2ー70 さようなら
まおダラ the 2nd
第70話 さようなら
アルフは力を使い果たして、逝ってしまった。
となると、僕自信もまもなく消えるだろう。
目の前の惨事を横目に。
「お嬢様、大丈夫ッスか?」
「う、うん。ガラス玉が助けてくれた……みたい」
シルヴィアは怪我ひとつなかった。
そして周囲の仲間たちも、何人かは我を取り戻している。
多少好転はしたけど、果たして逃げ切れるのか。
ーーサラサラサラ。
些細な風が吹く度に、僕の体は散っていった。
外側から少しずつ、粉雪のように。
こうしてシルヴィアを眺めていられるのも、あと僅か。
恐怖の余り今にも泣き出しそうな、その横顔を。
本当はよく笑う子なのに。
「……ごめんなさい」
僕の口が自然に開く。
誰一人反応は示さない。
それでも、言葉が溢れて止まらなかった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
涙を流す器官は既に無い。
それでも自分の声は震えていた。
「僕は君が、アルフが、大好きだった。本当に心からの友達だと思えたんだ。だから、君には加護を送ったし、未来予知も頑張ったんだ。でも……」
それでも。
我ながら、言い訳がましくて聞き苦しいと思う。
僕は許しを乞うているのだろうか。
死後となった今でさえ、嫌われたくないと考えているのだろうか。
「こうなっては意味が無かったね。君に降りかかる試練は、グラン戦役のことだとばかり思ってたよ」
しばらく前に地震が起きたとき、ほんの一瞬だけ『揺るがすもの』の気配を感じた。
でもそれ以降、存在を示す物事は起きなかったんだ。
だから、安心してしまった。
いや、そう信じ込みたかったのかもしれない。
「君たちはこの先平穏に過ごしてさ、忙しいながらも楽しくやってさ、そしていつしか天寿を全うする。そんな見込みだったのにな……」
ーーサァァァアッ。
ひときわ強い風が吹いた。
まるで僕の言葉を遮るように。
退場しろ、と促されている気さえする。
辛うじて残っていた僕の体は霧散し、宙に流された。
「あぁ、これまで……かな」
後はこうして漂いながら消えるだけだ。
風に煽られる度に空が、大地が目に映る。
僕の愛した世界。
果たして、どれだけの物がその形を残せるだろう。
「なにか、出来ることは。兄として、友達として……」
無くはない。
物凄く薄い望みだけど。
僕は祈るような気持ちで、自分の欠片を空高く飛ばした。
助かる道があるとしたら、ひとつしかない。
破滅へのルートは万を越える程あるのに、フェアじゃないよね。
「アルフ、気づいて。君の力が……」
最後の最後で人頼みとは、我ながら情けないと思う。
何が『生み出すもの』だ。
自分の無力さが腹立たしくなる。
「僕ってヤツは、本当に詰めが甘いね……」
意識が遠ざかっていく。
これから再び長い眠りにつくのだろう。
行く末を見守りたい気持ちとは裏腹に、瞳はそこで閉じられた。
さようなら、みんな。
さようなら、僕が愛した人たち。