表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

第六話 -潜む者達-


「ここは…」


てっきり岩盤の間に落ちたのだと思っていたが、どうやら違うらしい。

見渡す限り暗く、視界は無いに等しいが、地面に触れた感触は確かに人工物のものだった。


「コンクリート…なんだってこんなものが学園の地下に」


随分高くに光の点が見える。

どうやらかなりの距離を落ちてしまったようだ。

突然室内を明かりが照らす。

同時にガシャっと、鉄のような音がした。


「誰か居るのか?!」

「?!」


幸い、四方を何かに囲まれて姿は隠れていた。

規則正しいラインの四角い物体。

コンテナのようにも思えた。

それがいくつもあり、全てのコンテナの上からブルーシートが被せてある。

障害物の向こう側で男の声が聞こえる。


「あぁ〜、さっきの衝撃で地盤が緩んだのか」

「落盤でもあったのか。面倒だなったく」


足音と声から察するに、男は二人。

徐々に近づいてくる。

足音とは別の音も聞こえる。

鉄の擦れるような、とても無機質な音。

二人とも長身の銃を手に持っていた。


「ほんっとに丁重に扱えっつの。もし」

「ばーか石に言っても仕方ねぇだろ」

「それもそうだな」


ゲラゲラと下品に笑う男達。

足音は次第に大きくなる。

そして二人の足音がやんだ。

彼らの持つ照明がコンテナの裏を照らした。


「たく、後で天井も修理するか」

「へいへい、どうせこういう雑用は俺ら下っ端の役割ですよっと」


悪態をつきながら石のようなものを退かしていく。

その様子をコンテナ一つ分離れた場所から観察していた。

(なんだあいつらは…。軍人?だが正規の軍服じゃない。それに学校の地下にこんな部屋があるなんて聞いたことが……)

ノブはコンテナに被せてあったブルーシートに体を隠し、彼らの様子を見ていた。

天上のライトの位置から推定するに、地面から30mはあろうか巨大な空間だった。

特に装飾も無く、出入り口も男達がやってきた一カ所のみ。

石を退かし、一人がブルーシートをめくった。

コンテナからはみ出した物体が見える。

ノブは遠目を凝らして見るが、その正体に驚愕した。


「ふむ…。傷一つ付いてないなんてな」

「流石は月の石製だ。これで伯爵のヤローに一泡吹かせてやるぜ」


コンテナの中から覗く黒光りのもの。

明らかに銃身であった。

それらがおもちゃを片付けた後みたいに、山積みになっている。


「まったくめんどくせぇなぁ」

「ま、これも仕事のうちだと思ってあきらめるしかねぇだろ」


そんなことを愚痴りながら二人は部屋を後にした。

遥か上部にぽっかりと口を開けた部屋に残されたのは、大量の兵器の山と、それに埋もれたノブ。

先ほど自分が落ちてきたらしい場所へ行く。

手近なところにあった銃を手に取った。

この武器の山がクッションになって怪我を免れたようだが、その武器にも自分すらも無傷だと言うのが不思議だった。

今まで見たこともないような型ではあるが、握るグリップ、レバー部分と長く突き出た銃身から明らかに銃だと分かる。

銃身の下に刃物が付いてるタイプもある。


「なんだここは・・・。何故で銃が?いや、それよりどうして学園の地下にこんな場所が」


この部屋は軽く見積もって30メートル四方はある。

その部屋いっぱいにコンテナは置かれている。

これが全て武器だとしたら、戦争でもするつもりなのだろうか。


「まずここから抜け出すのが先決か」





---





その頃、学園の様子は変わっていた。

グラウンドは地割れを起こし、色付き始めていた紅葉のほとんども落ちている。

石畳や校舎の壁、あらゆるところでひび割れが見える。

保健室には先ほどの揺れで負傷した生徒達が多数押し寄せていた。

その最中、学園の化学準備室に甲高い声が響く。


「先生!早く、早く九月君を助けないと…」

「リン、彼は大丈夫だ」


焦燥しているリンが教師に詰め寄る。

リンが両手で服を掴んでる相手は、体育教諭のセッテ教師。

彼女が叫ぶたびに、茶色の撥ねた短髪と、やや育ちすぎのようにも見える胸が揺れる。

今は教師の制服を着ておらず、黒いタンクトップとスパッツの格好をしている。

トニィはというと、必死の形相のリンを懸命に宥めていた。

担任のフロイが穏やかに言う。


「既に連絡はしてあります。救助を待ちましょう」

「でも!」

「俺なら大丈夫だ」


不意にドアが開き、聞き慣れた声がした。


「ノブ?!」

「お前、大丈夫だった…」


トニィの言葉を遮って、彼の視界に黒いものが映った。

数瞬後には、リンがノブに抱きついていた。


「良かった。本当に良かった」


苦笑を浮かべて頭をかくトニィ。


「良く戻ってきたな、九月。だがその格好一体何が」

「先ほどの軍の実験の後に、聞いてるとは思いますが地面に落ちて」


その場にいた4人とも頷く。


「そしたら偶然にも服が木に引っかかって助かってました。ようやく這い上がってこれたんですが、誰もいなくて探すの苦労しましたよ」


ノブはとっさに嘘を付いた。

学園の地下に巨大な兵器が埋まってる、そして見知らぬ人間が地下に潜んでいる。

そんな事を言っても、ただ混乱を招くか、妄想だと笑い話にされてしまう。

なので先ほど見たことは黙っていようと決めていた。

地下にあった巨大な部屋。

本当は謎の男達が出て行った扉の上に排気ダクトを見つけ、そこから脱出した。

外に出られれば上等だと思っていたところ、偶然にもこの学園の排気ダクトと繋がっていた。

そんな場所を通ったお陰で、もともとススやホコリで服が汚れたのだが、嘘を付くためにわざわざ泥まみれにしてから来たのだった。

(それにしても、何故あれほどの衝撃が…)

眉根をひそめていたセッテ教師とフロイは、互いに視線で頷きあった。


「あ〜あ〜、リンまで服が泥まみれじゃねぇか。まったく、二人ともシャワー室行って洗って来いよ?」


場の気まずさに耐えかねたトニィはややわざとらしく言った。

そうだな、と同意したノブに対してリンはやや顔を背けていた。

それぞれ解散しようとしてた三人の生徒に向かって、やや小さめのメガネを掛けた教師フロイが告げる。


「あぁそうそう、今日の授業は全て中止だから。ホームルームも無し。用が済んだら早く帰るように!」

「せんせー、明日はー?」

「メールを要確認ー!」


三人を見送った後の部屋には、険しい表情をした二人の教師が残った。

彼らの視線はあの亀裂の先に向けられていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ