2ー52 次世代
まおダラ the 2nd
第52話 次世代
急な召集にも関わらず、ダイニングには全員が集まった。
クライスおじさんは地図を開きつつ、事態の説明をしてくれた。
「反乱、とは言いましたが、単純な兵力はこちらが劣っています。ですが多数の王がこちら側に立ってますので、互角と見ることができます」
「そんなにたくさんの人が敵側に?」
「ええ。プリニシアやグランニアは半数を超える貴族が反旗を翻しました。両国とも既に内戦状態に陥っております」
「多数の王がこちら側、なんて言ってましたね。全員ではないんですか?」
「はい。グランは一国ごと蜂起しました。むしろグラン王が首謀者ですな。自ら旗印となっておりますゆえ」
その人は前にあったことがある。
セロのお兄さんで、あまり王様に向いてなさそうな人。
そういえば、グランが主犯ってことは……。
「もしかして、セロさんとかコロナのみんなも?」
「いえ、セロ殿はこちら側です。コロナも真っ先にレジスタリアに味方してくださいました」
「よかった。となると、残りはゴルディナだけど」
「不明です。まだ立場を明らかにしていません」
「あそこは要注意ですぜ。隙を見せた瞬間に噛みついてくるかもしれねぇ」
「他に味方は?」
「ロラン、それからヤポーネですな。特にヤポーネからは近々援軍がやって参ります」
「そう、それは助かるわね」
そうなると、レジスタリアとグランの衝突になりそうだ。
コロナはゴルディナに対する睨みを効かせるため、迂闊に動かせない。
ロランは外征できるほどの兵力が無い。
となると……。
「私たちとヤポーネで、グランと戦うことになるの?」
「恐らくは。プリニシアもグランニアも自国の事で手一杯でしょう。こちらの戦場に送る余裕はありますまい」
「戦力差はわかる?」
「自国800、援軍が50。対するグラン側は1200ほどかと」
「十分じゃないですか。私たちだけでも勝てそうですよ」
私たちだけ。
援軍なしでも、と言いたかったのか。
それともお父さん抜きで、と言いたかったのだろうか。
アシュリー姉さんに問いかけようとして、やめた。
意味の無い質問になりそうだから。
八つ当たりのような気持ちを追いやって、クライスさんに告げた
「状況はわかったわ、どうすればいい?」
「待ってシルヴィ。これは戦争なのよ? あなたは城の中に居るべきよ」
「私は参加したい。ダメかな、クライスおじさん?」
「正直な所、シルヴィア様にも参戦していただきたい。我らには現在、旗がありませんので」
「旗? 国旗のこと?」
「王の事ですよ。指導者と言い換えても良い。もちろん誰でも良い訳はなく、多くの者が納得する方でなくてはなりません」
「それが、私なのね?」
「ええ。この状況下において、あなた以上に適任者は居りません」
お父さん。
私が戦争に出ると知ったら、怒るかな?
……いや、それでも良い。
あの世から甦って叱られても、全然構わない。
私にはもう道が見えているから。
「リタ姉さん。私も参加するからね」
「そう……。気持ちが固まってるなら止めないわ。その代わり、無理だけはしないでね?」
「ありがとう。慎重に動くつもりだよ」
「リタさん、オレたちが着いてますから。みすみす危険な目には遇わせませんぜ?」
「ご快諾、感謝いたします。それでは布陣についてですが……」
クライスおじさんが赤い字で地図に数字を書き込んでいく。
みんな真剣な眼差しで、その筆先を目で追った。
もう後戻りはできない。
もちろん、逃げる気は更々無い。
拳をギュッと握りしめ、地図の情報を頭に叩き込んだ。