68話 誰?
リアス達と逸れてしまったメル達。
二人は街のごろつきに絡まれていた処を男性に助けられ、なんとかその場を切り抜けた。
そんな中、リアスがメル達を探しに来てくれたらしいが……リリアは怯えていて?
メル達がリアスと再会してから少し時間は進み……。
「にしても、妹さん……どうするよ?」
「目が治らないのは間違いなさそうね……」
「…………」
黙り込むリアスの横にはエスイルが歩き、彼を心配しているのだろう見上げていた。
「リアスお兄ちゃん……」
「大丈夫だ、ただ……な」
彼は振り返ると其処には笑顔のメルと彼女の左腕にくっ付いているリリアの姿が映る。
「……ん?」
彼はふと疑問を浮かべたが――。
「放っておけるならともかく、それは無理だろ? なぁ一度ユーリさんに手紙出さないか?」
「……何か……」
引っかかるそれが何なのかリアスが考えていると答えがいつまでも帰ってこない事に苛立ったのだろう……。
「おい! リアス!」
シュレムの声が響き――。
「あ、ああ? ごめん……なんだ?」
「なんだ? じゃねぇだろ! お前の妹の事だぞ? ユーリさんに手紙を出して直してもらった方が良いんじゃないか? って事だよ!」
「そうね、治せるならその方が良いかもしれないわね……」
ライノはそう言うとリアスと同じように振り返り、心配そうにリリアへと目を向ける。
それに釣られたのだろう……シュレムも後ろへと振り返ると――。
「…………?」
メルを見て瞳を細めた……そんな彼女の様子に首を傾げたメルはその笑顔をシュレムへと向ける。
「どうしたの?」
シュレムへとそう声を掛けるがシュレムは言葉を受け――。
「誰だ……?」
メルを睨み尋ねた。
「え? 何を言って私は――」
「メルじゃない、メルが……もう治らないって言われた奴の傍に居てずっと笑顔でいるはずが無い……」
「……ほ、本当に何を言ってるの?」
困惑の表情を浮かべた少女は張り付いた様な笑顔を浮かべているが――。
「なるほどな、だから何かが変だったんだ…………リリアもさっきは右腕に居たはずだ……」
「そんなの……移動しただけだよ……」
「あら、それはますます変ね? こんな街中で心配性のメルちゃんが目の見えない子の手を放すのかしら?」
「そういうものなのか?」
ライノの言葉にカルロスは尋ねるがライノは頷き――。
「ええ、まず無いわね」
「僕もそう思う……」
エスイルの言葉を聞き、ニヤリと笑みを浮かべたのはシュレム、彼女は巨大な盾を構えると――。
「つまり、オレの感は正しいって事だな? メルの姿を偽りやがってお前は……誰だ?」
「「…………」」
シュレムの言葉に答えず沈黙を保つ二人――やがて口を開くと――。
「おい、アレが一番騙しやすいと聞いたんだが……」
「そう言うな……私に言われても困る」
二人は形を変えていき――。
「な、なん――!?」
シュレム達の目の前に現れたそれは――。
「まぁ良い、首飾りを渡せ」
「そうすれば命までは取らん」
少女……人の姿をしてはいるがどこか違う何か……その瞳は銀色に輝いている何か――。
「人間? いや……どの種族でもない……って事はオレやメルと……いや、違う……人じゃない?」
「何を言っている? 我らは間違いなく人だ――現に言葉を使っているだろ?」
「知性だってある、故に交渉も可能だ……」
にたりと笑うソレを睨むシュレム――その時――。
「な、なんだあれ……」
「ま、魔物!?」
辺りから聞こえた騒ぎを耳にし、ふと辺りを見回す。
そこには……人ではない少女達を見て怯える住人達……。
「シュレム……」
「……チッ」
「ここで暴れるのは忍びない……故に早急に首飾りを渡してほしい」
辺りへと目を向けたソレはリアス達へとそう告げ……笑みを浮かべ手を差し出して来た。
「そんな事よりメルはどうした? オレ達の後ろに居たはずだ」
「あの女は少々面倒だからな」
「逸れてもらっただけだ」
それ以上何も告げない二人の少女に対し苛立ちを見せるシュレムだが……。
「どうする?」
リアスへと目を向け彼女は問う。
「あちらから仕掛けて来ない以上、下手に動けない……最悪周りに被害が出る」
「その通りね……相手が変身を使っていた以上、人混みの中に仲間が居ないとは限らないわ……」
リアスの言葉に続くライノは表情を厳しくし呟く……。
「なら……どうするんだよ……」
シュレムが顔を歪ませ二人に再度問いを投げた時――。
「…………っ」
一人の少女の顔が変化し――もう一人へと語り掛けている。
「…………何? ……」
その言葉を受けたもう一人の少女は血相を変えリアス達へと向き直ると――。
「……事情が変わった……首飾りはいずれ受け取りに来る」
そう告げた少女達は溶ける様に消えた。
「な、なんだったんだ?」
「そんな事よりメルだ! 探しに行かないと!! エスイル!!」
「だ、駄目だよ僕にはメルお姉ちゃんみたいな目はないんだから……」
焦る姉に対しエスイルがそう告げるとシュレムは舌打ちをし……。
「戻ろう! メルが心配だ!」
「分ってる……行こう!」
仲間と共に来た道を引き返す事にした。
時は少しだけ遡り……。
「誰?」
メルは右腕を掲げ、リアスを睨む。
「何を言っているんだメル……」
「……皆は?」
「先に宿についてるよ、ほら行こう」
彼の受け答えにメルは変な点は見られないと感じていた。
だが……。
シュレムが居ない……リアスが来てくれたといってもシュレムが私を放って置く事は無いはず、それに……。
メルはその視線をリリアへと戻し、その表情を険しくする。
「メル?」
「お姉ちゃん……」
そして、自身を姉と呼ぶ少女を左腕でしっかりと抱きよせると――。
「リリアちゃん……目を瞑って?」
小さな声で彼女へと伝え――。
「本物だったら後で謝るから!! 我が往く道を照らせ! ルクス!!」
その魔法を唱え、自身もそれから目を逸らし――その場から少女を連れ、去ろうとしたが――。
「魔法が使えるというのは情報通りか……」
「……え?」
真横から声が聞こえ――彼女はそちらへと目を向ける。
すると――先程まではリアスの格好だったそれは――。
だ、誰? 人――いや、魔物!?
人とも魔物とも取れぬ少年へと姿を変えた。
そしてそれはゆっくりと手を伸ばし――その先に居るのは――リリア。
メルはその事に気が付くと、慌てて魔法を唱えた。
「っ!! 我が意に従い意思を持て! マテリアルショット!!」
火とか魔物か分からないソレを自分達から引き離す。
「……ほう、案外魔法の使い方が上手い……それは情報には無かったな」
魔法により飛ばされた少年は離れた場所に着地をすると楽しそうに笑い声を上げる。
だが、メルが気になったのはその少年ではなく……。
「な、何それ……」
少年が手に持つ筒からは黒いミミズの様なものが見えた。




