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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
4章 犠牲者は追手に
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69話 魔物か、人か……

 メル達の目の前に現れたリアス。

 それはリアス本人ではなく人でも魔物でもないものが化けた姿だった。

 一体何者なのか? そう思うメルの傍で怯えるのはリリアと言う少女だった。

「ひ、ひぃぃぃぃ!?」


 偶々その場に居た住人の叫びの中、メルはリアスに化けていた少年の手にある筒から少し見えるミミズへと目を奪われていた。


 確か、お医者さんが言ってた通りだと動物を凶暴化させるっていう話だったよね? それに……。


 メルは怯え縮こまっている少女へと目を向けず、護る様に抱きしめる。


 リリアちゃんの耳から出てきたって言うのも黒いミミズ……じゃぁ、この人が……。

 でも、人? じゃない……こんな種族聞いた事も見た事も無い。


「貴方は誰? 人間に見えるけど……」

「失礼だな、人間だよ……」


 流暢な言葉使いで喋る少年は表情一つ変えることは無く、その手に持つ黒いミミズを見る。


「それにしても、これが気になっている様だな」

「…………ッ」


 メルの心中を察したのだろう、少年はミミズを見せつけるように前へと出す。


「こいつは衝撃を受け続けると出て来ちまうんだ……入れ直さないとな?」

「入れ……直す?」


 どういうこと……って……まさか――!!


 言葉の意味にはっとした彼女は慌ててリリアへと瞳を向け――彼女の身体を見回す。

 だが、その身体にはどこにもミミズは居らず……ほっとしたのも束の間、それは服の中から現れた。


「――っ!!」


 間一髪それに気付けたメルはミミズをリリアから振り落とすと彼女と共にその場から離れ――再びその瞳を男へと向ける。


「――――っ!?」


 だが、男の顔は歪んでいて――どういう事か彼女が考える前に何者達かの気配が辺りを包む。

 その異様な気配に思わず振り返ったメルはその瞳を丸め――。


「……え?」

「やぁ、また会ったね?」


 先程メル達を助けてくれたはずの優しそうな青年は――


「君は要らないな、そのお嬢ちゃんだけ返してもらうよ?」


 先程メル達に絡んできていた男達を従えていて、その表情は笑みを浮かべているのに恐怖すら感じる物だった。

 以前の彼女であったら、彼らに対し絶対の自信を持ち挑んだだろう……だが――。


 か、囲まれてる……それにこの人達も筒をを手に……あの中にはミミズが居るの? どうしてそんなにリリアちゃんに拘って……。

 ううん、そんな事考えてる暇はないよ! どうにかしてこの場を――何か、何か…………あれが寄生をして狂わせる生物なら……確か……。


「さて、同胞は返してもらうぞ?」

「お、お姉ちゃんっ!!」


 近づく男達、周りの住民は逃げ惑うか見て見ぬふりをするだけでメル達を助けようとはせず……リリアはその身に迫る危機に涙声でメルを呼ぶ――。


 何か、何かあったはず思い出さないと! 確か、元となった生物は――。


「お姉ちゃん、助けて――っ!!」


 迫りくる手を感じ取り恐怖を抱いたのだろう、少女は叫び――。


「水っ!! 撃ち放て水魔の弓矢、ウォーターショット!!」


 メルは魔法を唱え、自身達の周りにそれを撒き散らす。


 確か、ユーリママが寄生した虫は大きくなると寄生したモノを操って水に飛び込ませるって言ってた……お願い!


「……ぷっはははははははははは、なんだよ魔法が使えると思ったらとんだ失敗じゃないか!! お前は母親と同じ出来損ないって事だな!!」


 リアスへと化けていた少年は笑い、メルを恐らくはユーリを馬鹿にしたのだろうが、彼女はその言葉を聞き逃すことは無く一つの疑問を感じた。


「ママと同じ?」


 そして――。


「何で貴方がママが魔法が苦手だって知ってるの?」


 その事を尋ねるが、当然答えはかってくるはずもなく……。


「んぁ? それを言うはずが無いだろ? あえて教えてやるなら……お前らは敵だって事だ」

「…………っ」


 メル達へと迫る男の手からは黒いミミズが放たれた。


「いやぁぁああ!!」


 リリアはそれに怯え、より一層大きな声を出す……が――。


「……ギャァァァアアアアアアア!!」


 更に大きな声が響き渡り――。


「なっ!?」


 数人の男の耳からは黒いミミズが這い出てきているではないか、それに驚いた少年と青年は瞳を丸くし――その光景に釘付けとなっていた。


「今だっ!」


 その隙を逃さず、鞄へと手を入れ布を引っ張り出した彼女は口早に詠唱を唱え始め――。


「我らは求む、視認させぬ身を数多な危機から逃れる術を――」

「チッ!! 何を――具現――」


 それに気が付いた少年はそれを口にし始めるが時すでに遅し――。


「牙を持たぬ物を覆す力を――クリアトランス」


 二人の姿は景色に溶けて行く、そして――。


「ディ・スペル」


 少年の魔法は唱えられたが、何も起きず。

 その場には静寂と水に飛び込む黒いミミズが立てる音だけが響いていた。


「……き、消えた? 噂の転移魔法か!!」


 少年が狼狽する中、青年は表情を崩し苛立った様子で告げる。


「チッ!! あいつらを呼べ! リリアの奴にはまだ利用価値がある!! 探せ!!」

「分ってる……今声を掛ける――」


 あいつら? もしかして、リアスに化けてた様に私達に?

 それなら少しは時間を稼げるかもしれない……でも、あっちにはシュレムが居る……きっとすぐに分かってくれるはず。

 とにかく今はみんなと合流しないと……この怪我じゃ武器はまともに扱えそうもないし。


 メルがそう思いシルフへと目配せをすると――。


「おねえ……むぐぅ?」


 腕の中から不安そうな声が響き、彼女は慌てて彼女の頭を胸へと抱き寄せる。


「しー」

「むぐ……」

「この魔法は声までは消せないの……だから少しの間、静かにしてようね?」


 そう、小声で少女に告げ、彼女は改めて宿へと向かうのだった……。


 あの人達とリリアちゃんを操った人……ユーリママと何か関係があるの? ママは大丈夫なの? あの手紙……中身を確認した方が良いかもしれない。


 そんな不安を抱えながらメルは足を速めた。

 どの位歩いたのだろうか? 目の前からは布をかぶった二人の影が見え――メル達はその二人へと当たらない様に移動する。

 狭い通路だった事もあり、二人が去るまで待つ事になったのだが――。


「――――っ!!」


 その内の一人がメル達の方へと向き――。


「……どうした?」

「いや……今見られてた気がしてな」


 そう言ってメル達の居る方へと手を伸ばし――。


「早くしろ、あの娘はまだ使える……なんとしても捕らえておきたい」


 仲間に忠告をされその手はぴたりと動きを止め、仲間へと向き直る。


「そうだった……だが、あれは良かったのか?」

「良い、今は娘の回収が最優先だ」


 その問いに答えた仲間はそこまで口にすると――。


「――――――――――」


 小声でなにかを伝え、もう一人は納得した様に頷いた。

 メルなら聞き取れるはずの声だ。そう思い耳を傾けたのだが……。


 何を話して……ってなんで聞こえないの? こんな近くに居るのにいくら小声でも私なら聞こえておかしくないのに……。


「では急ぐとしよう……」

「ああ、相手は手傷を負ってる。だが、油断はするな」


 二人は言葉を残し、その場を去って行き――暫くしてメルは大きく息を吐いた。


「い、今のもさっきの人達の仲間? それになんで耳が……」


 メルがそう呟くと目の前には精霊シルフが現れ、その顔は険しく――真剣そのものだった。


『メル……』

「な、なに……シルフ?」


 いつもと違う様子の彼女に驚きつつもメルが訪ねる。


『うん、メル……今の人達が言ってた事なんだけど……』


 シルフはメルの耳があるであろう場所でその事を告げ――。


「………………そ、それを言ってたの? でもなんでシルフは……」

『多分、魔法か何か周りに音が漏れないようにしたんだと思う……けど、音の振動は聞き取れるから間違いないよ! もし本当だとしたら早く戻ろう!』

「そ、そうだね……」


 シルフの言葉にメルは答え、腕の中で震える少女へと目を向ける。

 そこには透明化(クリアトランス)の所為で体の見えぬ少女が確かに居る事が分かり――。


「大丈夫、私も皆も居るから、ね?」


 少女へと声を掛け、歩き始めると――。


「……うん」


 彼女は小さく震える声で答えた。

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