたらどうなんだ?

いやいや、兄貴の方があっしより面白いですからー。



――


 俺はお前を悲しませるやつを許さない!

あぁ、ライト! 私の勇者様、早く私をここから……

っむ! 何奴っ!

ついにここまで来るとは! 王剣の錆にしてくれるわ!

そうはいかない! 奥義『百列龍虎乱舞天地双放剣(ひゃくれつりゅうこらんぶてんちそうほうけん)!!』

ぐぁぁぁぁ! そ、その奥義は今は亡きかの王国の武神、アレンドリューキンシン=サーマルペンチギールドニア=ド=マイオキニーの失われた剣技!

放ったが最後、自身もただでは済まない! 王女の為に、俺はここで貴様を止めるぅぅ!



 うん、なかなかの妄想っぷりだな。

本格的にやばい。一向に何かができる気がしないし、それよりも色々な感覚が無い分、非常にもどかしい。

そろそろ妄想にも飽きてきた。一体俺はこんな所で何をしているんだっけ?


 考えたくないが、考えるしかない。

時間だけがコクコクと過ぎていく。いったいどのくらいの時間が経過したのだろうか。

今が夜なのか、朝なのか、晴れなのか雨なのかすらわからない。


『…………て。…れ…、……け……』


 頭の中に何かが響いてくる。何か雑音のようなものが脳裏をよぎる。

なんだ? 何かが聞こえる? おーい! 誰か! 俺はここだ!

聞こえるか―! おーーーーい! たーすーけーてーくーれー!

俺は心の叫びを、今まで生きてきた中でも一番叫んでいる。


『…すけ…。だ…か……きこ…ま…すか』


 確かに声が聞こえる? いや、耳の感覚が無いから脳に響いて切ると言った感じか?

でも、確かに声がする。一体何日経過していたのだろう。ついに未知との遭遇しかり、話し相手がぁーーー!


『誰か! この声、聞こえますか! お願い! 誰か! 私の声を感じて!』


 はーい! ここですよー! ここに居ますよ! 今、しっかりと届きました!

俺の声って届くんですかねー! おーーーい!


『誰か! 魔力の反応は感じます! お願い! 話を聞いてください!』


 聞くよー! 何でも聞いちゃうよー! 早く、こっちに来て―!

そして、俺の話しも聞いて―!


『魔力を感じます、目の前で。でも、何も話してくれないのですね。お願いします。私には声が出せません。目も見えないの。お願い、私の話を……、うぅっ……』


 ど、どうしたの! 俺の声は届かないの! えっと、名もなき人? よ。

俺も見えないし、話せないから同じだね! って、違う。一体どうしたの、いいから話してごらん!


『お願いします。話だけでも来てください……。その後は私をどうにしてもらっても構いません。お願いします……』


 そんな事を言いながら、彼女は一人で話? 始めた。

どうやらこの近くの集落ではエルフが住んでおり、さっきまで普通に生活していたそうだ。

所が、急に人間が武装し襲ってきて、あっという間に占拠されたらしい。


 何人か奴隷として街に連れて行かれたが、村にはまだ何人も残っていいるそうだ。

そして、村長の彼女は代表として意見を言いに行ったらしいが、喉をつぶされ、変な薬を飲まされ、目が見えなくなったらしい。

かろうじて魔力を介して念話は使えるが、ある程度の魔力が互いに無いと意思疎通ができない。

そんな彼女を村から放り出し、数人の男が武器を片手にエルフ狩りを行う。


 目が見えない状態で逃げることもままならず、魔力感知で俺を感じ、助けてもらおうと道なき道を進んできたって事だ。

助けてやりたいが、正直俺にどうする事も出来ない。なんせ、本当に手も足も出ないのだから。


『お願いします。村には私の妹がいるの。私の事はどうなってもいい! お願い、妹を助けて……』


 さすがに、ここまでお願いされると、断りずらいですよね。

でも、こっちの声は届かない、動けない、触れない。正直どうしようもない。


 白髪の男が言っていたが『初めは苦労するかも』と。

確かに超苦労しています。はい。めっちゃ苦労しています。

なんせ、意思疎通も出来やしない。どうないせっちゅうねん。



『少し遠くの方で私を探す声がします。私が見つかるのも時間の問題でしょう。もし、私が見つかったら、私を見捨てて逃げてください。あなたまで巻き込んでしまう訳にはいかないの』





――




『い、痛い! やめて! どうしてそんな事を!』


 どうやら見つかってしまったようだ。

申し訳ないが、俺にはどうする事も出来ない。助けてやりたいのはやまやま。

本当にすまん、せめて動ければ何とかできたかもしれないのに……。


 おい! 白髪男! 何とかしよろ! 目の前で事件が起きてるぞ!

しかし、返事はない。 畜生! 目の前で起きている事に対して、俺は何と無力なんだ!


『え、これは何かって? 答えれるわけないじゃない! 声を出せなくしたのはっ あぅ!』


『大丈夫か!』


『え? 誰? 私に話しかけるのは?』


『俺だ! さっきからずっと俺に話しかけていただろ!』


『え? でも、ずっと沈黙で……。もしかして、この丸い球があなたなの?』


『え? 俺って丸い球なの?』


 どうやら俺は球らしい。しかも、触ってもらえないと会話もできない球。

念話って言う位だから多少離れていても話せるんじゃと思っていたが、そうでもないらしい。


『で、今の状況を説明してくれ!』


 俺はあわてて彼女に今の現状がどうなっているのかを聞く。




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