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87話 からかわれるメル

 リアスの防具を買いに向かった二人。

 その装備も決まり、リアスは店主と装備に関して打ち合わせをしに行く……。

 メルは店内で待つことになったのだが……呼び出された女性に質問攻めにあうのだった。

 メルが顔を赤くしながらも、女性に出された椅子に座りリアスと待つ。

 ……どのぐらい経ったのだろうか?


「で、彼氏との馴れ初めはどんなんだったんだい?」

「だ、だから……あの……」


 メルは質問攻めになっており、しどろもどろになり女性に答えられずにいると……


「ははははははははは! ごめんよお嬢ちゃん」

「……へ?」

「あんた反応が可愛いから、つい!」

「………………」


 今までのそれが冗談だと分かった彼女はがっくりと肩を落とし大きな溜息を漏らす。

 すると、女性は顔を綻ばせると……。


「でも、お嬢ちゃん?」

「は、はい……」


 彼女は先ほどの事を思い出し、その声は何処か震えている。


 ぅぅ、この人ちょっと苦手かも……。


 メルのそんな気持ちを知ってか知らずか、女性は笑みを顔に張り付かせたまま。


「好きなら好きで、さっさと胃袋とっ捕まえときな?」

「す、すすすす!? それにい、胃袋って!?」


 え? え? す、好きってそんな私!?

 それに胃袋? 胃袋って何!? 好きと関係あるの!?


「男ってもんは旨い食事を作る女に惚れるもんさ」

「ほ、惚れるって……」


 あ、でも……ユーリママはフィーナママの作るガレットが好物だって言ってた。

 ユーリママも料理は上手だし……ん? って私の両親の場合ってどっちも女性だしそれ当てはまらないよね? ってそうじゃなくて!?


「だから、私とリアスは――!」

「否定するのは自由だけど、後で後悔したって遅いよ」


 こ、後悔って……つまり、リアスが他の人と付き合うって事?

 でも……それはリアスの自由だし――。


 女性にそう言われ、メルは黙っていると奥からリアスが帰ってきて――メルは彼に気が付くと立ち上がる。


「悪いメル、待たせた……」

「ううん、そんなに待ってないよ」


 そう答えるメルはリアスと目が合うなり顔が熱くなった気がし、そっと目を逸らす。


 へ、変な話してたから、恥ずかしいよ……。


「メル?」

「な、なんでもない! 何時頃完成するの?」

「ああ、あれぐらいなら明日の夕方には出来てるらしい」

「そっか、そうしたらまた明日来よう?」


 そう告げるメルにリアスは頷きつつも首を傾げ……。


「それは良いんだが、何でメルは目を背けたままなんだ?」

「な――!? その、なんでもない……から……」


 指摘された彼女はその顔を更に赤くした。


 ぅぅぅぅ……目が合わせられないどころか、顔見れないよ。

 それに……顔から湯気が出そうなくらい熱く感じるよぉ……どうしちゃったんだろ、今までここまでじゃなかったのに……。


「ああ、それはね――」


 メルが困惑する中、その声はやけにはっきりと聞え――彼女はビクリと身体を震わせるとリアスの服の裾を引っ張り――。


「お、おい!? メル?」

「行こ! 早く――!」


 そう言ってリアスの手を取ると防具店から去って行く、背中越しに……。


「仲良くするんだよ!」

「………………」


 そんな言葉を受けたメルはその足を更に速める事になった。





 防具屋を出て暫く歩いた所、メルはやっと立ち止まるとほっと息をつく……。


「急にどうしたって言うんだ」

「え、あ!?」


 そこで彼女はようやく彼の手を放す。


「ご、ごめん……」

「いや、良いんだけど……」


 ぅぅ……つい、手を握っちゃった。


「それでこの後どうする?」

「え?」


 メルは思いがけない言葉を聞き、思わず聞き直す。

 それもそうだろう、この後の事など彼女は考えてなかった。

 あえて言えば後は帰るだけなのだが……。


 もうちょっと、もうちょっとだけ……って、何で私……。


 自身の心に浮かんだ言葉に今日何度目になるのか分からない疑問を浮かべたメル。

 そんな彼女の思いを知るはずもないリアスは笑みを浮かべると――。


「腹が減ったし、そろそろ飯でも食いに行くか?」

「え?」

「ん? メルは腹減って無かったか……」

「ううん、行こう!」


 リアスの言葉がやけに嬉しく感じた彼女は満面の笑みで告げる。

 メルの返事で二人は歩き始めようと足を動かしかけた時――。


「あら! ボウヤじゃない!」


 やけに嬉しそうな女性の声がそこに響く――そこに居たのは数日前の夜、メルを診てくれた医者の女性だ。


「ああ、あの時はありがとうございました」


 メルは頭を下げ彼女にそう言うと――。


「あら、貴女も居たのね? 傷は大丈夫そう?」

「はい! お蔭さまで……」


 そう答えるメルは近づいてくる彼女を目で追う。

 何故か彼女はリアスの傍に来ると――。


「そうそう、ちょっと話をしたいのだけど――」

「は、はぁ……」


 そして、彼の手を取ろうとし、避けられるとその身体を彼へと寄せた。


「あ、あの……」

「なにかしら?」


 何か嫌な気持ちが湧き出て来るようだったメルは彼女へと話しかけるが、笑顔で尋ねられると言葉を詰まらせる。


「話ってなんだ?」

「ぁ…………」


 変わりに答えるリアスの言葉に呆けた声を出すメル。

 そんな彼女の目には一瞬意地悪そうに笑みを浮かべた女性が映り……。


「ちょっとした世間話よ」

「メルの怪我やリリアの瞳の事と関係はない訳か……」


 リアスの質問に頷く女性――すると彼女は――。


「どうかしら? そこに美味しいお店があるの、二人で――」


 あ、なんか嫌だ……。

 嫌な気分になる……。


 女性の言葉に黒い何かを感じ、メルは自身の胸の前に拳を押し当てる。

 その間も二人の会話は続いているのだろうが、それはやけに遠く聞こえ――。


「メル!」

「――――っ!?」


 リアスの声に身体を震わせ、恐る恐ると彼の顔を覗く……。


「あ、いやごめん……」

「ぁ……ぁ……リアス?」


 やっぱり二人で行くのかな? 仕方ないよね……あのお医者さん美人だし……私はまだ子供だし……。


「でも、そんなビックリする事じゃないだろ?」

「……っ!」


 メルは彼の言葉に胸を刺されるように痛みを感じ、女性医師を睨む。

 するとそこには彼女を睨む医師が居て――。


「……メル? ど、どうしたんだ?」


 ぅぅ……でもこの人、リアスと歳は離れてるのに!


「メ、メル?」

「ぅぅぅ……」


 リアスの声には答えず、まるで犬が威嚇するような声を出すメル。

 当然そんな彼女を始めてみるリアスは引きつった笑みを浮かべ――。


「行かない……のか?」


 と呟いた。


「え?」

「だから、飯……さっき行くって言ってたろ」

「え? でも……」


 リアスの言葉で一旦は女性から視線を外したメルはその瞳をまた女性へと向ける。

 先程と変わらない女性は小さくなにかを呟いており……。


「何でこんな子供に……若ければ落とせるって思ったのに……」

「……っ!!」


 それはメルの耳でなければ聞こえなかっただろう声であり、その証拠にリアスは――。


「何か、言ったか?」

「なんでもないわよ?」


 すぐにその表情は笑みへと変わる。

 だが、言葉を聞いたメルはその笑みの裏にある顔が見えるようで……。


「行こう、リアス……」


 自身を助けてくれた女性ではあると理解しつつも、医者を怯えるような瞳で見つつリアスへとそう告げた。


 その背中を見送る女性の顔が何処か悲しそうだったとは知らずに……。

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