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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
4章 犠牲者は追手に
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82話 憲兵の元へ

 傷が開いたメルを部屋へと送り、リアスは憲兵の元へと行くことにした。

 宿の主であるアイビーも共に行くことになるのだが……果たしてその話は聞いてもらえるのだろうか?

 部屋へと戻ったメル達。


「メル! 大丈夫か!?」


 すると心配そうにシュレムが駆け寄って来た。

 彼女はすぐにメルの身体を確かめる様に触り――。


「ちょっとシュレ――っ!?」

「メ、メルちゃん!?」

「「メルお姉ちゃん(お姉ちゃん)!?」」


 シュレムが傷に触れたのだろう、苦悶の表情を浮かべたメル。

 そんな彼女を心配するライノ達……。


「だ、大丈夫……」


 彼らを心配させまいとメルはそう答えるのだが……。


「いや、どう見ても大丈夫って感じじゃないぞ?」

「どうやら傷が少し開いたみたいだ……」

「傷だと? リアス! お前何でそんな事になったんだよ!!」


 彼の言葉に怒りをあらわにするシュレム。


「ち、違うの、魔物が二匹も出て来て……リリアちゃんも攫われかけて仕方なくだよ……」

「……でもさ!」


 そんな彼女をメルは慌てて止めると――。


「医者を呼んでくるよ、夜でもやっている所があるはずだ」


 申し訳なさそうにリアスはそう告げ、それに続く様にアイビーも同じように表情を暗くしシュレムへと声をかける。


「元々憲兵を呼びに行く訳だし、医者なら私が知ってるから、任せて」

「ほら、シュレム、アイビーさんもこう言ってくれてるから、ね?」


 メルはシュレムをなだめる様にそう言うと、彼女は腕を組み顔を逸らし――。


「すぐに頼む、すぐに、だ!」

「ああ、分かってる。じゃ、すぐに行ってくるよ」


 シュレムの言葉に頷いた彼はアイビーを連れ扉へと向かって行き、メルはその背に声を掛けた。


「シュレム、気を付けてね?」

「大丈夫、いざとなったらメルから受け取った物を使うからさ」


 振り返り、笑みを浮かべたリアスの顔を目にしたメルは少し顔を赤くし――。


「う、うん……本当に気を付けてね?」


 思わず視線を彷徨わせながらもリアスへと念を押した。






 宿の外へと出たリアス達は夜の街の中を歩く……。


「それで……頼みがあるんだけど」

「分ってる、先に医者を呼びたいんでしょ? 憲兵の所に行くと遠くなってしまうから先にそっちに」

「助かるよアイビーさん」


 リアスはアイビーの案内の元、一つの建物を前にし、アイビーはその中へと入って行く……それに続きリアスも中へと入ると……。


「ここがこの街の夜にやっている医者の中では腕利きよ?」


 そう言いながら彼女は一人の女性へと手を向ける。

 彼女は照れたように笑いつつも……。


「そんな、腕利き何て本当の事を言わないでほしいわ」


 何処か自慢げに言うと――。


「それで……僕は何処が痛いのかしら?」


 やけに艶のある声色と瞳を持ち、リアスへと近づいて来た。


「ああ、俺じゃなくて俺の仲間が……昼に処置をしてもらったんだけど、その傷が開いてしまったんだ」

「あ、あら……そう?」


 何故かガクッと転びそうになった女性医師にリアスは首を傾げる。

 すると医師はアイビーへと耳打ちをし――。


「ねぇ、私そんなに魅力無くなっちゃった?」

「いや、自分より遥か下の子狙うの止めなって……」


 二人の会話はリアスに聞こえ無い物であり、疑問にさらに首を傾げた彼は……ハッと何かに気が付くと――。


「すまない、何か用事があるんだろうが、早くしてもらえないか? メルの傷が心配だ」

「……え、ええ……そうね?」


 リアスの言葉に何故か微笑んだアイビーとどこかぎこちない笑みを浮かべた医師。

 二人を連れ一旦宿へと戻ったリアスは医師にメルの傷を頼むとアイビーと共に今度こそ憲兵の所へと向かうのだった。





「だから、いきなりうちの宿にね魔物が出たのよ、人型の……新種みたいでさ」

「……新種ですか」


 アイビーの言葉に憲兵は真剣な表情で答える。

 憲兵と言えば街の平和を守る者達……だからといって全員が全員ちゃんと取り合ってくれる訳ではない。

 大きな街ならそれだけ憲兵が怠ける事だってあるのだ、だがリラーグでもそうだったがよそ者の上、見た目が放浪者のリアスの言葉を聞いてくれた時の事を思い出し、祈る様に憲兵にこれまでの経緯を告げる。

 そして、その思いは通じたのだろうか? この街の憲兵も――。


「それでたまたま居合わせた、知り合いの娘さん一行が助けてくれたと……君はその代表かい?」

「いや、代表なんて偉そうな者じゃない、ただ今動ける中でアイビーさんを庇えて自由が利くのは俺だけだったんだ」

「そうですか、なんにしても住民の危機を救っていただきありがとうございます」


 リアスがボロボロのフードローブを見に付けているのは変わっていない。

 自分でも怪しいと思う彼と一緒に来たアイビーの言葉を信じる憲兵に感謝しつつ、リアスは――。


「それと、この頃街に入った奴で怪しい奴は居なかったか?」

「へ? ……あ、いや……居ません」


 彼の言葉に憲兵はしっかりと彼の姿を捉えるがすぐに表情を崩し、しどろもどろになりながら答えた。


「いや、良い……そうか、居ないか」

「すみません、そういう訳では」


 リアスの言葉に含まれた意味に気が付いたのだろう憲兵は慌てて訂正をする。


「気にしないでくれ、この格好は自分でも怪しいと思う……なにせ人が良い仲間にも最初は泥棒って思われたからさ」


 彼は自嘲気味に笑いつつ、自身の姿を見下ろし――。


「……闇に紛れる時を考えてたんだけど、普通のも買った方が良いか……」


 どこか寂し気にそう呟いた……。


「本当にすみません、と、とにかく今は宿に……」

「そうだな、頼めるか……出来れば護衛もつけてくれると助かるんだが……」

「はい! それは勿論ですよ……と言いたい所なんですが、人手が足りず……」


 最初ははっきりとした声を出した憲兵は次第に声をしぼめていき、申し訳なさそうな表情を二人へと向ける。

 リシェスはそれなりに大きな街、詰所は何個かあるらしいがそれでも人手が足りないのだろうか?

 その表情は嘘を言っている様には見えず――。


「分かった、じゃぁ回収だけ頼む……このままじゃ宿の主人アイビーさんに悪いからな」


 リアスはそれだけを口にした。

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