王国に向け
「おはようございます!」
今日も朝から元気なリムル。両親に会えて安心したんだろう。
ダウルも人間が残していった焼き鳥を一心不乱にむさぼり、昨夜は早々に寝に入っていたようだ。
リムルは両親との会話もそこそこに、身支度を始める。
俺はダウルの首からリムルの首に引っ越しをし、安楽の地を得ていた。
昨夜は、リムルと両親の会話を聞きながら、親子水入らずの場を邪魔しないように、なるべく話をしないように心掛けた。
たまにリムルが俺に振ってくる話に対して、返事をするくらいで親子の話は深夜遅くまで続いていたようだ。
「リムル。我々はこのまま馬車を使って村に帰る。リムルも一緒に戻るだろ?」
「私はこのまま王国に行くよ」
心配そうに見る両親は、意を決したのかリムルの旅立ちを受けれた。
一人、ぽつんと取り残されているドワーフ族のカミーユがこっちを遠目に見ている。
リムルもそれに気が付いたようで、カミーユに近づき、隣に腰掛ける。
「カミーユはこれからどうするの?」
「私は、自分の国に戻りたい。戻りたいですけど……」
地面を見つめ、グッと唇をかみしめるカミーユ。
リムルの両親は、馬車に荷物をまとめ、旅立ちの準備をしている。
「だったら私達と一緒に行かない? 王国経由になっちゃうけど、一緒に行こうよ!」
「い、いいのですか? きっと足手まといになりますよ?」
「大丈夫だよ。ここで会ったのも縁だし、一緒に行こう! いいでしょ? エリクス」
「ん? 俺か? 俺は別にいいぞ。特にこの後目的もないしな」
ダウルもハッハいいながらカミーユによりそう。
二人と一匹、そして球一個のドワーフ王国(王都経由)の旅が始まろうとしている。
そして、それぞれが出発の運日を終え別れの時がやってくる。
「村に帰ったらババ様と今後の事を決めようと思う。もし何かあればこれを」
リムルの父が渡してきた布袋には黄色の宝石が付いた指輪が入っている。
「これは対になる指輪の場所を示す効果がある。もし、村が移動していたら、これを頼りに戻ってきなさい」
「分かった。父さんも母さんも無事に村に帰ってね。」
馬車に積んであった食料と水を少し分けてもらい、俺達はそれぞれの道を歩き始める。
これから行く王国はどんなところか、そしてドワーフの国まで何事もなくつくことができるのか……。
――そして数日後
道中何事もなく、普通についてしまった。
街道は整備されており、時折すれ違う商隊や冒険者と思われる鎧を着こんだ人たちに会ったが、特に何も起きなかった。
そして、街道の先に高い城壁が見え始める。
「でっかいな―」
「でっかいですねー」
「大きい……」
「わう!」
皆、それぞれの感想を言いあった後、王国に入る為、ゲートの入り口に並ぶ。
入る為の審査なのか、門番からチェックを受けるようだ。
馬車の中に多少の現金と雑貨や服などがあったので、カミーユの服装は普通の村人に近い。
そして、首輪もないので、恐らく変な探りは入れられないだろう。
「次!」
俺達は門番の目の前にやってきて、手荷物や武器などのチェックを受ける。
「身分証明書は?」
「えっと、初めてこの国に来るので持ってないです」
「この国に何しに来た?」
「親族がこの国にいると聞いたので、村から来ました」
「人探しか。入国料が必要になる。それと、仮の身分証を発行するから、早々にこの国の身分証明書を発行するように」
「分かりました」
「それと、そこのウルフは獣魔か?」
「えっと、そうですね。一緒に旅をしてきた仲間ですね」
「分かった。これを首に付けておくように」
手渡された首輪をダウルにつける。これが無いと、街中で問題が起きるそうだ。
「それでは、二人と一匹の入国を認める。問題は起こさないように」
俺達は特に問題もなく、あっさりと王国に入る事が出来た。
その際に、俺は人としてカウントされず、まったくのノータッチだった。
見た感じただの球だしな……。ちょっと寂しいが、置いて行かれるよりはいいだろう。
通りを歩きながら、リムルは話しかけてくる。
「もう大丈夫ですよ」
「あー、きつかった。何も話さず、ただ見ているだけだとヒヤヒヤするな」
「これからどうしますか?」
「そうだな。とりあえず、証明書の発行と宿でもとるか。お金はあるのか?」
「多少なら持っていますが、これもいずれ底を着きますね」
「今後の事を考えても、収入面を検討しないといけないな……」
旅をするにも何か買うにも、何かと現金は必要だ。
色々と目的を果たすためにも、収入が無いと困る。そして、カミーユを送り届けるにもある程度まとまった現金が必要だろう。
俺達は収入を得る為にも考えなければいけない事を、すっかり忘れていたようだ。
職探しか。さて、どうするかな……。
これにて第一章完結です。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
短話として、第一章を完結したいと思います。評判が良ければ第二章王国編を書いて行こうかと……。
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