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92話 風の便り

 メルは痛みに耐え、イアーナの様子を探る。

 しかし、何かが見えた所で彼女は倒れてしまった。

 更にはメルは体温が落ち、仲間達は死に向かっているのではと心配する中、一人冷静にエスイルは対処をする。

 少年のお蔭でイアーナには不死者が居ない事が判明し、メルもまた無事であることが分かったのだった。

 翌日、メルはベッドの中でそわそわとしていた。

 その理由は勿論、イアーナやユーリ達の事であり……。

 シルフやドリアード達からの報告が来ていないのだ。


「だ、大丈夫かな?」


 そう思いつつ、身体を起こすとメルは思わず頭を押さえる。


「ぅぅ……大分時間……経ったはずなのに……」


 やはり、遠くの景色を見たのがいけないのだろうか?

 メルはそう思いつつ、それでもイアーナのゾンビ達がただの幻術である事を確かめることが出来たのは良かったと考える。

 そして、辺りを見回してみるが仲間達が居ない事に首を傾げつつ……それが彼女の不安を煽る形となった。


「と、とにかく早く、情報が欲しいけど……動くと頭が痛い……昨日の夜は平気だったのに……」


 回復魔法が頭痛にも効いてくれれば良いんだけど……効かないんだよね……。


 頭にそう思い浮かべた彼女は深く溜息をつき、そっと視線を窓へと向けた。

 丁度その時、扉が開けられ――メルは思わずびくりと身体を震わせる。

 当然、頭痛が彼女を襲い……。


「――っ!?」

「だ、大丈夫か!?」

「お姉ちゃん……」


 するとメルを気遣う声が聞こえ――。

 その主は……メルが良く知る男性リアスとその妹であるリリアだった。


「ぁ……ぅ……リアス、リリアちゃん?」


 メルが二人の名を呼ぶとほっと息をついた二人。


「……大丈夫か?」


 そして、メルの耳元で聞こえるリアスの優しげな声に思わず顔を赤く染める。


「だ、大丈夫……まだちょっと頭が痛いだけ……」


 本当はちょっとではなかったが、リアスを安心させるためにそう答えたメルはすぐにはっと表情を変え――。


「そうだ、窓を開けてくれない? シルフが入って来れないから……」


 風の通り道があれば入って来れるだろうが、やはり窓が開いてればその方が入りやすいのは当然だ。

 だからこそ、メルがそう頼むと――。


「分かった、リリア……メルを頼む」

「うん」


 リアスは頷き、リリアへと声を掛ける。

 その言葉にメルは不安そうにリリアの方へと目を向けると彼女はよたよたとした足取りで近づいてきており……。


「リリアちゃん、足元気を付けてね」

「……うんっ!」


 メルの言葉に嬉しそうに笑みを浮かべ頷く少女。

 彼女が丁度メルの所に辿り着いた時、髪を撫でる様に心地よい風が流れメルは窓の方へと目を向ける、するとリアスもまたメルの方へと目を向けており――。


「リリア、ありがとうな……メル、これで良いか?」

「うん、ありがとう」


 メルは彼にそう礼を告げる。

 そして、自身の近くに寄り心配そうな顔を向けるリリアの頭に手を乗せると――。


「リリアちゃんも……ありがとう」

「えへへ……」


 メルの言葉に嬉しそうに目を細めるリリア。

 それを見てメルは思い出す。

 メルも良くこうやってユーリ達に頭を撫でられていた事を……それが嬉しかった事を……。

 だからこそ……。


 連絡が無いのが怖い、もしかしてもう――手遅れになったとか?

 そうじゃなきゃ……こんなに連絡が遅れる事なんて……。


「お姉ちゃん?」


 メルの不安が伝わってしまったのか、リリアは不安そうな声を出し……。


「えっと、まだちょっと頭痛いだけだよ?」


 不安を取り払うためにそう告げるも――。


「メル、俺は言ったろ?」


 リアスにそう言われメルは首を傾げる。

 何を言われたというのだろうか? 思い出そうとし眉をひそめると……。


「顔に出やすいそう言ったろ?」

「……あ」


 確かにそう言われた事を思い出したメルは驚いた顔をし、すぐに引きつった笑みを浮かべる。


「それで、何で不安そうな顔をしてたんだ?」

「それは……その……」


 リアスに尋ねられ答えようとしたメルだったが、すぐに言葉を飲み込んでしまった。

 それもそうだろう……リリアが居るのだ。

 彼女は操られていたとはいえ、メルに傷を負わせ……メルの母ユーリへと何かを命じられていた。

 その事を気にしているリリアが居る場所で話すのに躊躇ってしまっていた……とはいえ、母が心配なのは変わる訳が無く……。


「実は――」


 メルが意を決して口を開いた時――。


『メル――!!』

「きゃあ!?」


 シルフの声が聞こえ、思わず悲鳴を上げるメル。

 その声に驚いたのだろうリリアは目を丸め――。


「っ!?」


 声も無く悲鳴を上げた。

 そんな彼女の様子に気が付いたメルは慌てて――。


「ご、ごめんリリアちゃん……」


 頭痛に襲われながらもリリアを気遣うメルだったが、やはり気になるのだろうその視線をシルフへと向け……。


「シルフ……ドリアードが知らせてくれたみたいだけど……」

『うん! あの後ドリアードが来てすぐに魔法の解除をしに行ったよ? メルが心配すると思ってユーリ達の報告を待ってたの!』

「ママ達の報告って……ってことは!」


 メルは表情を明るくし、声を弾ませる。

 すると、シルフは頷き――。


『うん、もう大丈夫だよ! 足を踏み入れると少しの間、幻を見せる魔法だったみたい』


 シルフの言葉に安堵をしたメル。

 だが、シルフの話はまだ続いていたようで――。


『後ね、ユーリに聞いておいたよ』


 シルフは満面の笑みを浮かべ、メルの周りを飛び回る。


「え?」


 メルはシルフの言葉の意味が分からず首を傾げつつ尻尾を大きく振り、一言を発した。


『うん! 実はね――』


 シルフが笑みのままその話を切り出し――。


「本当!? あ……痛たたた……」

「ど、どうした!?」


 メルは思わず声を上げ、頭を押さえた……だが、痛みに耐えるとリアスの方へと目を向け――。


「シルフが! シルフが……聞いておいてくれたの!」


 笑みを浮かべ彼にそう言った。

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