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魔王様はダラダラしたい!  作者: おもちさん
第二部
305/313

3ー74 咎人に慈悲はない

クエスを始めとしてヤポーネ兄妹、アシュリーにフラン、そしてオレ。

空中戦が可能な面子は、世界中をかき集めてもこれだけだった。

だが、不満を漏らす訳にはいかない。

全員が全員、己の役目を全うした結果なんだから。



「さて、どう攻めるかね?」



敵の本拠地を前にして、即戦を誰もがためらい、無策に近寄る事すらなかった。

空に浮く城などと聞いたこともないからだ。

遠くに見える巨大な建築物は不条理の塊と言えた。

巨大な鉄の板らしきものに丸々と城が乗っかっているのだ。

下にあるのは黒鉄だろうか。

それがオレの清龍を防いだのかもしれない。



「なぁ、あれをどう見る?」


「攻め込むなら当然上側からだけど、簡単にはいかないだろうね。魔防壁を完備しているよ」



モコをわざわざ連れてきたのは、アドバイザーとして活躍してもらうためだ。

恐らくこの中で最も異質な物に対し、適切に推察できそうだからだ。



「おい。まどろっこしい事してねぇで、とっとと攻めようぜ。オレの魔龍で打ち落としちまえば……」


「あれ? 今向こうで光りませんでした?」


「危ない! みなのもの、退がるのじゃ!」



月明と陽明が前に出て、得物で防御の壁を生成した。

それが敵の攻撃を防ぐ。

いつぞや見た光線ではなく、細かい光の玉らしきものが、断続的に放たれているのだ。



「ひとつひとつは大したことない、が。何という数!」


「ちっくしょう、ガンガン魔力が削れていくぜ……」



まるで雨が降り注ぐかのように、無数の光が

押し寄せてくる。

そして、一向に止む気配がない。

このままではいずれ力尽き、数の暴力に押し潰されてしまうだろう。



「みんな、ここに固まってたら良い的だ。3つ数えるから、そこで散るぞ」


「いち、にの……」


「さん!」



そこで一気に散会した。

イメージ通りに散らばる事ができたが、フランとアシュリーだけは全く同じ方向へ飛んでしまった。

2人は押し退け合うようにして飛ぶが、互いの翼が邪魔をして、戦中とは思えない飛行速度になっていた。



「てんめぇフラン! 退いてくださいよ、つうか蜂の巣になって死んじまえです!」


「淫乱女こそ! 私の邪魔をするだなんて、どこまで鬱陶しいのでしょう!」


「テメエが下に潜りゃ解決ですよ!」


「下風にたてと? お断りですわ! あなたこそ下がりなさい!」


「私だってヤですよ、良いから死ねですよ!」



戦場でいちゃつくバカ2人。

しまいには殴り合いに発展してしまった。

このままでは、仲良く揃って撃ち殺されかねない。



「クエス、牽制するぞ。魔龍を撃て!」


「……ったく。けじめのつけられねぇ足手まとい共が!」



クエスはすぐに魔龍を放った。

続けてオレも清龍を撃ち込む。

黒鉄越しではなく、城に直撃させるコースだ。

だが、それは空中で壁に衝突したようにして、阻まれてしまった。

落雷でも浴びたように、2匹の龍は粉砕されて消えてしまった。



「クソッ。こうもアッサリ防がれると、さすがにプライドが傷つくぞ……」


「ライル、魔法じゃダメだ。あの守りは遠距離攻撃対策で設定されている。直接攻撃した方が、破るのは簡単だよ」


「直接っていうと……手元にあるのはこれだけか」



プリニシア王のフィリップより譲られた『聖剣ミレイア』が、手元にある唯一の武器だった。

それを抜き放つと、オレに挨拶でもするように、美しい刀身が光を跳ね返した。

……なんて悠長に構えている場合じゃなかった。

今も断続的に光の攻撃を受けている。

状況を打開しなくては、やがて疲労により、謎の光球に捕まってしまうだろう。



「行くぞ、ミレイア!」



切っ先を城に向けつつ疾走した。

大量の光がオレを撃ち落とそうとする。

数えるのも馬鹿馬鹿しい数だが、動きは単純かつ、追尾もない。

直線的な動きなので、避ける事は意外に簡単だった。



「そろそろ壁だよ、ふんばって!」


「任せろ……うおっ!?」



何もない場所で、突然体が押し返された。

電撃に似た魔力による攻撃が、オレの全身を包み込む。

致命傷にはならない。

だが、簡単に突破できそうもなかった。



「クソッ! 硬ぇ……なんつう硬さだ!」


「ライル! これを使って!」



モコが手渡してきたのは、シルヴィアからもらったガラス玉だった。

それに触れた途端、辺りを青白い光が支配した。

すると、手のひらの玉は消えてしまった。

更に言うと、剣の刀身が変化していた。

銀色だったはずのそれは、ガラス玉と同様に青く染まっていたのだ。



「な、なんだ。何が起こったんだ?」


「ライル、今だよ! 存分に魔力を注ぎ込んで!」


「お、おうよ!」



言われるがままに力を込めると、今度は違った。

ナイフで肉を引き裂くような手応えがあると、体にかかる圧力が消えてしまった。

それから城に近づいてみたが、守りは他に無かった。

何にも阻害されず、中庭らしき場所に降り立つことが出来た。



「これ……抜けたのか?」


「みんな、中に入って! ぼやぼやしてると、また防壁が再生しちゃうよ!」


「わかった!」



クエスと月明たちが慌ててやってきた。

アシュリーとフランも、互いを殴りながら飛んでくる。

無駄に器用だなお前ら。



「さて、侵入成功だな。あとはグロウとかいうオッサンをブッ飛ばせば終わりか」


「……そう簡単にはいかんようじゃな」



その言葉が示す通り、敵にはまだ備えがあった。

城内に詰めていた敵兵が押し寄せてきたのだ。

その数、およそ100程だろうか。

当然のように、全員が黒鉄兵だった。



「あんくらい、全滅させるのなんか訳ねぇぜ!」


「オレもそろそろ良い所見せないとな! 月明ちゃんに叱られちまう!」



クエスと陽明が先陣を切った。

オレもそれに続くべく、剣を顔の横に構えて駆け出そうとした。

だがその時、奇妙な声が聞こえた。



ーーォ父サマァァ。



「ヒェッ!?」


「どうしたのさライル。敵前でふざけないでよ」


「いや、今の! 今の何!?」


「ううん? 想いを具現化する能力……のお陰じゃない? さっきシルヴィアの物と感応したようだしさ」


「えぇ……マジかよ。だったら、あの声はミレイアの……」


「つべこべ言わずに敵と戦う! 時間ないんでしょ!?」


「クソッ! わかったよ、やりゃあ良いんだろ!」


ーーオ父サマァァ! アァォオオン!



怖い!

この剣、力を込めると勝手にしゃべるぞ!

何が聖剣だこの野郎、暗黒剣とか妖刀とか、そんなジャンルだろ!


オレは八つ当たり半分の気持ちで、押し寄せる敵軍を切り伏せていった。

切れ味は凄まじく、これまで見た中でダントツだった。

だが、とにかく五月蝿い。


ーーァアア! 咎人ォ! 活肝ォ! 髄液ィィイ!



血が舞う度に歓喜の声が耳元で湧く。

いやほんと、勘弁して欲しい。

ミアの教育は失敗するまいと、刃を交えている最中も帰還後の事を考えていた。 


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