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55話 シュレムの戦い

 メル達と別れて行動するシュレム達。

 馬車を取りに言った彼女達の目の前には追手であろう男達の姿があった……

 ライノはそんな状況を突破すべく、小瓶を一つ取り出したのだった。

「あ、あれは一体何が入ってるんだ旦那?」


 シュレムは目の前でもがく男達を見て近くにいる青年へと問う。


「激臭のする液体よ、意外と便利なの」


 質問に答えたライノはそう答えると勝ち誇った顔だ。

 それを聞きさっと顔を青くしたのは他でもないシュレムで――


「激、臭……エスイル!?」


 そうエスイルもまた森族(フォーレ)の血を引いており、兎も嗅覚が優れている。

 つまり、その臭いは少年にも届いているはず――


「もご……」


 と彼女は思ったのだが……


「あらやだ、一人ぐらいは対処出来るわよ、これにはフォーレの嗅覚を妨げる効果があるのよ?」


 そこにはいつの間にか厚手の布で顔半分を覆われたエスイルの姿があり、シュレムは更に慌てふためいた。


「いや、これはオレでも分かるって息が続かないだろ!?」

「オイラもそう思う……」

「大丈夫よ、息は出来るから……それ位考えてなきゃ使えないわよ?」


 それよりもっとライノは付け足し、男達の方を睨むと――


「これで魔法は封じたわ、なら後は――」


 そう口にした彼は懐から石を取り出しシュレムへと投げ渡した。


「お願いね?」

「オ、オレは我慢しないといけないのか……」


 石を受け取った少女はがっくりと肩を落としたが、それでも巨大な盾を構え直すと走り出す。


「お、おい! お嬢ちゃん、武器位構えろって!! アンタ止めろよ!? いくらなんでも無茶――」

「問題ないわ、だってあの子の武器は――」


 カロンからイアーナ……それは短い距離だ。

 だが、魔物に遭遇しなかった訳じゃなく……ライノがそれを知らないという事はなかった。


「うぐ!? ひっでぇニオイ……」


 やがて男達の元へと辿り着いたシュレムは盾の構えを解くことなく突進する。


「ぐぇ!?」


 盾の向こう側から聞こえる声を聞き彼女はニヤリと笑うと――


「ま、(メル)に感謝してくれよ」


 そう呟くと盾を持つ手に力を籠め――


「ぉぉおおおおおお!!」


 殴り飛ばすように盾を突き出した。

 だが、当然そこは小瓶の割れた近く、臭いに耐え切れなくなった彼女はライノから渡された石へと魔力を通わせ風を起こす。


「ふぅ……少しはマシだな……さてと……」


 臭いが薄れ、ほっと息をついたシュレムは男達を睨む。

 年相応とは言えない成長した体躯である彼女だが、少女は少女だ……

 そんな彼女が大の大人でも片手で持てないような物を持ち殴り飛ばした。

 そして、その少女に睨まれた男達は――


「ひぃ!?」


 っと情けない声を上げ、中には腰を抜かしてしまった者も居る様だ……


「な、何ビビってやがる! ガ、ガキ三人と天族(パラモネ)だけなんだぞ!!」

「お、意外と根性がある奴が居るな?」


 本当に意外だったのだろう、全く手入れされていない髪をかき上げたシュレムはニヤリと笑う。


「お、お前しかまともに戦えないんだろ? だからお前だけがここに来た……」

「当たりだ」

「――は?」


 清々しいまでに言い切られた言葉、それに対し呆けた言葉が返ってきた事にシュレムは怪訝な表情を浮かべる。

 当たりと答えたのに何故そんな顔と言葉が返ってくるのか……っと――


「は、ははははは……お、お前それで良く余裕ぶって――」

「余裕だからな……他に理由があるのか?」

「…………」


 シュレムは悠然とした態度でそう言葉にし……唯一声を張った男は絶句する。

 それもそうだろう、男の声に触発され立ち上がった者も居る……だというのに少女は全くと言って良いほど揺るがないのだ。


「お、おい……」


 そんな彼女の様子に再び畏怖した男達は声を掛け合い、武器を構え直したが――


「あ、ああ――へ?」

「――――らぁ!!」


 どこか抜けたような声でシュレムは一人、また一人と気絶させていく……そして――


「後はアンタ一人だけど……どうする?」

「…………」


 声を上げた男だけがそこに立ち、開いた口はふさがらないのかぽかんとしたままだ。

 やがてはっとしたのだろう、男は――シュレムに向かい。


「か、金をたんまり貰ってるんだ!! 今更引けるかぁああああ!!」


 そう叫び、その手に持っていた大ぶりの(つち)を振りかぶり、シュレム目掛け振り下ろした――


「女子供が調子に乗るんじゃねえ!!」


 が――


「いや、そこは関係ないだろ?」


 顔面目掛け振り下ろされたはずのそれはシュレムの片手に阻まれ、届くことなく――


「大魔導士も月明りの騎士も女性だし……そしてエルフの使者も女性だぜ?」

「な――っ!?」


 子供には決して受け止める事の出来ないだろうその攻撃を止められた事に驚いたのか? それともシュレムの言葉にか……それは彼女には分からなかったが、男は驚きの声を上げ表情を固める。

 慌てて何度となく振り下ろす(それ)をシュレムは防ぎ続け――


「クソッ! ガキの癖に! 女の――」

「それって差別って言うんだろ? 親父が言ってた……くだらないってな……」


 そして、彼女は気が付いた……目の前の男が自身の足元にも及んでいない事が……良く見て見れば屋台に居た商人の一人である事が……


「大人、それも男に敵うはずが――」

「あーもう、うるせぇなぁ……だから、なんだよ?」


 吠える男に嫌気がさしたのか、シュレムはそう口にすると巨盾から手を放し、槌を片手で止め……残った拳でへし折る。

 当然、彼女には何も問題の無い作業だ……だが、片手で折れるような太さではないはずのそれを見た男は――


「う、嘘だ! 魔法か? 魔法を――」

「使えねぇよ……」


 また何かを言い、彼女はそう答えると男の顔面を手の平で覆うようにし、足払いをかけ――地へと落とした。


「おつかれさま、シュレムちゃん」


 男が動かない事を確認しシュレムは盾を背負い直すと仲間達の方へと振り返る。

 一部始終を見ていたライノはシュレムに近づきそう告げ、労う様に肩を叩くが、眉を吊り上げた彼女に対しライノは――


「ってどうしたの?」

「いや、あんなんでもメルやオレを認めるリアスはマシなんだって分かった……アイツは女だとかで判断しないからな」

「いや、リアスちゃんは普通に良い子だと思うんだけど?」


 何かに納得した様に頷くリアスに対し、呆れたような表情でライノはそう告げる。

 そんな中、一番幼い少年もシュレムの元へ駆け寄り――


「流石シュレムお姉ちゃんだ! あっという間だったよ!!」


 エスイルもその目を輝かせ姉にそう言うと……


「だろ?」


 とシュレムは口元をほころばせ、少年を抱き上げる。


「……あ、アンタ、なんなんだよ?」

「んぁ?」

「いや! どう考えたってその盾持てる腕じゃないって! その鍛えてあるのは分かる……でも――」


 カルロスはシュレムに指を向けながらそう口にした。

 彼が言う通り、シュレムはその年齢にしては良く鍛えられていてそれは見れば分かるのだが、それだけでは大きすぎる盾を持てるわけがないのだ。

 それには確かな理由もあるのだが……


「あーうん……それはなぁ、オレも特別なんだよ」


 説明するのが面倒だと感じた彼女はその言葉で済ませ――


「んな事より、さっさと馬車の所に行こうぜ!」


 そう言って足を踏み出した。

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