71話 不安な道のり
リアス達と合流を果たしたメルとリリア。
一行は追手を欺くためにもすぐには宿に戻らないことにした。
果たして追手はメル達を未だつけているのだろうか? そして何故リリアが狙われているのだろうか?
リアス達と合流したメルとリリアは仲間を連れ街の中を歩く……。
さっきは私が考え事をしてたから逸れたんだし、今度はしっかりついて行かないと……。
メルは先程の事を思い出し、一人意気込むと仲間達の後を追う。
時折、彼女と手を繋ぐリリアからの方へと目を向けるが、彼女は多少震えて入るものの大きな反応は見せない。
内心ほっとしつつ街の中を歩き回るメル達だったが……。
「……こ、来ないな?」
暫く歩いた所でシュレムは立ち止まり、苦笑いをするとそう呟いた。
「なら、帰るか? オイラ腹減ってきたし……」
カルロスは自身の腹を押さえ、そう提案するもリアスはゆっくりと首を横に振る。
「まだ、歩き始めたばかりだ……もう少し様子を見た方が良い」
「そうね、狙われてるなら対処をしないと夜も安心して寝れないわ」
「まぁ、そうなんだけどな? でも、こうも襲って来ないとな……」
苛立った様子のシュレムは辺りを見回しているが、特に誰かがすぐに襲って来るという気配もない。
平和な街そのものであり、その事が気に滅入ったのだろう……。
「案外オレにもメルにもばれて、帰ったんじゃないか?」
「それは無いよ……」
それを信じられればどんなに良い事か、とメルは思いつつも首を振り、耳と尻尾を垂らす。
帰っていることは無いだろう、それが彼女には分かっていたからだ。
「無いって……現に出会わないだろ?」
「でも、皆と合流する前に二人の女の子? と出会ったの、私達を探してるみたいだったし……」
彼女はそこまで言うとリリアの方へと向き、握っている手へと力を籠める。
「娘の回収が最優先とか何とか言ってた……多分、リリアちゃんの事だと思う……」
それに、私達を襲って来た人達も利用価値があるとか言ってたし……それなのに大人しく戻るなんて事はしないと思う。
現にあのミミズをこの子に近づけたんだ……間違いない。
メルは険しい顔でそれを考えると、彼女のその表情を覗き込んだシュレムは少し笑みを浮かべ――。
「分かったよ、そうだな……何かあってからじゃ遅い、今なら傍で守ってやれるし、もうちょっとうろつくか……」
メルは顔を跳ね上げると嬉しそうに笑みを浮かべ答えた。
「うん、そうしよう」
だが、いくら歩いてもメル達を襲う追手の姿は見えず。
「な、なぁ腹が減って辛い……痛くなってきた……皆は大丈夫なのか?」
カルロスの訴えで一行は足を止める。
「確かにカルロスの言う通り、俺もそろそろ腹が減ってきたな……」
「不安は残るけど、この時間までに襲って来ないって事は戻っても良いかもしれないわね」
ライノの言葉を合図にしたかのようにメルの元へと注がれる視線。
確かに今日一日ずっと歩いてたのに襲って来なかった。
人が居る所、居ない所……色んな場所に行っても全く……うーん、本当にシュレムが言った通り? でも、そんなはず――。
「なぁメル、これ以上は暗くなるしアイビーさんも心配するって」
「そう、だね……うん、戻ろう、か?」
メルがそう言うと仲間達は頷き、その足は宿へと向かう、だが……。
リリアちゃんも何も言ってこなかった……だから、ここまでは何も無かったんだと、思う。
だけど、なんだろう……不安がずっと残ったまま。
何も無ければ良いんだけど……。
メルの不安を知らず、一行は宿へと向かう。
しかし、追手はやはり来ず……無事宿へたどり着けたのだが……。
「ん? メルちゃん今度は皆と帰ってきたの?」
店主のアイビーは笑みを浮かべメル達へとそう告げる。
「え……帰ってきた?」
だが、当然メルは帰った覚えはなく……。
「どうしたんだい? 随分前に忘れ物したって言ってたじゃないかい」
その言葉にメルは思わずリリアを庇う様に立ち辺りを見回し始めるのだが――。
「大丈夫……」
「わ、分かった……」
少女の言葉を聞き安堵した。
「それにしても、メルちゃんが一回帰って来たってどういう事なのかしら?」
「どういう事も何も言葉通りとしか言いようがないよ」
「でも、メルお姉ちゃんは宿に戻ってないよ?」
エスイルの言葉にメルを含める仲間達は頷き、アイビーは驚いた顔をした後ににやりと顔を歪ませると――。
「さては私をからかってるね? メルちゃんは確かに昼間、一人で帰ってきたのったくもう……そんな遊びはいいから食事の時間だよ」
「その、言いにくいんだが……」
笑うアイビーに苦笑いを浮かべたリアスはメルの方へと向き、彼女もまた似たような笑みを浮かべた。
「なに? 嫌いなもんでも……」
「私、方向音痴なんです……来たばっかりの街じゃ一人で歩くのは……まず無理です、迷って帰ってこれない自信があります……」
「へ……?」
さっきはシルフが知っている道を通って来れたけど、覚えておいてくれないと戻ってこれない。
そうじゃなくても、私は現にここに居るし、私が戻ったって言うならそれは――でも、なんで?
忘れ物を取りに来た? でも、私達は荷物を持ってる……首飾りは置いてくるなんて事はしないし、後貴重な物と言ったら……
私の腰にあるアクアリム位しかない、他に何を……?
「じゃ、じゃぁ何かい? 私はまさかまんまと騙されたって事かい?」
「……だろうな、オイラ達もシュレムが居なければ疑問を感じつつもあれがメルだって思ってただろうし……」
「なんてこったい……悪いけど食事の前に部屋を確認してくれるかい? 何か無くなってると思うし弁償はするよ」
頭を抱えるアイビーは申し訳なさそうにそう言うとどさりと椅子へと腰を掛けた。
メル達は彼女に言われた通りに部屋まで行く事にし……それぞれの部屋に置いて来た荷物を確認し始めた。
「でも……貴重な物なんて置いて行ってないよな?」
自身の荷物を探りながらシュレムはそう呟き――荷を確かめるが――
「というか、オレは貴重な物なんて持ってないんだよな……盾以外は」
「あはは……私は大事な物は持って行ってたから……うん、何も盗られてない……」
まぁ、アクアリム以外で大事な物ってリボンと髪飾り……それにお財布位だし、それは持って行ってるから問題はない……残してた食料や薬が盗られるのは困るけど……。
「別に置いてある物にそれほど大事な物は……」
そもそも最優先って言ってたリリアちゃんの事は何で放ってここに?
それに鍵だってかかってたはずなのに……。
「うーん……一体なにが目的なんだ……」
「分からない……ここに来たって事は何か理由があるのは確かなんだけど……」
首を傾げるメルの瞳に映ったのは未だ調べられていない鞄。
「確かリリアちゃんの鞄もお財布以外に大事そうなものは無かったはず……ってリリアちゃんの鞄?」
相手が私に化けてまで宿に来た理由……忘れ物を取りに来たって言ったって事は何かを持って行った。
でも、大事な物は全部私達の手元にあった……それでも取りに来たものってもしかして――。
「リリアちゃん、ごめんね?」
メルは鞄の持ち主に謝るとすぐに彼女の鞄の中を確かめる……そして――。
「手紙が無い……でも、何で手紙? あの手紙にはなにが書かれてたの?」
無くなった物を確認し……疑問を浮かべた。




