93話 シルフの情報
イアーナの入口には幻覚魔法をかけられていた。
その事実をシルフから聞いたメルはほっとする……どうやら彼女の情報は間に合った様だ。
そして、嬉しい事に母ユーリから新たな情報を得られたことをシルフより伝えられた。
「聞いてくれたって何をだ?」
急に表情を明るくしたメルに困惑しつつ、リアスは尋ねる。
それもそうだろう、メルは何を聞いてくれたのかと言ってはいない。
だが、そんな事は気にしていないのかその笑顔をシルフに向けたメルは……。
「それで、どうやれば良いの?」
『えっと、ユーリが言ってた事は……光がカクマク? でクッセツがあって水晶をっ通ってガラス体を通っていって?』
シルフは一生懸命説明をしているのだろう、だが……。
「…………」
メルは思わず黙り込んでしまった。
それもそうだろう、シルフが聞いてきてくれた事は素直に嬉しい。
だが、言っている事が何一つわからなかったのだ。
た、確かにライノさんも使ってる眼鏡はガラス……だけど、そのカクマクってなに? 屈折はわかるけど……。
そもそも眼の中にガラス? そんな訳ないよね……?
『それでモーマクに光が当たるとその光の色? と明るさが神経を通って頭に行って……見えるって言ってた!』
「う、うん……ありがとう」
胸を張るシルフに分からないとは言えずメルはどうにか笑みを保ちながら告げる。
しかし、まるで意味が分からない事は変わらず……唯一分かった事と言えば……。
「神経が駄目だったらそこを繋ぎ直せば良いって事かな? でも、そんなのどうやって……」
魔法を作るにはまだ情報が足りない。
それどころかますますユーリの持つ回復魔法以外で治せないのではないかと考え込み……。
「もしかして、聞いてくれたってリリアの瞳の事か?」
「う、うん……」
笑顔を張り付かせたメルはそう答えるが、リアスは溜息をつく。
『メル……ごめんね?』
シルフはしゅんと縮こまってしまっていた。
その事にメルは慌てて――。
「ち、違うのシルフは謝る事なんて――」
「謝るって、精霊が謝って来たのか? メルは顔に出やすい……そんな引きつった顔じゃ求めてる情報じゃないのは誰だって分かるよ」
「そ、そんな……」
何度目かになるその詩的にメルはがっくりと項垂れつつも、シルフへ瞳を向ける。
「シルフ、ごめんね……でも、聞いてくれてありがとう」
メルは今度こそ笑顔を浮かべてそう言うとシルフは笑みを浮かべた。
『うん! えへへ……』
嬉しそうに笑うとメルの頭に乗っかった。
それにホッとしつつもメルはリリアへと目を向け……。
「取りあえず、分かった事は目の構造とやっぱり神経が重要だって事だよね?」
「そうなのか?」
リアスの言葉に頷くメルは真剣な表情で語る。
「だけど神経が駄目だと……」
「とは言っても直接見た訳じゃないだろ? 神経がってのも聞いた話だ。一つ一つ試せないのか?」
「……う~ん」
私が分からなくてもカクマク? とかってお医者さんなら分かるのかな?
メルはそう考えるとすぐにベッドから降りようとし、身体を動かす。
「だ、大丈夫……無理しないで、お姉ちゃん?」
そんなメルを気遣うリリアだったが、メルは笑みを浮かべ頷いた所でそれが彼女に伝わらないのだとすぐに表情を曇らせる。
「大丈夫だよ、ちょっとお婆ちゃんの所に行ってくるね?」
そして、リリアも見れくれた老婆の医者の所へと向かう事を告げ、立ち上がろうとしたその時――。
「え?」
力を入れたはずの足にはなにも伝わっておらず、呆けた声を出すメルは前へと倒れ込む。
「『メル!!』」
床へとメルの顔が当たる間際、声を上げ駆けつけて来たリアスによって身体を支えられ事なきを得たのだが……。
「何やってるんだよ……」
メルは彼の呆れた声を聞くことは出来なかった。
今起きた事が理解できず。
ただただ言葉を失ったのだ……リアスに支えられ立ち上がるもやはり足には全く力が無いって無い。
その事を疑問に感じたのだろう、リアスは首を傾げ……。
「どうしたんだ?」
「……わ、わからない」
その質問にはメルは答えられなかった。
だが、何故立てないのか? その原因は理解が出来た。
だからこそ、その理由が何なのか口にした通り、分からなかったのだ。
おかしい、なんか身体から魔力を感じない? 何で、何で? 魔力切れしてるの?
だって私魔法を使ってない……やったのはドリアードに手伝ってもらっただけで……ううん、もしかしてアレも魔力を使うの?
じゃなきゃこれは説明できないよ。
でも、魔力切れだとしたら……なんで、起きていられるの?
彼女はそう思い浮かべつつ、窓の外を見る。
そこからは日の光が差し込んでおり――もう暗くはない。
メルは暗い時間に起きたのを覚えており……少なくとも半日以上は立っているだろう事も分かっていた。
それ位時間が経っていれば、魔力を使い切っても多少は歩けることもだ。
だが……。
「メル? 分からないって……」
「分からないの、ただ……魔力切れだとは思う……」
「……魔力切れ?」
リリアは首を傾げながらもほっとし、リアスも何処か安堵したような表情を浮かべる。
「なんだ、ただの魔力切れか……なら、俺があのお婆さんを呼んでくるよ」
「う、うん……お願い」
「ああ、いつも頼ってばっかりなんだ。ゆっくり寝ててくれ」
「うん……」
リアスのその言葉は素直に嬉しかったメルだが、ベッドに横たわらせてもらいながらも考える事は……。
こ、このまま動けなくなったりしないよね?
魔法を使っていないのに魔力切れを起こした事への不安だった。




