さて、ゴブリン狩りを始めるか
深閉としている森林地帯にぽっかりと地表に開いた黒い穴があった。
その穴に向かって、黒に近い緑色の肌で中肉中背に近い体系『生物』が入っていく。
口からは、何かが擦れるような不快な鳴き声を発していた。
その『生物』が穴に入っていくの見届けた様に、茂みから凄愴な気配を纏った集団が姿を現した。
――――――一言で言えば『異様』な五人組だった。
全員が黒の背広に黒ネクタイ、黒の革靴を履き――――――全員がまったく同じ『貌』だった。
その『貌』は、『何かしら大きな事件に巻き込まれてしまう事が多く、世界一ついてない男』の
シリーズで、その刑事役を演じているハリウッド俳優の『貌』とそっくりだった。
『イクゾ』
その中の1人が振り返りなが片言の日本語で告げた。
四人の同じ『貌』の男達は両眼を不気味な刃物に変え、肩から吊るしているホルスターから
コルトM1991A1を取り出し、ゆっくりと撃鉄を起こした。
異質な五人組は、次々と穴の中に入っていく。
その『異様な集団』の後に、今度は二人組の男性が茂みをかきわけて現れた。
二人とも見た限り、動きやすく音の立たないように身体にぴったりと合った軽装だ。
「なんで週末を異世界で過ごさなきゃならないんだっ!! 渡辺ぇぇぇ!!」
一人の男性が、怒気の孕んだ声で告げる。
「こっちでは、何回も言っているが「ナナシ」と呼べ! 「ナナシ」と」
もう一人の男性が静かに応える。
「俺の質問に答えろ!? 週末だぞっ、週末!! せっかく買ったゲームソフトをやりこもうとしていた
俺の計画が台無しだよ!」
一人の男性が、怒気の孕んだ声でさらに告げる。
「どうせエロゲだろ? そんなゲームするよりも、『異世界』で冒険者する方が健全だと思うぜ」
もう一人の男性『ナナシ』が、同じようにが静かに応えた。
「何処が健全だよっ!? 『異世界』と『現実世界』をほいほい行き来できる事の何処が現前だっ!?
ラノベやネット小説ならわかるが、これは『現実』だからな!? それとエロゲーじゃねぇよっ!
最近面白そうでマトモなエロゲーないから買ってない!」
一人の男性が、怒気の孕んだ声で告げる。
「・・・エロゲーにマトモなものってあるのか・・・?」
信じられないような声で『ナナシ』が尋ねる。
「あるっ!! エロゲーにもジャンルというのがあってだな」
怒気の孕んだ声で説明しようする。
「あとで聞くから、いまはこの『依頼』を成功させような」
そう言いながら、『ナナシ』はその説明を遮った。
「・・・成功も何も、俺が『召喚』した『アレ』で終わるぞ」
説明を遮られたためか、不機嫌な声で告げる。
「さすが『銃士系召喚魔法士』という『レアジョブ』なだけあるな」
『ナナシ』が応える。
「俺だって好き好んでこんな『ジョブ」についたんじゃねぇぇっ!! この『異世界』の冒険者ギルドで
適性検査してもらったら、わけのわからん『銃士系召喚魔法士』になっちまったんだ!」
不機嫌な声で、『銃士系召喚魔法士』の男性が告げる。
「そのわけのわからん『銃士系召喚魔法士』は、どのようにしたら『あのような』者を召還できるのか
聞きたいと所だ。
普通・・・もとい、一般的には物、物質、精霊、神々や悪魔などを『召喚』するもだと思うぞ」
穴の中を覗き込みながら、『ナナシ』が尋ねる
「知らん」
『銃士系召喚魔法士』の男性が 不機嫌そうに応える。
「やはり、ハリウッドとかに知り合いがいるのか?」
覗き込みながら、さらに『ナナシ』が尋ねる。
「「いるわけがないっ!」
不機嫌な声で、男性が告げる
「そうでもしないと、有名なハリウッド俳優みたいな者を『召喚』はできないと思うんだが」
『ナナシ』がそう尋ねるが、その口調は何処か楽しんでいる所がある。
「いや、だからそれは俺が一番聞きたいよっ!?」
『銃士系召喚魔法士』の男性が応えた。
『ナナシ』が何か言おうとした時、穴の中から激しい発砲音と耳障りな叫び声が響いてくる。
「派手にやっているな」
『ナナシ』が凄まじい笑みを浮かべながら告げる。
「・・・お前、まさか中に入るのか」
『銃士系召喚魔法士』の男性は、呆れた様な表情を浮かべながら質問をする。
「 『召喚獣』・・・もとい『召喚人』に全部任せてふんぞり返ってるのは、俺の性分には
合わないからな。 そういうことで、ゴンザレス、『召喚』したまえ」
『ナナシ』は、何処かおどけた様な声で応える。
「誰がゴンザレスだっ!? や、確かに冒険者ギルドではその名前で無理やり登録されてしまったが・・・
俺は日本人だからなっ―――――糞っ!! 『召喚』してやるよっ!!」
『銃士系召喚魔法士』の男性―――――ゴンザレスは文句を言いながら両眼を閉じて短い詠唱らしきものを
唱えた。
ちりちりと焦げるような電流が空間一帯に広がると、空間が陽炎のように揺れて弾けた。
ぶれるような残像が、一つの物質を結像させるまで一瞬の時間もかかっていない。
現れたのは先ほどの『異質』な集団と同じ、黒の背広に黒ネクタイ、黒の革靴を履いた五人組の集団
だった。
ただ、先ほどの集団と同じ『貌』ではない。
別人と同じ『貌』だ。
「壮観だな」
『ナナシ』は短く応えた。
「・・・」
ゴンザレスは、無言で応えた。
その『貌』は、やはりハリウッド映画・・・特にイタリア系のマフィア映画や狂気じみたタクシー
運転手役などで有名なベテランのハリウッド俳優の知る人は知る『貌』だ。
「さて、ゴブリン狩りを始めるか。 ――――――連れていくぜ?」
『ナナシ』は尋ねた。
「武器なしで素手かよ。忍者かお前は・・・。真面目に一つの巣には千匹近いゴブリンがいるぞ」
ゴンザレスが応えた。
「問題ない。お前も来るか?」
『ナナシ』は、軽い屈伸運動を行いながら訪ねた。
「何が悲しくて行かなきゃならない・・・。あー、とりあえず彼に従ってください」
ゴンザレスが、ベテランのハリウッド俳優の『貌』の五人組に告げた。
『イエス ボス』
五人組が、片言の日本語でそう応えた。
「よし、準備運動終わり――――。野郎ども、ゴブリン相手に情けも手加減も無用だっ! 見つけ次第撃ち殺し、撃滅しろっ!! 」
『ナナシ』が怒鳴るように告げる。
ベテランのハリウッド俳優の『貌』の集団は、肩から吊るしていたホルスターから、コルトM1991A1を一斉に取り出し撃鉄を起こした。
「総員突撃だっ!!」
『ナナシ』がさらに叫び、地面を蹴って黒い穴へと入っていく。
その後には、その集団も入っていた。
「まったく、任せておけばいいものを・・・」
ゴンザレスは、何処か呆れた声で呟いた。
ゴブリンの巣の中では、凄まじい戦闘が行われていた。
群がるゴブリンを容赦なく射殺し、怯んで逃走するゴブリンにも容赦なく銃弾を叩き込んでいた。
肉薄攻撃を行うゴブリンにも怯む様子もみせない、『何かしら大きな事件に巻き込まれてしまう事が多く、世界一ついてない男』を演じたハリウッド俳優の『貌』集団。
コルトM1991A1が火を噴き、数匹のゴブリンを撃ち倒す。
しかし、同族の屍を踏み越えてゴブリンの集団の波は迫る。
銃弾を使い切ったのか、『世界一ついてない男』を演じたハリウッド俳優『貌』の1人が、死に物狂いで群がってくるゴブリン相手に、殴り蹴り倒す。
昂ぶりきっているようだった。
その鬼気迫る雰囲気に、ゴブリンも怯え始めた。
戦闘を行っている所へ、『ナナシ』が引き連れてきたベテランのハリウッド俳優の『貌』集団が到着した。
「俺らも混ぜろよっこの野郎!!」
『ナナシ』が吠えるように告げた。
その場にいたゴブリン集団が、本能的に危機を感じたのが逃げ出そうとした。
もちろん逃す事もなく、一斉にコルトM1991A1が火を噴いた。
「もう一つ『召喚』しなきゃならないな」
外で待機していたゴンザレスは、穴の中を覗き込みながら、眉間に皺を寄せて呟く。
少し息を吐くと、両眼を閉じて詠唱した。
またしても、ちりちりと焦げるような電流が空間一帯に広がると、空間が陽炎のように揺れて弾けた。
現れたのは、やはり、黒の背広に黒ネクタイ、黒の革靴を履いた五人組の集団だった。
しかし、今度もまた違う『貌』の集団だ。
「・・・映画とかよく見るから、その影響なのだろうか」
ゴンザレスは頸を捻りながら呟く。
次に現れた『貌』の集団は、、ワイヤーアクションやバレットタイムなどのVFXを融合した斬新な映像表現は「映像革命」と称して話題となった映画作品などに出演しているハリウッド俳優の『貌』をして
いた。
その同じ『貌』が五人だ。
「えーと・・2人ほど、応援として穴に入ってもらえませんでしょうか・・・」
ゴンザレスはそう告げた。
『イエス ボス』
片言の日本語でそう応えた。
ブルース・ウイルス、ロバート・デニーロ、キアヌ・リーブス