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51話 怪しい街

 薬をさっそく売りに向かったメル達。

 しかし、格安の薬だと言うのに商品は売れず――挙句、文句や陰口を言われる始末。

 不安を募らせたメルはリアス、エスイルと共に治療へと向かったライノとシュレムと合流する。

 すると、おかしなことにライノは治療を受けられなかったとの事だ。

 そんな彼を治療しつつメルの不安はだんだんと確信へと変わって行くのだった……

 ライノの治療を終えたメル達は再び話し合っていた。

 勿論、今後の事に関してだが……


「取りあえず、医者に診てもらえるまでは治療はメル任せだな……でもよ、次の街まで行かないといけないなんてな」


 苛立っているのだろうシュレムは組んだ腕の上で指を遊ばせる。

 そんな彼女を見てメルはライノについて行ったのが彼女じゃなく自分だったとしても断られたら怒るなっと思いつつ困った顔を浮かべ耳と尻尾から力を抜いた。

 垂れ下がった尻尾はぶらぶらと揺れており……誰から見ても彼女が落ち込んでいることぐらいは分かるだろう。


「万が一の事を考えるとメルの魔力は温存しておきたい……なら一旦カロンに戻るか……」


 そんな彼女の様子を見てリアスはぼそりと呟いた。

 カロンであれば診てもらえたとライノは確かに言っていた……それならば断わられる可能性は低い。

 幸いカロンとイアーナは近い事もあり、彼の案にメルはすぐに首を縦に振った。


「うん、ちゃんと治してもらおう?」


 イアーナでも傷を見てもらえるから大丈夫、そう楽観していた事をメルは後悔した。

 ちゃんと治ってからそれからここに来れば良かったと……


「でも、先を急ぐのでしょう? それに街に入るのにお金が必要よ? メルちゃんが治療できるのだし戻ってたら勿体無いわ」


 確かに急いだ方が良い事は分かっていた。

 カロンに着いた時点でもう手を回されていたのだから……だからこそ、ライノの言っている事もメルは理解していた。

 事実、財布が軽くなってきているから稼ぐ方法を考えたのだから……とは言え、状況が状況だ。


 傷が治るまで休んでたらきっと相手は先回りしてる。

 だけど、ライノさんを放って置く事なんて出来ないよ……

 この街なんかおかしいし……一回カロンに戻って……


 そこまで彼女は考えてふと止まった。

 確かにおかしい。

 だが、街の中であった青年の商人は普通だった。

 情報屋は何処か違和感を感じ信用できないと感じた。

 カロンの酒場の主スレイフの様に怒っている様で、彼とは全く違う酒場の主人。

 患者を診ない医者。

 薬は……この際、仕方ないとしても揃って口に出した愚痴や拒否の言葉……そう何かおかしいのだ。

 そして馬車もだ。

 よくよく考えれば馬車の予約何て事は聞いた事が無い。

 ましてや乗合馬車だ、そんな事をすれば不満が生まれてしまう。

 だからこそ地位の高い物や冒険者は自身の馬車を持っている、そう……それをメルは知っていた。

 彼女の母フィーナも馬車を持っていた。

 何年か前に馬が亡くなってからというもの、新しい馬を買う気にはなれないと言っていたが、確かに馬車を所有していたのだ。

 貸切るには当然大金がいるだろう、だったら……?


「何で、馬車買ってないんだろう?」

「メル?」


 当然こういった疑問が生まれる。


「だって、馬車を貸し切られたら困るの馬車の人だよね?」

「はぁ? 金貰ったって言ってたろ? メル大丈夫か?」


 シュレムの言葉にちょっと失礼じゃないだろうか? と思いつつもメルは語る。


「だって、その間お客さんを乗せれない、つまりお金をもらえないんだよ? 今回だって私達だけで五人分のお金を損してる事になるよ……だとしたら相当な大金を言ったはずじゃ? 金額にもよるけど、ここは商売が盛んな街なんだよね? それなら高額を告げられると思うし、買った方が早いよ」


 そうでなければ旨味が無い、むしろ今メル自身が言った通り儲けが無いのだから断る理由はあっても受ける理由にはならない。

 それに気が付いた彼女は疑問がだんだんと確信へと変わっていく……


「医者もそうだよ、ライノさんは薬師で怪我人断る理由もない、傷薬だって破格も良い所、門番だってあそこまで外に行く理由をしつこく聞かないよ! それに酒場ではもしかしたらお店のお客になるのに全く愛想を振りまかない人っている?」


 メルは居ないと答えを出した、そうおかしい……思い出してみればカロンのスレイフと決定的に違う事に彼女は気が付いた。


「スレイフさんは酒場に初めて行った時、普通だったよ?」


 彼が怒ったのは部屋に文句をつけた時からだ……つまり、案内してもらうまでは普通だった、だというのにここの酒場の店主は最初から怒っていた。

 まるでメル達が客じゃないとでも言うかのように……


「た、偶々じゃないか?」

「いや……俺は来る時はすぐにこの街を去ったから印象になかったけど……確かに宿の主人は変だな?」

「ライノお兄ちゃん、前はどうだったの?」


 エスイルの言葉に考え込むライノだがやがて静かに瞳を閉じると――


「はっきり言って良いという印象は無いわね……人当たりは確かにきつかったけれど、ここまでじゃなかったわ」

「なら、多少きつくなっても分からないって事ですよね?」


 メルはライノの言葉を聞きそう質問を返す。

 そう、気づかないはずだ――と……


「ええ、まさかここまで? とも思ったわ」

「メル、あのさ考え過ぎだって……確かにここの医者は医者辞めた方が――」

「街全体がそうなら、この街はそう言う街なんだって思うよ……しかも本当にそうなら多少きつくなっても気が付かない」

「良いって――は?」


 だが、唯一違う点があった。

 メルはリアスに買ってもらった髪飾りに触れると青年の商人を思い出す。

 悪気が無く屈託のない笑顔、明るい印象を受け、見事リアスに髪飾りを買わせた商人……

 他の商人達の顔を見ていないからメルははっきりと口には出来なかったが……


「少なくとも馬車の貸し切りは嘘かもしれない、情報屋ももう買われてる、だから門番の人やこの酒場にまで私達の情報が流れてる……と思う」


 考え付いた結論を口にする。


「…………元からおかしいから、気が付けないか……あるかもしれないな」


 メルの言葉に頷いてくれたリアスに感謝しつつメルは――


「屋台があった所、あそこに行こう?」

「ちょ、ちょっと待って? なら早く出て行った方が良いんじゃない?」

「私だったら、適当に話を作って私達を外に出さない様にします……多分、一回外に出た事で警戒はされてるだろうし、イアーナを出る事は出来ないと思う……だから――」


 考えすぎかもしれない、リラーグやカロンでの事があり疑心暗鬼になっているのかもしれない。

 メルはそう思いつつもエスイルへと視線を動かし――


「先に協力者になってくれる人を探そう? 屋台の人なら馬車を持って転々としている人が居るかもしれない」


 その人まで手に落ちていたら……そう不安にはなるが、現状メルが思いつく唯一の手だと信じ彼女はそう口にした。

 だが……


「確かにそうかもしれない、だけど……安全とは――」

「うん、限らない……だから、怪しまれずにこっそり話す為にこれを使うの」


 メルはリアスの言葉を遮り、一つの布袋を手にした。


「メル、それなんだ?」

「えへへ、実はリラーグを出る時に持ってきたんだ」


 そう言って彼女が布袋から取り出したものを見て――


「なるほどね、でもあるならもっと早く出しても良かったのよ?」

「げぇ……オレそれ苦手だ……」

「僕は好きだよ? 良くパパがくれたもん!」

「というか、メル……どれだけ持ってきてるんだ? それ……」


 仲間達のそんな言葉が飛び交い。


「だ、駄目かな?」

「いや、確かに皆が一つの所に集まって話す案としては良い……それで行こう」


 不安げにリアスに尋ねたメルに対し彼はそう伝え。


「うん! じゃぁその時は――」


 メルは思いついた作戦を口にした……

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