88話 デート?
メルは散々からかわれてしまったため、リアスの事をいつもより意識してしまう。
そんな時、メルを見てくれた女性医師が二人の元へと現れた。
彼女はどうやらリアスが気になる様でちょっかいを出すのだが、メルはそれを見て自分の中に黒い感情が生まれた事に気が付き、また彼女が嫌だと思うのだった。
街の中を歩きつつメルは先程の女性医師の事を考えていた。
あの人、なんで急に……リアスにあんな事を?
と、とにかくリアスをあの人と離れさせないと!? って私何で、何で……あんなに嫌な気分になったんだろう……。
そう思い地面を見つつ歩く少女は当然の様に……。
「メル!! 前見ろ前!!」
「え……? きゃぁ!?」
偶々前にあった樽に足を引っかけ転びそうになり、思わず目をつぶるメル。
だた、何時まで経っても倒れない事に首を傾げつつ瞳を開くと……。
「あ、あれ?」
彼女の身体は誰かに支えられており、疑問をその口から発する。
「あれ? じゃないって……」
「あ……」
呆れ声を発した少年に支えられてる事に気が付いたメルは赤くなり――。
「ご、ごごごごめん!?」
慌てた立ち上がろうとする。
「って!? 急に暴れるなって!?」
だが、リアスも無理な体勢で支えていたのだろう、彼女を支えられず倒れてしまい。
「いたたたた……」
「わ、悪い、大丈夫か?」
「だ、大丈……夫!?」
メルは目の前にある彼の顔に気付き素っ頓狂な声を出し、その声でリアスもメルの顔を見降ろした。
当然二人は見つめ合う事になり……。
「…………っ」
二人が大きな音を立て転んだからだろう、辺りの人々が集まって来た事に気が付いたリアスは慌てると……。
「…………わ、悪い直ぐに退く」
そう口にするとメルの上から退くのだが……。
「ぁぅ……」
メルは呆けたままで立ち上がろうとはせず。
「メル、立てるか?」
そんな彼女を気遣っているのだろう彼女の目の前には手が差し出され……。
「メル? おい! メル!!」
「あっ……ありがとう……」
少し大きな声で名を呼ばれたメルはようやくハッとすると礼を告げ、暫く差し出された手を見て迷うが……おずおずとその手を握った。
立ち上がり、服についた土を落とした所で彼女は気が付いた。
周りの人々が彼女達に注目しているのだ。
「早く食事にしよう」
「うん、そ、そうだね……恥ずかしいし……」
そう答えたメルに頷き返すリアスは再び手を差し出し……。
「え?」
「今日のメルなんだかボーッてしてるだろ? だから手を繋いでた方が安心できるって思ってさ」
「う、うん、あ……ありが、とう……」
再び彼の手を握ったメルはもう片方のの手を胸に押し当てつつ、半歩遅れてついて行く……。
「ここにするか」
暫く歩いた所でリアスは立ち止まり、そう言うとメルは首を縦に振る。
「メル? ここで良いのか?」
再び聞かれた彼女は同じように首を振り……。
「そ、そうか……」
どこか歯切れの悪い言葉ではあったがリアスは納得した様でその店へと入っていく……それもそうだろう、メルが見ていたのは地面。
店の方に一回もその瞳を向けてなかったのだから……。
リアスに促されるまま適当な席へと座ったメル。
すると誰かが来てリアスと何かを話しているらしいのだが、その会話はあまり聞こえておらず……
な、なんかすごい緊張する。
……私、本当に……リアスの事が?
でも、好きって簡単に言えないし……ううん、言えないからこそ……そうなのかな?
「お連れの方は?」
でも、そう考えたらなんて話かけたら良いのか分からないよ……。
「あ、あの~……」
「え? あ、す、すみません! え、えっと……」
メルは顔を覗き込まれた事でやっと気が付き、慌てて差し出された品書きを見て……。
「こ、これでお願いします」
「はい、では少々お待ちください」
笑みを浮かべて去って行く女性を見てほっと息をつくメル。
するとリアスは訝し気な瞳で彼女に視線を向け……。
「さっきから一体どうしたんだ?」
「ふぇ!? えっと……あの、リア……ス……」
彼に問われ咄嗟に何かを言いかけるメル。
だが――。
「ん? 俺がどうしたんだ?」
「い、いやそうじゃなくてリリアちゃん……リリアちゃんの目がどうにか出来ないかなって……」
ぅぅ……ごめんリリアちゃん……。
「ああ、助かるよ……でも、それは考えてくれてるんだろ?」
「え? あ……うん、勿論だよ!」
罪悪感を感じる彼女はリアスに微笑みかけられ、心臓の鼓動が早くなるのを感じ彼女もまた笑みを浮かべ答えた。
「でも、今日のメルは途中かおかしいから、どうかしたんじゃないか? 確か……あの医者に会った時からか? いや防具屋で離れた後か?」
「え……あ、それはその……」
だ、だって……あのおばちゃんも私がリアスのこと好きだって……。
それにお医者さんは何か嫌……なんか、リアスが取られる……取られ? なんで私そんな事を……ううん、そう思うって事はやっぱり……。
「あ……えっと……その、私が……」
「ん? メルが?」
「え、ええとその……」
メルは何かを言いかけ、暫く黙り込んでしまう。
そして、その口をようやく動かしたのだが――。
「……ううん、なんでもない」
そう笑顔で告げた。
「そう、か?」
「うん!」
い、今言うのはちょっと怖いかな?
今は気持ちが分かっただけでそれだけで十分だよ、ね?




