表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様はダラダラしたい!  作者: おもちさん
第一章
88/313

第87話  謀略のクスリ


深夜の森の奥深く。

足を踏み入れる者はおろか、野生動物すら滅多に近寄らない最深部。

今宵ばかりはここに仄かな明かりが灯り、呪術用のローブを着込んだ私をぼんやりと照らす。

間に合わせの祭壇と隣に並ぶ調合器具の影が、ロウソクの炎でユラユラ揺れている。



「クヒ、クヒヒ! とうとう成功しました! 私はやってしまいました!」



私の手には、口から湯気を出している小瓶が握られている。

中には真緑色の液体が入っており、見る者は直感で危険物と感じるだろう。

だが見た目はどうでもいい、その効能こそが重要なのだ。

瓶にフタをきっちりと閉めて懐にしまい込んだ。



「これさえあれば魔王なんかイチコロ! もはや天下は私のものです!」



眠りについた森の中で高らかに響き渡る笑い声。

それを耳にしたものは一人として居なかった。




明くる日。

いつものように朝食を終えて、それぞれが1日の行動に向けてバラけ始める。

アルフはまだ食休み中のようで、椅子に腰掛けてますね。

今がチャンス!

用意した紅茶にクスリをしっかりとこう……まじぇまじぇしまして。



「アルフぅ、食後にお紅茶お持ちしましたぁん」

「お、おう。じゃあいただくか……いつもと香りが違うな?」

「今日は気分を変えて、来客用のクッソ高い茶葉を使っちゃいました。きっとおいしいですよぉ?」

「そうか……リタの背中に狐の幻影が見えるが、後で怒られるんじゃないか?」



ゲェッ!

表情こそ変わらないけど、リタの背後にユラリと狐が見えてます。

あぁ、おっかねえ。

でもいいんです、このクスリさえ飲ませられればこっちのもんです。

このアシュリーちゃんが影の支配者となる日は目前なのですから。

さぁさぁ、冷めないうちに飲ーめっ 飲ーめっ!



「なんだこれ、だいぶ味も違うな」

「え、美味しくなかった……です?」

「いや、不思議な爽やかさがあって悪くない。でも来客用のってこんな味だった……グフッ!!」

「あれ、どうしましたぁ? 調子が悪いですぅ?」



やった、飲み干した!

予定よりちこーーっとだけ多めにクスリ混ぜちゃいましたけど、大丈夫ですよね。

異物と戦うようにアルフが小刻みに震え、胸に右手を当ててます。

でも抵抗なんてムダムダ!

早く全てを受け入れて楽になってしまいなさい!



「……アシュリー」

「はい、あなたのアシュリーちゃんです。ここに居ますよ」

「美味しいお茶をいつもありがとう。ろくなお礼もしてこなかったけど、何かあるか?」

「えーそんなぁ、お礼なんていいですよぅーー。お姫様抱っことかしてくれたら嬉しいですけどぉ」

「そんなことでいいのか? ……よいしょっと」



いよっしゃあぁああ!

成功だぁああ!

あの朴念仁が姫抱っこしてくれたぞぉおお!

すっごい顔が超近い。

アルフの息がかかる距離、あぁたまんねぇっす。



「アルフ、今大丈夫か? 防御拠点の選出について……何だこれは!?」

「あらぁエレナさん、何を驚きで? 私たちはついにこんな親密な間柄になっちゃいましたぁ」

「バカな……一番ないパターンだと思っていたのに」

「ふっふーーん、何を言おうと負け犬の遠吠えですね! じゃあアルフ、このままベッドまで……んん?!」



あれ、なんか降ろされちゃいましたけど。

惚れクスリが効いてるはずなんですけど?

最初に見た異性に夢中になるはずなのに、なんでエレナの方に向かうんです?



「エレナ、もう戦いは終わったんだ。いつまで武装している気だ」

「あ、いや、これは普段着というか。しっくりくるというか」

「強制はしないが、もう少し身なりに気を遣え。お前にはもっと似合う姿があるはずだ」

「わ、わかった。身だしなみも配慮しよう」

「せっかくだから買い物に行くか。 お前はあまり服なんか持ってないんだろう?」

「そうか、行こうか。すぐに繰り出そう!」



ええーー私放置ですか!

経典にはしっかり「最初に目にした異性を虜にする」って書いてあったのに。

私のことなんかもう忘れちゃってるじゃないですか!



「あら、アルフ。どうかしたの? 普段と随分と別人のようだけど」

「リタか、いつもありがとう。お前のおかげで皆が安心して暮らせているぞ」

「え、やだ。急にどうしたの?」

「労いも見返りもなかったからな。まずは感謝の気持ちをと思って」

「もう、何言い出すのよ。奥さんとして当然の事をしてるだけよ」

「なっ! 奥さんだなんて、気が早すぎるだろう。やめてくれ」

「フフフ、照れちゃって。私はいつでも待ってるからね」



えぇ……今度はリタと甘ぁい雰囲気になってますよ。

ひょっとして、クスリが効きすぎてますか?

ちょっと多めにブレンドしちゃったせいですか?

だからエレナやリタにまで効果が及んでいる……とか。

ふ、不覚!



「アルフ、出かけるの?」

「そうだ、エレナの服を買いに行こうかと」

「んーー、私ってまだアルフとデートしてないのよね。私だけ」

「言われてみればそうだな」

「不公平じゃない? エレナは既に連れて行ってもらってるのに」

「そうだな。じゃあエレナ、すまんが買いに行くのはまた今度ってことで」

「そ、そうか。じゃあリタと行ってくるといい」



あんの女狐ぇえーー!

人の戦果を全部かっさらいやがって!

二人仲良く手ェなんか繋いじゃって、すでにいい感じじゃないですか!


力なくうな垂れて、立つ気力すら失ってしまいました。

リベンジを心に誓うけれど、手元に転がった空き瓶が非常な現実を告げるのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ