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48話 仕事はあるのか?

 メル達が乗れる馬車が来るまでかなりの日数が空いてしまった。

 その暇を使いメルはお金を稼ぐことを提案する。

 事実、財布の底も見えてきた事だ……しかし、メル達は一般人であり冒険者ではない。

 果たして、どう稼ぐのだろうか?

 酒場に戻ったメル達は再び話をする。

 金を稼ぐ方法に関してだ……


「……どこかのお店に雇ってもらうぐらいしかない、よね?」


 依頼が受けられない以上、他に方法が無い……


「そうだな……つってもどうするよ? 酒場で働くか? 手伝いをしてるから慣れてるし……」

「駄目、私はともかくシュレムは色々壊すでしょ?」


 メルはそう言うが事実シュレムは良く皿を割る。

 それどころか不機嫌な時は客と喧嘩をし、変な客が来ても恐らく喧嘩になる事はメルには簡単に想像できた。

 どういう訳か龍に抱かれる太陽ではお客は受け入れていてくれたのだが、こちらでも同じと言う事はまずないだろう。

 それに加えメルが考えた事はもう一つある……


「お仕事する時もやっぱり皆一緒の方が良いの?」


 そのもう一つがこれだ……


「朝言った事か、皆で行動した方が良いのは間違いない、けど流石にずっとという訳にも……」


 メルの目の前で腕を組み悩むのはリアスだ。

 それも当然だろう、カロンでは去った結果シュレムは捕まり、メルが部屋から出て行ったことでライノが怪我をしリアスも捕らえられたのだから……


「私達を全員雇ってくれる場所……あるのかな?」


 メルは考えるがこのイアーナでは屋台が目立ち、そこでは流石に雇ってもらえないだろう。

 そうなるとやはり酒場になるのだが……


「ライノお兄ちゃんの薬売るのは駄目なの?」

「……へ?」


 エスイルの提案に目を丸くしたのはメルだ。

 彼女はすぐにライノへと目を向けると――


「あら! お兄ちゃんだなんて可愛い!! それによく気が付いたわね~?」


 エスイルの頭を撫でるライノは笑顔でそう答えた。


「そっか! ライノさんの薬は効き目が良いし、売れるよ!」


 その事はメル自身体験済みであり、酒場がある以上冒険者も居る。

 商品としては十分すぎると言う事に気が付いた彼女はすぐに――


「材料……ライノさん前に此処に来たんですよね? 材料って遠くにあるんですか?」


 エスイルの提案に乗りライノへと問う。


「流石にカノンドは無いけれど、この街の近くにあるので傷薬や熱病の薬が作れるわ」


 ライノの言葉にメルはほっと安堵した。

 材料さえあれば薬が作れる、それにこれならばこれから先でも十分にお金を稼ぐことが出来るからだ。

 だが――表情を明るくするメルに対しライノは語る。


「でも、この街売るのにもお金がかかるのよね……商人に仲の良い知り合いが居れば格安の手数料で置いてもらえるのだけど……」

「お、お金かかるんですか?」

「ええ、屋台を借りるのに一日銀貨五枚、他の人に置いてもらうとしたら……知り合いが居ないから銀貨三枚ってところね?」

「い、意外と高い……ですね? でも――」


 数を売れば儲けは出そうだ。

 そう思うメルはライノへと歩み寄ったのだが……


「それに物の値段が銅貨六枚……無名だと売れ行きも悪いだろうし儲けはほとんどなさそうね」

「……え?」


 メルはその場で固まってしまった。

 それもそのはず――


「傷薬って銀貨一枚じゃないのか!? リラーグじゃ」


 そう、リラーグでのメル達が知る店ではそれが普通だったのだが……


「それリラーグのミアヴィラーチ薬店でしょ? あのね、いくらなんでもあそこまでの高品質、常に新鮮な材料を届けてくれる冒険者でも居ないと無理よ」


 そう言われるとメルは確かに母達が何度も薬草を届けている光景を思い出す。

 その度にシンティアがお礼を言っていてそれは――


『皆様のお蔭で薬の品質が保てますわ』


 と言う言葉だった事も思い出すとメルの耳と尻尾はゆっくりと垂れ始めた。


「それに、リラーグは医療と錬金術の街よ? 私は確かにそれなりの腕はあるけどまだまだ駆け出し、その街に店を構えている方になんて敵うはずないでしょう? 当然名も知られていない私の薬は安いわ」


 溜息交じりのライノの言葉にメルはますます尻尾を垂らし、その様子に溜息をついたリアスは――


「薬を売るのも駄目そうか……困ったな」


 どうしたものかと呟いた。


「リアスちゃんの言うとおりね……でも、稼ぎがない訳じゃないわ、現状で稼ぐならこれしか無いわね」


 屋台を借りるにも、置いてもらうにもお金がかかると知らなかったメルはこれしか無いと言われても現実的ではないと考える……

 事実、物が売れても数を売らなければ儲けが無いのだ……

 どうしたら良い? そう考えると――再びシンティアの姿が思い浮かび――


「直接酒場に行って売るって言うのはどうなんですか? 冒険者なら傷薬はいくつあっても嬉しいですし」

「そうか、確かにそれなら屋台も商人もいらないな」

「そういやシンティアさんも店に売りに来てたなぁ……」


 そう今シュレムが口にした通り、シンティアも直接売りに来た事があったのだ。

 いや、メルの覚えている限りでは世話になっているからと置いて行ったような気もするが其処は重要じゃないと考え、尻尾に力を入れるとライノへと目を向けるが……


「残念だけど、それはやったわでも売れなかったの」

「何でですか?」


 薬なら売れるのでは? ましてやライノの薬だ効果も十分な物だと知る彼女は首を傾げたが……


「無名の薬なんて銅貨六枚なんて高いってね?」


 返ってきた言葉にメルはシュレムに向かい小さな声で「安いと思うけど……」と告げる。

 すると、シュレムは頷きつつ何かを閃いたようにライノへと――


「だったら安くすりゃ良いだろ?」


 と提案をした。


「あのね、シュレムちゃん? 材料取りに行くのもお金がいるのよ? 冒険者を雇ったことはあまりないけれど、身を守る道具を作る為に――」

「なら大丈夫ですね!」

「あのね、メルちゃんまで……」


 ライノは呆れるが、メルはそれが問題だとは思わなかった。

 魔物に襲われる可能性があるつまり、身の安全が保障出来ないから道具を作る。

 その道具にもお金がかかるが冒険者の方がお金がかかってしまうのは明白だ。

 なら、現状は? 冒険者ではないが実力はそこそこあるメル達であれば道具よりは安全ではないか? と思ったからであり――


「だから、いくらメルちゃん達が居ても少しの怪我だって」

「少しの怪我なら、私が治せますしそれなら大丈夫ですよね?」


 返ってくるだろうと思っていた言葉にもメルは対処出来る。

 ソティルという精霊を従える母ユーリには遥かに劣るが、メルは祖母ナタリアが習得できなかった回復魔法の使い手だ。

 ちょっとした怪我なら魔法で直すことが出来、手元にはライノとシンティアの薬もある。

 それさえあれば魔法の効果も高められる事は分かっているのだから。


「な、治すってどうやって!」

「魔法でだろ? メルはちょっとした傷なら治せるんだよ……親のユーリさんはどんな怪我でも生きてれば治しちまうけどな?」

「ちょ、シュレムちゃん? 何を言って……」


 驚くライノの様子にメルは……


 私の魔法もそうだけど、傷を治しちゃう魔法なんて言うものは普通の魔法使いには使えないから当然だよね……


 と理解していた。事実、回復魔法を使える精霊は母ユーリにしか従わない。

 だが、ヒーリングは違うのだ一般化されており、誰でも使えるはずの魔法。

 しかし、不思議な事にその魔法ヒーリングはメルとユーリしか使えない。

 ユーリのヒールよりはるかに劣る為、メルはあまり役に立てない魔法だけど無いよりマシだよね? と考えいたが――


「普通はそんな魔法無いって思うんだろうけど、メルがその魔法を使ってくれてたお蔭で俺は助かったってユーリさんに言われたよ」

「へ?」


 彼女はリアスを驚いた顔で見つめ……


「で、でもあの時、私何も――」

「良く分からないけど、魔法をかけ続けたお蔭で徐々に傷が癒えてたらしくてさ、ギリギリだったらしい。本人には来るのが遅れてたりメルの魔力が少しでも早く尽きてたら間に合わなかったって言われたよ。俺はメルのお蔭で助かった」


 彼女はそう言われると、嬉しい反面ぞっとした……もし少しでも魔法を使うのが遅れてたら、使う事を諦めていたらリアスはここには居なかったのだから。

 もし、そうなってたら……そう思うとメルは途端に怖くなり――


「メ、メル? おい、どうした」

「お姉ちゃん?」

「リアスちゃん、そう言う事は言わないの……」

「おい、リアス! テメェ!! オレの女を泣かしてんじゃねぇぇよ!!」


 何故か仲間達が騒ぎ出した。

 メルはシュレムに泣いていると言われ……まさかと思いつつ手で拭う仕草をすると確かにそこは濡れていて、彼女はいつの間にか泣いていたみたいだ。


「はい、メルお姉ちゃん」


 そんな中エスイルに渡された布を受け取ったメルは涙を拭きながら……


「ありがとう……」


 泣き虫なの直さないといけないなとぼんやりと考えた……


「ええっと、その、悪い……」

「…………リアス?」

「助けてもらったお礼のつもりだったんだ……」


 その事はメルのお蔭で助かったとまで言ったのだから、彼女も理解していた。

 だが、なぜ彼が謝る必要があるのかと思いつつ首を傾げると、リアスは少し照れたのかぽりぽりと頬をかく……


「はい、この話はおしまい、とにかく回復の手段があるのは本当そうね……ならメルちゃんが泣き止んだら薬草取りに行きましょう」

「は、はい、お手数おかけします……」


 メルは顔を赤くしつつそう告げた。





 それから暫くして、泣き止んだメルと仲間達はライノの案内の元、薬草を探しにイアーナを出るために門へと向かう……


「お前達は先日来た物だろう? どうした? 馬車で移動するのではないか?」

「あの、ちょっと暇が出来てしまったので薬草を探しに出かけたいんです」


 何故か威圧的な門兵に対しメルはたじろぎつつもそう答える。

 すると、門兵はうなり……


「いつ戻る?」

「薬草を集め終えてからね、そんなに長い間外には居ないわよ」

「本当か?」

「本当も何も、ただ薬草を取りに行くだけだろ? 追加料金は無し大丈夫のはずだ」

「では戻ってくると言う事でいいんだな?」

「お前しつこいな!! そう言ってるだろ!?」


 何度も繰り返される同じような質問にシュレムは思わず叫ぶが、彼女を止める事は誰もしなかった。

 何故なら門兵は理由を聞けばそれに準じた対応をするのが仕事だ。

 つまり、メルが薬草を取りに行くと言った時点でそれ以上は聞く必要が無い。

 ましてや入る時に金を払う必要はあるが出るのは自由だ……


「……そうか、通って良し!」

「は、はい……」


 何か腑に落ちない気分になりつつもメル達は門をくぐる。


「何なんだよアイツ!」

「シュ、シュレムお姉ちゃん落ち着いて?」


 エスイルになだめられつつもシュレムは怒りをあらわにしている。

 そんな彼女とは別にメルは不安な気持ちになりつつもライノの後をついて行った……


 なんだろう? 何か……変? ううん、そんなはずはないよね……き、気のせいだよ……今はそれよりも薬草をしっかりと取りに行かないと!


 そう思う事で気を紛らわせた彼女は不安な表情のままリアスへと目を向ける。

 すると、その顔を見て彼は――


「メル、その……さっきはごめん……大丈夫か?」


 何故かメルへと謝った。


「え!? ううん、こっちごめんねもう大丈夫だよ!」


 リアスに心配され、なんか気恥ずかしさを感じながらメルはそう答える。

 すると、メルは彼にまじまじと顔を覗き込んできて……


「え、えと……」

「泣いたからか、まだ目が赤いな……」

「だ、大丈夫だよ?」


 恥ずかしい……そう思いつつも目を逸らせず、困惑していると何かもごもごとする声が聞こえ気になったメルとリアスはそっちへと目を向ける。


「あの、ライノさん?」

「何してるんだ?」


 そこにはニコニコとした笑顔の男性がシュレムの口を手で塞いでいる光景が広がっていて……


「あら、何も? しいて言えば若いって良いわねって思ってた所よ?」


 っと笑顔で答えられた……

 メルは何の事だろう? と思いつつ、ライノも十分若いと告げようとするが――


「さっ、薬草探しに行くわよ?」


 その若い薬師はシュレムの口を塞いだまま歩き始め、メル達にそう告げて歩みを進めた。

 案内をしてもらうのだから当然、メル達は後を歩く事になり……


「はい! お手伝い頑張りますね!」


 前を歩く背中に向け……彼女はそう告げた。

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