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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
4章 犠牲者は追手に
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61話 暗殺者の少女

 林を抜けたメル達。

 もう少しでリシェスと言う所、彼女達の目の前に少女が一人現れる。

 メルは咄嗟に馬車の中から飛び出るものの逃げ切れず倒れてしまい……

 リアスはその少女の正体を知り、驚きの声を上げた。

 しかし、メルを助けるため仲間達と共に戦う事を決意したのだが――?

「ふざけるな!!」


 少女は叫び、ナイフを持つ手に力を籠めるのがリアスにも分かった……だが――


「あら、アタシを殺すつもりかしら? ……残念だけど、そう簡単にはいかないわよ?」

「――はぁ!?」


 その言葉に苛立ったのだろう、視線を動かしたリリアの目に映る光景はいつの間にか小瓶を取り出し、その中身をリリアの手に垂らし始めた所だった。


「な、なにこ――ひぃ!? つ、冷!?」


 スライムの様な液体は少女の手へと纏わりつき、それが気持ち悪いのだろう……表情を変えるが、ナイフは突きつけたままであり、状況は変わっていない……様に見えた……


「あ、あれ冷たい? ッ!? あ、熱い!?」

「危ない物は人に向けないでほしいわ」


 その変化は徐々に表れ……ライノはそれを避ける為だろう彼女の腕を掴み、自身の首から遠ざけるが――少女の持つナイフは突然振られた。


「――っ!! あ、危ないわね……」


 ライノの目の前に銀色の線が描かれ、リアスはそれを見て焦り――


「ライノ!!」


 彼の名を叫ぶ。


「だ、大丈夫よ……大丈夫、ま、まさかナイフを落とさないとは思わなかったわ」


 頬に傷が出来た天族(パラモネ)の男性は引きつった笑みを浮かべ一歩後ろへと下がる。


「何をした!! わたしに何をした!!」

「ちょ、ちょっと特別な毒を使っただけよ? ……死にはしないわ」


 にやりと笑うライノへとにじり寄るのは暗殺者の少女……戦う手段があるとはいえ、ライノが圧倒的に不利という状況で少女は不意にリアスの方へと向くと――その場から飛びのいた。


「チッ……バレたか……」


 その様子に対し、舌打ちをしたリアスはライノの方へと駆け寄りながら告げる。


「ライノ! メルが心配だ早く!」

「分ってるわ……ただ、メルちゃんの所まで行かせてくれるかが問題ね……」


 リアスへとそう返したライノは少女の方を見ろと顎で促す。

 それに反応したリアスはリリアへと目を移すと――


「意地でも引かないつもりか……」

「当たり前でしょ? あんたみたいな落ちこぼれに……その仲間にコケにされたんだ……もう、殺すしかない、死んでもらうしかない……」


 リアスの声が聞こえたのだろう、そう声を張るリリアはナイフを落とさないために手に布を巻きつけ――

 その瞳は怪しく揺らめいた。


「シュレム!!」


 彼女無しでは勝てない、そう判断したのだろうリアスはもう一人の仲間の名を叫ぶが――


「ぁぁぁあああああああ!!」


 返ってきたのは絶叫のみ――


「だ、駄目ね……リアスちゃんのさっきの話が聞こえてればと思ったけど……」

「シュレム抜きか……」

「まずは、そいつ天族(パラモネ)から……その後はそうだなぁ……リアスを殺しちゃおうかな?」


 ぽつぽつと雨が降り始める中、リリアと言う少女は笑い声と共にそう口にする――


「あ、あの子壊れてるわ……」

「ああ、今のアイツはそういう奴だ」


 そう呟いた彼の言葉を合図にしたかのようにリリアと言う少女は大地を蹴る。

 辺りには雨の音とシュレムの絶叫……


「ちょ!? 何処まで速いのよ!! リアスちゃん最初に言ってちょうだい!?」


 消えた少女に対しライノは思わずそう告げるが――リアスも瞳を丸くしつつ答えた。


「言ってって言われても、どうなってるんだ……普通じゃありあえない! 人間が出来る芸当じゃないって」

「なら魔法!?」

「そんな魔法聞いた事も無い!!」


 魔法の中には風を操る物もある。

 だが、己の動きを早くする魔法なんて存在しないのだ。

 それを知るリアスは当然うろたえ――辺りを見回していると、突然目の前に見知った顔が現れ――


「な!? リリ――」

「やっぱ、リアスから殺そう!!」


 そう口にし、日が陰った事で輝きを失ったナイフはリアスの首元へと近づいて行く――


「リアスちゃん!!」

「あははははははははは」


 避けようと彼は体をねじるが時はすでに遅く――


「これでひと――」


 助かる術がない、そうライノが判断した時、突風が吹き荒れリリアだけがその風に攫われた。


「ぐぅ!? ……っ!」


 風の所為で息が出来ないのだろう、少女は苦悶の表情を浮かべつつ……一か所を睨む――


「お姉ちゃん!」


 そこには呆然とするシュレムの横で顔を歪めながらリリアへと右腕を向けている森族(フォーレ)の少女の姿があった。


「……はぁ…………っぅ……」


 だが、腹部に刺さったナイフはそのままで傷は決して浅くはないのだろう……

 彼女は立ち上がろうとするも、それは叶わず。


「メル……?」


 シュレムはようやく彼女が生きている事に気が付き、慌てて身体を支えようと近づく。


「メル……無理するなって……なぁ!」

「だ……て……この、まま……じゃ……!!」


 雨の中、響くのは途切れ途切れになった少女の叫び――


「死なせ……ない、その……為……」


 だが――


「メルお姉ちゃん!?」


 少女は立ち上がる事無く、その場に崩れ……姉と弟に支えられた。


「は、ははははは……な、に今の? びっくりしたけど、傷一つ付けれない癖に何が死なせないだ!!」


 暗殺者は少女を笑い……少女は気を失ったのか顔を地へと向けている。

 そんな彼女を見て暗殺者は……


「そうだ、面白い事思いついた……そいつ以外を皆殺して起きるまで待ってみようか? そうしたら――」

「黙れ……メルを笑うなっ!!」


 その声が聞こえたのは……リアスとライノがリリアへと視線を向け、再び構えかけた時だ。

 低くそれでも響く声の主はメルをそっと横たわらせると、自身の上着を彼女へとかけ、立ち上がる……


「何よ、リアスより何も出来ない人形の癖に……誰に向かって黙れって言ってるのか分かってるの?」

「…………オレは馬鹿だけどお前はもっと馬鹿なんだな」

「はぁ!?」


 そのやり取りに思わず笑みをこぼすのはリアス……

 彼は彼女の方へと視線だけを動かすと――


「シュレム、頼む!!」


 そう叫ぶと、その名を持つ少女は身なりに合わない盾を振り回し――疾走する。


「……頼まれなくてもなっ!! メルを傷つけた奴は許さねぇ!!」


 彼女が狙うのは勿論リリアと言う暗殺者の少女。

 だが――


「ふん、許さない? 許さないって言ってる割にはのろま過ぎ」


 その突進は簡単に避けられ、包帯で固定されたナイフはシュレムの首へと迫り――


「確かに――オレは鈍い、オレはな?」

「はぁ?」


 死は間近に迫ったというのに笑みを浮かべたシュレム――


「――っ!!」


 その意味に気が付いたのか咄嗟に振り向いたリリアはその場から飛びのき――


「しまっ――!? シュレムちゃん!!」


 ライノの声と共に小瓶はシュレムへと当たり、中に入っていた赤い液体は彼女の身体へと降り注ぐ――


「――っ!?」

「あははははは! 仲間に当たってる! 馬鹿じゃないの? 飛び道具を使う時はね、仲間に当たらないように注意するもの!! まっ仲間なんて邪魔でしかないんだけどね!!」


 リリアは高笑いをし、その場でナイフを振り回すと金属音が鳴り響き、辺りには数本の針が落ち――

 それに舌打ちをしたリアスはローブの中から数本の棒を取り出すとそれを一本へと変え、少女へと振り下ろした、が――


「そう、リアスはその辺は一応分かってるね……でも――」

「…………」


 それを分かっていたかのように少女は棒を避けた……のだが――


「残念だね? アンタ達にはわたしに勝つ手段はな――へ?」


 彼女の笑みと言葉は突然消えた。

 それもそうだろう、風が突然吹き荒れ辺りの雨は彼女達を避けたのだ。

 慌ててメルの方へと向き直る暗殺者の少女はメルを見てさらにうろたえた。

 風の魔法である事は確かで、その場に魔法が使える者が恐らくは彼女しかいないと考えての事だったのだろう……だが――


「へ、へへ……」


 その場に響いたのは新しい声……いや、リアスやシュレムは先程から聞いていた者の声だ。


「メルの魔法見て思いついたんだ……下手くそでも……」


 そう呟くカルロスは何かが入った袋をシュレムへと投げ渡し――

 その中身を確認し、まるで悪人の様に表情を歪めた少女(シュレム)を見て、すぐにカルロスへと視線を向けたリアスとライノは彼の合図に驚いたような表情を浮かべ慌ててその場から離れ――


「この! 雑魚の癖に――!!」

「吼えるなよ……黙れって……言ったろ?」


 そうリリアへと告げたシュレムは受け取った荷物から丸い玉の様なものを取り出し更に自身の荷の中から”封火石”でそれへと火をつけ投げたシュレムは――


「伏せろ!!」


 自身の持つ盾を地へと刺し――その裏へと隠れながら叫ぶ。

 その声に少し遅れ辺りには爆音が鳴り響く……やがて紫煙が広がる草原の中、シュレムは様子を窺うために盾から身を乗り出した。

 すると――


「こんなものでわたしが殺せると思ったの?」


 正面から現れたのは少し破れ、汚れた服に身を包んだ少女――リリア。


「この服気にってたのに……頭に来た、アンタから――」


 余程、気にくわなかったのかその瞳は濁り切っており、シュレムだけを睨み正面から彼女を襲い――


「オレは確かにのろまだ……だけど、当然だよな? 重いもん背負ってんだからさ……」


 盾を持たず疾走するシュレムは拳を握る――だが、人間離れした速さを持つリリアと言う少女はそれを見て口元をほころばせた。

 が――


「――っ!!」


 彼女は咄嗟に後ろを向き、何かを避けた。

 煙の所為で何を避けたのかはシュレムには良く見えなかったが――目の前の暗殺者には僅かだが隙が生まれ――


「――――オラァァアアア!!」


 その拳は暗殺者へと叩き込まれた。

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