作戦その二
ダウルは闇に紛れ疾走する。
俺は今、ダウルの首にくくりつけられ、まるで首輪になった気分だ。
『主よ。本当にこの作戦で上手くいくのか?』
『多分大丈夫だ。だから、俺達だけで行くんだろ?』
作戦その一は見事にお蔵入り。
障壁がある限り外からの魔法攻撃はできない。
であれば話は簡単。障壁の中に入ればいいだけだ。
落ちてきた怪鳥は障壁の中に入っていった。
と言う事は、あの障壁は純粋に魔法攻撃のみに反応したとみて良いだろう。
作戦その二を実行に移す。
俺はダウルの首に一時お引越し。さよなら、双子山。俺はきっと帰って来るよ。
ダウルと一緒にこっそり障壁の内部に入り、たき火の付近間で行く予定だ。
ゆっくりと進み、足音を立てないように進む(俺には足もないけどな。頑張れダウル)。
そして、だんだんたき火が近くに見えるようになってきた瞬間、何か薄い膜のようなものを通過した感覚に襲われた。
『主よ。恐らく障壁を通過したぞ』
『あぁ、俺も違和感を感じた。障壁を通過するってこんな感じなんだな』
ふいにこっちに歩み寄ってくる足音が聞こえた。
ダウルは俺の指示を待たずに、足音を立てずに岩陰に隠れる。
『我は魔力を抑えることはできるが、主はできるのか? さっきから漏れているぞ』
『何ですと。どうやって抑えるんだ?』
『こう、グッとやって、バッと抑える感じです。主、早く抑えてくれ、人間が来るぞ』
ダウルは感覚派だな。さっぱりわからない。俺は教わった通りグッとやって、バッと抑えてみる。
こ、こんな感じで抑えられるのかな?
『主よ、時間が無い。早く抑えなければ人間が来るぞ』
いかん、まったくできていならしい。まずいな。
今ここで見つかるわけにはいかない。若干予定外だが、作戦を変更しよう。
『ダウル。俺をこの岩陰に隠して、お前だけで人間を殲滅できるか?』
『普通の人間であれば我一人でも何とかなるな。それよりも主をここに置きっぱなしで平気なのか?』
『なに、見た感じ俺はただの球だからな。人に見つかっても大丈夫だろ。さ、早く俺を』
ダウルは俺に言われた通り、伏せの状態で、口と前足を器用にモニモニしながら、俺を網から解放する。
狼の肉球のプニプニ感も中々……。こうして俺はダウルと別行動になった。ダウルも隠れるように離れていき、闇に消えて行った。
「おかしいね。今ここに魔力を感じたんだが、誰もいない……。もしかして魔物か?」
一人のローブを着た女が辺りを見渡している。手には長い棒を持ており、先には丸い球が乗っかっている。
恐らくこいつが障壁を張り、火の玉で怪鳥を手にかけた奴だろう。しばらく様子を見るか……。
「お、こいつが魔力の原因か?」
俺は女に拾われまじまじと見られる。両手でコロコロされ、遊ばれる。
「これはいいもんだ。かなりの魔力が中に入っているな」
ニヤニヤしながら俺を手に、たき火の方に向かって歩いて行く。
あれ? 俺もしかして捕まっちゃった? やばい?
『主よ。わざと捕まって、注意をひきつける作戦ですね。わかりました、様子をうかがい、奇襲をかけます! さすがですね!』
『おぅ! そ、その通りだ! しばらく待機して、様子を見てダウルのタイミングで奇襲をかけてくれ』
とりあえず、いい方向に流れたと判断しておこう。
たき火をかこっているのは四人。ローブの茶髪女、ハーフプレートを着た金髪男、皮鎧の髭男、そして粗末なローブを着た首輪の人が見える。
どうやらさっき仕留めた怪鳥をさばき、焼いているようだ。
茶髪女と鎧の男二人は焼き鳥を食べているが、首輪の人は後ろで控えている。
うーん、敵は四人じゃなくて三人? 首輪の人と他の三人を比べると雰囲気が違う。
もしかして、奴隷ってやつか? でも、確定じゃないしな……。
俺がウンウン考えていると横から凄い速さで黒い何かが通り過ぎる。
そして男たちの手に持っていた焼き鳥が消え、少し離れた所に黒いウルフが見える。
そう、ダウルの口には焼き鳥がくわえられているのだった。
おい。ダウルのタイミングと確かに言ったが、なぜそうなる。
俺は出ない冷や汗と共に、早急にどう切り抜けるか対策と考える……。




