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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
4章 犠牲者は追手に
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59話 順調な旅路

 林の中を進むメル達。

 何故あえて相手が隠れやすい林なのか? 当然の疑問をカルロスは訴える。

 しかし、ライノは大丈夫だと告げ――その理由は一体……?

「なぁ……」


 会話を終えてからどのぐらい経ったであろうか?

 カルロスは不安そうな声で再び声を掛ける。


「はい、何かありましたか?」


 それに対し、あくまで冷静に声を返すのはメルだ……


「い、いや……大丈夫ってライノの奴が言ってたけど……」

「大丈夫ですよ、見張ってもらってますから」

「は?」


 そう、ライノが大丈夫と言った理由……あえて隠れる場所が多い林である理由……

 木々があると言う事はそこに住む精霊、ドリアードの力をメルは借りる事が出来る。

 馬車の中からは景色全体を見回す事は出来ない為、ドリアード達がメルの目を通して気づく問うことは無いが、そもそも隠れていては意味が無い。

 だが――


「何かの気配を感じたら教えてくれるはずですから」


 ドリアード達を含む精霊達は気配を感じることは出来る。

 メルはそれを頼る事も考えていたのだ。


「だ、だったら空でも同じじゃないのか?」

「空は駄目です、例えばただの鳥が追って来てるように見える場合がありますから……」

「な、なんだそれ?」

「オレにも分からん!」


 メルの言葉にカルロスは当然だったが、何故かシュレムは胸を張りつつはっきりと答える。

 それに対し溜息をもらすのはリアスとライノ……


「あのね、シュレムちゃん……メルちゃんはさっき鳥を飛ばしたわよね?」

「お、おう……」

「例えば、別の人がリシェスに鳥を飛ばしていたらどうする?」

「馬車はリシェスに向かってるわけだから……同じ方向に飛ぶな」

「そっか、その鳥をシルフが勘違いするかもしれないんだね? メルお姉ちゃん」


 エスイルはシュレム達の会話を聞き答えを導き出すとメルへと質問し、彼女はその答えに頷いた。


「そう、分かるのは気配だけ、こっちをどう見てるかって言うのは分からない……だけど林なら――」

「なるほど、隠れて移動しても追って来ているかどうかが分かるって事か……」


 メルがあえて林を進むことを促した理由に納得したのだろう、カルロスはほっとしたような声でそう呟くと……


「でも、今の俺達の会話を聞かれてたら意味ないんじゃないか?」

「ええっと、シュレム? もしそうだったら話してないよ?」


 頬をかきつつ困った様な表情を浮かべたメルはそう告げつつ、ドリアード達の声へと耳を澄ます。

 彼女達はメルのお願い通り、馬車の周りの茂みの中へと潜み気配を探ってはいるが、メルが口にした通り今のところは怪しいモノはついて来ていないみたいだ。

 だが……


 なんだろう……すごく不安……

 何もついて来てないのに……怖い。

 ううん、何もついて来ていないからこそ、怖いんだ……


 メルは心の中でそう呟く。

 それもそうだろう……リラーグ、カロン、イアーナと続き首飾りを狙う者達はメル達へと牙を向いた。

 だが、イアーナを抜け出てからここまで難なく進んできたのだ。

 そう……旅は驚くほど順調、魔物に遭遇することはあっても追手という驚異には出会っていない。


「メル、どうしたんだ難しい顔してさもしかして敵か! 敵なのか!?」

「そうじゃなくて……」


 安全だから良い、そう言ってしまえればどんなに楽だろう? メルはそう思うが……


「ちょっと心配なだけ……」

「し、心配ってさっき大丈夫って言ってたよな!?」


 メルの言葉にカルロスは当然慌て始めた。

 先程までの不安をぶりかえしたのだろう、その声は若干震えていた。


「はい、言いました……でも、少し……その……静かすぎるのが怖いんです……」

「確かにそうだな、街一つを買い取った連中だ今も追手を送って来てもおかしくはないのに……」

「そもそも、それだっておかしいわよ? そんなに重要なのかしら?」


 それはメルにとっても疑問だった。

 エスイルの母クルムが言う事では貴重な品である事は間違いない。

 だが、そこまでしてあの首飾りが必要なのか? ましてや街だ……金貨を何枚払えばあそこまで言う事を聞くというのだろうか?


 精霊を生み出すための首飾り……でも、リアスやクルムさんの言ってた事じゃそれには儀式が必要で特別な力を持つ人、今回はエスイルの力が必要。

 なのに、相手は首飾りだけを狙ってた……


 メルが思い出すのはカロンでの男の事だ。


 リラーグからリアスは私とシュレム、そしてエスイルを連れて出てきた。

 相手にも私達の情報はばれてるのはもう分かってる……なのになんで、エスイルは狙われてないんだろう?

 あれが街一つ動かすほどのお金の価値があるって言うのは話を聞いてれば分かる、だけど……それはエスイルと一緒だからじゃないのかな? だとしたら、やっぱり――


「メル? どうしたんだ?」

「うん、ちょっと幾つか気になる事があって……」

「気になる事? どんな事かしら?」


 メルはちらりと御者へと目を向けると小さな声で語り出す……


「私達ってエスイルを連れて行くのが目的だよね?」

「ああ、その通りだ」

「でも、エスイルは狙われてない。カロンでもイアーナでも私達が居たとはいえ、エスイルを攫うって事はなかった……夜中を襲わないのは油断させるためだとしても……」

「……確かに妙だな? エスイルの事を知らなくて、ただ高価な物って言う認識なら街まで動かすなんて事ないんじゃないか?」


 シュレムの言葉に頷いたメルはそのままリアスの方へと目を向ける。

 彼は眉を歪め腕を組み考えている様だ。


「おかしいな……街一つ動かす金を払っても欲しい、その理由は俺達には分かるが……それは――」


 そしてそう口にしたリアスはエスイルへと瞳を向けた。


「……あえて力量を図ってるっていうのはどうかしら?」

「へ?」

「相手は価値を知ってるのよね? なら、情報が洩れている可能性は高いわ、でもこっちの戦力がどの程度とういうのは詳しくは分かっていなかった……としたら、下手に手を出して警戒される方が面倒よね?」

「でも、旦那それならそれで疑問だぜ? メルは実際疑問を感じてここで話した……旦那の言葉通りなら今から警戒をしたら――」

「いや、警戒をしても相手に手の内が全てバレていたら厄介だ……」

「はぁ?」


 シュレムはリアスに威嚇するような声を上げるが、彼はそのまま続ける。


「手の内がばれたら対策をされる、事実俺は街中での戦いや即興でのなれ合いは不向きだ。今回は誰を狙ってもそう変わりが無かっただけだ……ライノは天族(パラモネ)接近されたら終わり……だけど――」

「シュレムちゃんやメルちゃんは相手にとって未知数だった。ましてやメルちゃんはたった一人で二人を助けた事もあり、それ故に警戒の対象だったとしたら……観察しててもおかしくはないわよね?」


 メルはリアスとライノの言葉に頭が真っ白になっていく様に感じた。


「も、もしそうだとしたら……」

「あくまで予想の中でだが、そろそろ仕掛けてくる可能性はある。警戒しながら進んだのは正解だと思うよ」


 メルはゆっくりとエスイルの方へと向く……そこには血の繋がらない弟が不安そうにしていて……


「大丈夫、きっと私達がなんとかするから」


 母達ならきっとこう言うだろう、メルはそう思いつつ口にした言葉と共にエスイルの頭を撫でた。

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