81話 魔物の正体
部屋の中に連れ去られたリリアを助けるためメルは魔物と刃を交える。
傷を負ってはいたもののメルは見事に魔物を討ち取ったのだった。
無事リリアを助ける事は出来たのだが……。
「な、なに?」
その変化はメルの方でも起きていた。
倒したはずの異形はその姿を変え少女の姿へと変わる。
それはメル達がすれ違った少女の一人で……。
「なん、なの?」
その現象にメルは一人驚いていた。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
「……なんでも、ないよ?」
なんでわざわざこんな化け物に?
人の姿の方が動きやすいはず、事実もう一人は普通に……。
決して広い部屋という訳ではなく、そんな部屋で大きな化け物へと変身で身を変える。
どう考えても悪手としか思えないメルは困惑をしつつもリリアの手を取り部屋を後にする。
「メル無事だったか!?」
「う、うん大丈夫だよ」
メルが部屋から出て来るとリアスとアイビーが彼女達へと駆け寄ってきた。
片隅には見覚えのある男が倒れていて……。
「もしかして……あの人……」
メルは先程見た少女を思い出し指を向ける。
「ああ、倒した途端姿が変わってな……」
メルの向けた指の先をちらりと見た後すぐにそう答え……顎に手を当て少し思考するそぶりを見せると……。
「何だってあんな大きな化け物に……」
「そうだよね、態々変身する必要はないのに……」
メルとリアスはそう声を漏らすとアイビーも頷き……。
「倒してから変化が解けたって事は恐らく魔法だからね、二人の言う通りわざわざ化ける必要が無いはず……」
だが、三人が考える中……少女はメルの腕に抱きつきながらその口をゆっくりと動かした。
「あれじゃないと……入れない」
「……え?」
リリアは何を言っているのだろうか? メルは首を傾げ彼女の方を向く。
「転移魔法、使うには……異形じゃなきゃ使えないって聞いた……」
「転移魔法って!?」
その言葉にメルは思わず声を上げる。
当然だろう、転移魔法と言えば彼女の祖母が作った物だ。
そして……それを使う者は祖母ナタリアだけではない事をメルは知っていた。
「じゃぁ、本当にタリムの王の配下が関わってるって事?」
「なんでそう言い切れるんだ?」
「だって、転移と言ったらそうなるよ……一回ナタリアの式を見せてもらったけど魔法を学んでいてもアレはそうそう作れる物じゃないの」
いや、正確に言うと現状転移魔法の式を作れるのはナタリアだけ……。
世界中を探せば一人二人は居るかもだけど、作り出したなんて考えられないよ。
「………………」
「メル? どうしたんだそんな怖い顔をして……」
「ううん、とにかく皆の所に戻ろう? アイビーさんも一緒に来てもらえますか?」
「そうだね、憲兵に連絡をしてからすぐに向かうよ」
彼女がそう言うとメルは焦った様に身を乗り出し――。
「それなら私もついて行きます、一人じゃ危ないですから」
「いや、俺が行こう」
メルの言葉の後すぐにそう答えたリアス。
「で、でも……」
「平然を装ってるけど、傷開いたんじゃないか?」
「……ぅ」
それは図星だったのだろう、メルは思わず呻き声のような物を発し……アイビーはその瞳を丸め――。
「ちょ、だ、大丈夫なの?」
「へ、平気ですよちょっと痛いだけで……」
メルは心配させないようにそう言うが……。
リアスの言う通り、傷……開いてるかも? ぅぅ……ちょっとまずいかな?
「でも、その……お留守番してるね?」
「ああ、そうしてくれ……」
余程心配だったのだろうメルの言葉を受け、リアスはその表情を優し気な物へと変える。
だが……。
でも、あの魔物が来ないとは限らない。
見かけた三人は此処に来た……でも、他にもいるかもしれないし……そうだ!
「リアス、これ持って行って?」
メルは何かを思いつき、二つの石を彼に差し出す。
それは――。
「何かのマジックアイテムか?」
「うん、封光石と封水石だよ、封水石は本来水の確保のためなんだけど……あの黒いミミズは水に寄る習性があるみたいだから」
「そうか、ありがとうメル」
リアスに礼を言われたメルは思わずその表情をにへらっとしたものにして頬をポリポリとかく。
「う、うん」
少し恥ずかしいと言った風にそれだけ返す。
「なんか、若い頃を思い出すわ」
「「へ!?」」
そんな様子を意味ありげな笑みで見ていたアイビーはそう言葉にし……。
「でも、そっちの子も蔑ろにしたら可哀そうだよ?」
「……?」
突然、話を振られたリリアは首を傾げ――。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんがくっつけばお姉ちゃんと一緒に居れる」
「リリアちゃん!? ま、なななななな何を言ってるの!? っ!! ~~~~!!」
予想していなかったところからの攻撃にメルは狼狽をし声を上げる。
すると傷に響いたのだろう顔を歪めた。
「リリア、あんまりからかうな……メルに迷惑だぞ……」
顔の赤くなっているリアスは妹へとそう伝えるが、リリアは意味が分からないと言った風に首を傾げ……彼の言葉を聞いたメルは少し不機嫌そうにしつつ。
「め、迷惑って訳じゃ……」
思わず頬を膨らませてそう呟くが……。
「どうした?」
「なんでもないよ?」
聞こえなかった様子のリアスはそう言うが、メルはにっこりと笑みを浮かべ彼へと伝える。
それは彼女の母であるフィーナが怒る時と似ていたが、彼女がそれに気が付くことは無く……。
「メ、メル? もしかして怒って、る……のか?」
「怒ってないよ?」
「お兄ちゃん……鈍い……」
「え?」
明らかに怒っているメル、だがその理由が分からないのだろうリアスは妹に鈍いと言われても気が付くことは無く、呆れ顔のアイビーは二人に近づくと――。
「男は鈍いもんなんだよ……だから、女が苦労するのさ、メルちゃん頑張んな」
「だ、だから私は……」
その言葉には反論を仕掛けたメルだったが、何故か口にするのは嫌で思わず口ごもると……。
「こっちも鈍い、みたいだね……」
アイビーはそう言ってやれやれと言った表情を浮かべた。
「と、とにかく今は皆の所に行こう? リアスはアイビーさんをお願いね!!」
そして、このままでは埒が明かないとメルは感じたのだろう半場叫ぶようにそう言うと歩き始め。
「メル!」
部屋に向かおうとした所、リアスに呼び止められた彼女は振り向かないまま……。
「だ、だから怒ってな――」
そう答えるが、続いて聞こえたリアスの言葉は――。
「部屋はこっちだぞ?」
「っ~~っ~~!?」
メルはその顔を赤くしくるりと方向を変えて歩き始めた。




