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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
1章 冒険者になりたいっ!
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6話 やっぱり冒険者になりたいっ!

 自身がなにも出来なかったことを悔やんでいたメル。

 だが、そんな彼女の心を救ったのは攫われていた姉弟とその両親の感謝の言葉だった。

 メルは誰かのために戦う冒険者、それこそが自分が求めた夢だと再確認させられ、母ユーリへと再び思いを告げるのだが……?

「説教じゃなくて」

「説教やろ? 大体なんで親が子ぉの夢止めるんや」


 赤い鬼は不機嫌そうな言葉をユーリに放つと大きめの椅子に乱暴に座る。

 ミシッと音を立てた椅子は壊れるんじゃないか? っとメルは一瞬心配になったが鬼族(オーク)が作った椅子は頑丈らしくそう簡単には壊れない様だ。


「あのね、危険だって分ってるから止めてるの、それに――」

「あんな? お嬢ちゃんはちっこいのによう頑張ったで、将来有望や……少し過保護過ぎとちゃうか?」


 ゼッキが味方に付いてくれている事に気が付いたメルは慌てた様にユーリに向き直り、こくこくと頷き始めた。


「ほ、ほら、私頑張ったんだよ? これでもあの人が襲われる前に助けたんだよ!!」


 そう告げるが、ユーリは静かに首を横に振った。


「……駄目だ、仕事ならもっと安全な物がある。例えば酒場(ここで)働くのも良いし、シンティアさんやテミスさん、リーチェさんのとこで働くとかもできる……でも冒険者は今のメルにはさせられないよ」


 いつもであればここでメルは反論していた。

 だが今回はついさっきユーリの話を聞いた事、そして実際にメルが体験した事を思い出し、それ以上は何も言えなかった。

 何よりメルには魔物よりも人の方が怖く感じたのだ。

 言葉を互いに理解し、会話も出来るのに考えている事が分からない。

 いや、例え分かったとしてもそれが理解出来ない。

 そして、互いに理解が出来ない故にメル自身へと牙を向けられた時の恐怖……。


「…………」


 彼女はただスカートの裾を握りしめ、じっと机を見つめた。

 冒険者になりたいという想い……それは変わらない、だが同時にユ―リが理由なく駄目だと言っている訳じゃない事を今日……より理解したのだ。


「ごめんなさい、ユーリママ……私」

「……今日はゆっくり休んで」


 先ほどの声とは違い何時もの様に優しい声が聞こえ、メルはそれに耐えきれず涙を流す……。

 安心しきった事もあるのだろう、シルフと離れ離れになり、暗い部屋に閉じ込められた。

 その恐怖が彼女に押し寄せてきたのだ……。


「怖かった、こわ、かったよ……」

「もう大丈夫だから、ね?」


 優しい声で囁くユーリの手の温かさをメルは頭で感じたが……。

 もし、何かが違っていたら今頃あの男に色々されていたかもしれないと思うと涙は止まらなかった……。

 それだけに今は安心出来て同時に恐怖も膨れ上がった。


「メルは十分頑張った、それは僕も認める……だから、今日はお休み」


 泣き続けるメルはユーリにあやすように撫でられ……。

 抱きしめられて、メルはその内泣きつかれてしまい眠りへとついた……。


 落ち往く意識の中、メルは自身がまだ子供だと言う事実を確認させられた――。







 目が覚めると辺りはすっかり暗く、夜だと言う事が分かった。

 ほんのり明るく光る魔法の道具は夜中に目が覚めたメルが怖がらない様にいつもつけて置いてくれている物だ。

 横を見るとフィーナに抱かれたユーリが居り……ちょっと面白くない気持ちになった。

 昔から……メルが小さい頃からフィーナはこうなのだ。

 抱き心地が良いと言ってはユーリを独占していた。

 勿論、メルも抱かれてた事はあったのだが、やたらと暑い日でもそうされたので拒否したら残念そうにしながらもユーリだけに抱きついている。

 メルとしてはユーリに抱きついて寝たい時もあったのだが、寝苦しそうにする母を見ると子供心に心配になり出来なかったのだ……。

 その度に彼女は母フィーナは誰かに抱きついてないと眠れない人なのだろうか? と疑問に思っていた。


「………………」


 メルは二人の母から目を話し窓を見る。

 外は暗い、真っ暗だ……だけど完全な暗闇ではなく星が輝いて月明りがある。

 まるで見守られているようなその明りにホッとしつつ彼女は思う。

 冒険者になりたい、でも実力不足であり、例え足りていたとしても覚悟は足りない。

 それは死に直結するものだろう……だからと言って夢を諦めるなんて事はしたくない、と……。


「ちゃんと認めてもらわないと……」


 彼女は決して冒険者になる事を諦めた訳ではない。

 何故ならユーリがはっきりと言ったからだ「今のメルには」っと……だから、彼女もまた認めてもらおうと口に出し、再び眠りについた。







 翌日、メルは水平になった尻尾をゆっくりと振りながら街中を歩いていた。


「夜に口には出したけど、どうやったら良いんだろう?」


 ユーリは頑固だ。

 仲間は勿論、特にメルやフィーナ、ナタリアの事になると酷い時は全く聞く耳を持たない時がある。

 それで自分は血だらけになるまで無茶をするのだから、実の娘であるメルとしては逆に心配させられるものだ。

 だが、今回の件は違う……冒険者になる為には例えメルが覚悟を持てたとしても、ユーリを納得させないとなれない……。


 しかし、罪を背負う覚悟なんていうものはその時でなければ実感できないだろう……更に言えば一人では無謀も良い所だ。

 メルと一緒に戦ってくれる仲間も必要だろう。

 だが、その人物が思い浮かばなかった……。

 まったく居ない訳ではない……だが、その人物たちが問題なのだ。


 まずはシュカとバルドの息子であり、メルの血の繋がっていない弟フォルは論外だ。

 泣き虫で怖がりなのだからはっきり言って戦えないだろう。


 後はシュレムにシウスだが、シウスは頼りになり適任だがとっくに冒険者となって今は旅に出ている。


 シュレムの方は何故かメルを嫁にするだとか唇を近づけて来たりだとかするので面倒だったが、その行動を見かねたケルムが修業という物を付け始めた為、今は屋敷には居ないのだ。

 なんでも彼が言う『なんぱじゅつと漢のありかた』という魔法を習っているらしいが、母から聞いた話では恐らくまともな物ではないだろう……。


「っととと、そうじゃなかった」


 今はどうやって覚悟を決め、ユーリに認めてもらい、その為の仲間を集めるかだ……メルはその方法を考えるが……。


「う~ん、う~~~ん」


 ……思いつかない。

 そもそも、冒険者と言っても二種類いる。

 その中でもメルがなりたいのは酒場の冒険者だ。

 母達の様に誰かを助ける為の仕事を好む者が多い。

 仕事を受けるにはリラーグでは王シルトから勅命を下されるか、依頼者自身が依頼金を持ち酒場に提出された以来を受けるか、依頼者本人から受けるかのどれかだ。


 ギルドと呼ばれる組織は悪党集団で密売や密猟をしている者達からの依頼を受ける事が多く、またギルドでは依頼を出すために大金を用意しなくてはならない。


 勿論、酒場とギルドは対立していて、リラーグ近辺においてそれを加速させたのがメルの両親とゼファー、そして当時まだ王国ではなかった時のリラーグの領主だった。

 そして、酒場の冒険者は今や人気の職業でもある。

 だが、中途半端な意思や力量で鳴る事は出来ない、だからこそ依頼をこなすためのある程度の知識、そして力量が必要であり、どちらとも持ち、今後の成長が望める十、十二の時に志願する者は少なくない。


「この私に任せておけば、ユーリの魔法で作った岩船に乗ったつもりになれるからね!!」

「いや、シアンそれだと確実に沈むぞ?」

「いい加減その頭は成長してくれない物ですかね……」


 だが中にはああいった風に残念な人もいる。

 メルは聞きなれた声を聞き、視界に捕らえた見知った三人組の冒険者を見つめそう思う――。


「というか、シアンさん、レオさんが言ってる通り……岩の船は絶対沈むよ……」


 離れた場所で聞こえない様にそう小さく呟いた後、彼らに声を掛けようとしたのだが、どうやら仕事の話中らしく邪魔をするのはいけないと思ったメルはその場を去ろうとする。

 その時、ホークに気がつかれた事に気付いたメルは手を振って挨拶をすると、彼はメルに向けにっこりと微笑み手を上げて答えた。

 その姿にメルはホークはかっこいい人だなと再確認した……何しろ街の女性から人気であり、食事に誘われていたり、手紙が良く来ているぐらいだ。

 ケルムに敵視されてしまうと彼自身は困った様に笑っていたが、ケルムの場合は変態なので仕方がないのでは? とメルは思っていた……。




 三人のいた場所を後にし、更に街の中を歩く。

 目的は無い、ただ考えごとをしながら歩いているだけだ……。

 しかし、なにも思いつかずその場で立ち止まった彼女はため息をつく。


「駄目だ、どうやったら良いのかなんて分からないよ」


 いっその事酒場に戻って冒険者の皆に聞く? と考えたがすぐにそれは駄目だと首を振り尻尾を垂らす。

 答えは何通りもあるのが予想でき、尚且つ誰かから受け継いだうわべだけの言葉ではナタリア、ユーリは勿論、フィーナにさえバレるだろう。

 それだけではなく、それがユーリの耳に入ったら冒険者になりたいなら自分で考えなさいとでも言われてしまう事は確かだ。


「はぁ……」


 メルはもう一度深くため息をつく――そんな時だった。


「だ、誰かぁぁぁぁぁ!!」


 街中に響く声に驚きメルは声の方へと身体ごと視線を動かす。

 するとそこには倒れた老婆が居て……必死に叫んでいる。


「鞄を、鞄が!!」


 老婆は自分が倒れた事よりも鞄と叫び、手を伸ばしていた。

 その手はメルの方へと向けられ、周りの者達の視線もメルへと向けられていた……。


「……え? わ、私?」


 しかし、メルは鞄なんて持っておらず、疑問に思っていると――。


「どけっ! どいてくれ!!」

「きゃぁぁあ!?」


 ボーッてしてたのがいけないんだろう、汚れたフードをかぶった男は腕でメルを乱暴に退かすと走り去っていく……。

 メルは悲鳴は上げてしまったもののとっさに受け身を取り、立ち上がる。

 そして彼女は何が起きたのかやっと理解できた。

 老婆がたった今襲われ、鞄を盗まれたのだと……。


「――ッ! 待て!!」


 メルは声を上げ、大地を蹴りフードの男を後を追いかけた――。

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