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魔王様はダラダラしたい!  作者: おもちさん
第二部
306/313

3ー75 グラン城突入戦

向かい合う黒鉄兵はそれほど多くない。

地上の方に兵力を割いてるからだろう。

だが少数相手にも関わらず、オレたちは突破に手間取っていた。



「なんだコイツら……妙に強くねぇか!?」



クエスは拳の先から爪状の武器を生やし、目の前の敵を貫こうとした。

だが、思ったほどの威力を発揮できていない。

手加減しているようには見えない。


そして、似たような疑問をオレも抱いていた。

向かい合う敵の手強さは技量から来るものではなく、人族とは思えない筋力に耐久力だった。

不気味なものを感じつつも、ミレイアを切りつけていく。



「食らえ!」


ーーあいよ活肝1丁ゥ!



例の空耳は様子が変わり、随分と生き生きしたものになっていた。

食堂のおばちゃんを思い出すほどの粋な風に。


だが、戦価はいまひとつ伴ってはいない。

一刀両断とはいかず、2度3度と打ち付けることで、ようやく戦闘不能に追い詰める事が出来たからだ。


ひとつひとつ、建材を剥がすようにして人垣を切り開いていく。

しばらくして。

投げ出された敵兵を見て、月明が悲鳴に似た声をあげた。



「な、なんという恐ろしいことを! こやつらは、グランの者共は正気を忘れたか!」


「どうした月明!?」


「こやつらの体をよう見てみい! あちこちに魔水晶の破片が組み込まれておる!」


「なんだと?」



完全武装の姿では見えなかったが、倒れた兵の体には確かにキラリと光るものが見えた。

てっきり鎧の破片や、繋ぎ目みたいなものが日差しを反射していると思っていたが、そうではなかった。



「モコ、人体に魔水晶を埋め込むなんて、本当に可能なのか?」


「流石に試したことが無いから、推測になるけど……。破片に封入した魔力の分だけ、彼らは力を得ているんだろうね。意図的な魔人生成と言うべきか。神をも恐れぬおぞましい発想だね」


「なんつうヤツらだ。そうまでして力が欲しいか……!」



眼前の敵は中々減らなかった。

増援が駆けつけているらしく、倒すそばから増強されるという有り様だ。

広大な中庭は500近い敵勢に埋め尽くされ、オレたちは濁流に飲まれる寸前の中洲のようなものだった。



「クソ! キリがねぇ。このままじゃジリ貧だぞオイ!」


「コイツらを無視しちゃいません? 相手するだけ無駄のような……」


「そりゃ無茶だ。強引に突破して城に突入したとしてよ、奥に強敵が居たらどうよ。見事挟撃が成立して、オレたち全滅しるかもしれねぇぞ?」


「じゃあ、目の前の水晶野郎どもが後を追えなくすれば良いんですね? 至高の美少女アシュリーちゃんが、不可能を可能にします!」


「マジかよアシュリー。やってくれ!」


「その前に……城の入り口に辿り着きたいんですが、行けそうです?」



眼前は人垣、その向こうに入り口があった。

中庭であることが幸いして門などはないが、そこまで移動することは難しい。

飛翔のために動きを止めようものなら、敵が一斉に押し寄せ、無数の攻撃を繰り出すだろう。

オレなんかは平気だが、月明やアシュリーなんかはひとたまりも無いハズだ。



「そうか。どうにかして隙を作らなきゃ……」


「あぁウザってぇ! チマチマやってる程気は長くねぇんだよ!」



クエスが魔龍を空に向けて放った。

それは城の一部を砕き、瓦礫の雨を降らせた。

目の前に巨大な建材が落下し、慌てた敵が攻囲を解くが、ぼんやりしていてはオレたちも危険だった。



「オラ今のうちだ! 飛べ!」


「こ、こいつ頭悪すぎますわ! 自殺志願者かしら!?」


「この程度でくたばる雑魚は死ね! そこまで面倒見切れるか!」



クエスはそう叫ぶと、落下物を巧みに避けつつ、入り口へと辿り着いた。

オレはアシュリーとフラン、陽明は月明を守りつつ、どうにか突破に成功した。



「さてと。アシュリー、早速だがどうすれば良い?」


「ええと、月明さんにもお手伝いして欲しいです。神魔壁ってヤツありましたよね?」


「うむ。しかし、あれは魔法を防ぐ技であるのじゃが」


「それをアシュリーちゃんが横から改変しますんで、ひとまず発動してもらえます?」


「よかろう。妾は唱えるだけで良いのじゃな?」


「そうですそうです、お願いしますね」



月明は扇を構え、神魔壁という防御魔法を発動させ、青みの掛かった壁が生み出された。

後ろでアシュリーが魔力を注ぎ込むと、その壁は透明度を増した。

ガラスの板でも置いたかのようで、向こうの様子が見渡せるほどになった。



「これで、大丈夫なのか?」


「まぁ、見ててくださいな」



敵兵はオレたちの姿を見つけると、再び徒党を組んで攻め寄せてきた。

長柄の槍が伸び、月明を害しようとするが。

……弾かれた。

守りの壁はびくともしていない。



「おお! いけそうだな!」


「じゃあここは、私たちに任せてください。魔力切れ対策のために、クソ女は置いてってください」


「守りきれそうか?」


「ヤバくなったら逃げるんで、助けてくださいね?」



アシュリーがおどけて笑うが、言葉通りに動きはしないだろう。

オレは彼女の頭をひと撫でし、先を進む事にした。



「クエス、陽明、オレたちは先へ行くぞ!」


「おっし。とっとと親玉をブッ殺しに行くぞ!」


「月明ちゃん、危なくなったらお兄ちゃんを頼るんだよ! 絶対だからね!」


「ええぃ気が散る! 早う行け!」



3人をその場に残し、オレたちは中枢部へと急いだ。

だが、道は知らない。

ともかく広い場所に出て、内部の構造を把握したい所だ。


ちなみに内政官やメイドなんかの下働きを探そうともしたが、不思議と一人も見つけられなかった。

あらゆる通路、客間、正面の大階段でさえもだ。


耳を澄ましても風の音が聞こえるばかりで、人の気配は無かった。

城内という場にそぐわない静寂が不吉そのものに感じられた。




「モコ、敵の居所はわかるか? 魔力の大きい所だと思うが……」


「1番大きいのは足元だよ。きっと動力炉だね。2番目に大きいのは上の方。たぶん、見晴らしの良い場所に居るんじゃないかな」


「バカは高いところが好きだからなぁ! ひたすら上を目指せば良いって事か!」



駆けながら城内を進むと螺旋階段を見つけた。

非常用らしく、内装と呼ぶべきものはなく、石材が剥き出しという有り様だった。



「居たぞ! 賊はここだ!」



階下からそんな声が聞こえてきた。

敵の残りがまだ城内にいたらしい。



「よっし。あいつらはオレが引き受けたよ。ライルたちは先に行きな」


「陽明、大丈夫か?」


「問題ないね。つうか、月明から離れすぎんのも嫌だしな。それとも何かい。アンタら2人じゃ親玉を倒せねぇって言うのかい?」


「んな訳あるか! たっぷり懺悔させた後に瞬殺してやる!」


「アッハッハ! その意気だよ、頑張ってね」



最後尾で足を止めた陽明をその場に残し、オレたちは登り続けた。

やがて最上階にたどり着くと、目の前には細長い廊下があるばかりだ。

備え付けられた窓の外は青一色。

下を覗けば雲が広がっているだろう。



「モコ、どうだ?」


「この先に居るみたいだ。準備は良いかな?」


「準備なんざ要るかよ。乗り込んで首を飛ばしゃお終いよ」



一本道の通路の先には鉄扉が見える。

そこを目掛けて、脇目も振らずに駆け抜けた。

その時モコがポツリと漏らす。



「まさかクエスと肩を並べて世直しをするとはね……こんな日が来るなんて思いもしなかったよ」



そのクエスは、体当たりひとつで扉を吹き飛ばした。

特別な備えは無い。

こうして、ようやく決戦の場へと辿り着くのだった。



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