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46話 騒がしい一行と情報屋

 イアーナへと辿り着いた一行はライノが世話になったと言う情報屋へと向かう事にした。

 そんな中、メルはリアスと共に仲間達から逸れてしまう。

 急いで戻ろうとしたのだが、商人に捕まり髪飾りをリアスに買ってもらい、申し訳なく感じるも受け取った小さな髪飾りを大事そうにしているのだった……

「全く、逸れると迷子になるぞ」

「ご、ごめんね、シュレム……」


 リラーグであればシルフ達が道を知っている事もあり、逸れても迷子にはならないメルだがここは初めての街だ。

 勿論シルフ達が道を知っているはずもなく……シュレムが気が付いてくれたことに安堵した。


「それよりもなんで逸れたんだ? よりにもよって……」

「な、なんだよ……」


 シュレムが睨んだ先をメルが見ると其処にはリアスが居て彼は一言告げるなり少し引いていた。

 姉の様子もいつもより怖い感じがし、もしかしたら喧嘩になってしまうのでは? とメルは慌ててシュレムに向き直り――


「えっと、その私が人とぶつかっちゃって……それで助けてくれたんだよ?」


 と事実を告げるものの……


「ほーう……」


 どうやら全然信じてはいないみたいだ。


「じゃぁその手に大事そうに持ってるのは何だメル?」

「ふぇ!?」


 メルはそう言われて初めて気が付いた。

 その手にはたった今買ってもらった髪飾りを無意識だったのか落とさない様にしっかりと持っていて……


「それに顔もなんだかにやけてるわよ? 良いわね若いって」

「え、っと、その……」


 これは其処の店主がと言おうと思った彼女だったが、買ってもらったのも事実……人の所為にするのもどうかと考えた彼女は言い淀み……


「店主がやけに騒いでたからな……とにかくその情報屋の所に急ごう」


 彼女がそうこうしている内にリアスが代わりに答えた。


「ぁあ?」


 事実だとしても、それで納得するシュレムでは無い事にメルはがっくりすると肩に手が触れた事に気づき顔を上げる。


「気に入ったんだろ? ソレ……」

「う、うん……でも、ごめんね? やっぱり――」


 やはり払おう、そう思ってメルが布袋を取り出そうとしていると、彼は前へと進み……


「落とさない様に気をつけろよ? ほら、行くぞ?」


 とだけ告げられた彼女は……


 悪い気がするんだけど……貰っちゃって良いのかな?


 そう思いつつも手の中にある髪飾りを見ると思わずにやけてしまい……落とさない様に早速身に着けるとリアスの後を追う。

 すると――


「ちょっと!? メルちゃんもリアスちゃんも情報屋の場所知らないでしょう!?」

「メル! オ、オレという者がありながら、他の男からの贈り物を身に着けるのか!?」

「メルお姉ちゃんもシュレムお姉ちゃんも女の子じゃ……?」


 と言う声が聞こえ……


「店主よりも騒がしいな……」

「あ、はは……で、でもライノさんの言う通り、私達は知らなかったよね?」

「そうだった……」


 メルは呆れ顔のリアスと共に仲間達を待ち、今度こそ情報屋の元へと足を進めた。


「メル! それを外せ!」


 近づいて来たシュレムにそう言われつつ手を伸ばされたメルは――


「や、やだ……落として無くしたりしたら、リアスに悪いよ!」


 そう言うと髪飾りを守る様にし、シュレムから離れた。


「メ、メルが汚された……」

「なんでそうなるの!?」


 そして、なんでこの世の終わりの様な顔をしているの!? とメルは心で叫ぶのだった。







 それからメル達はイアーナの中、商人達が多く居るその道を進み続けると……質素な屋台が目に入る。

 木札に「情報有ります」とだけ書かれていて、値段の方は「情報によります」と書いてある。

 ライノが言っていた情報屋とはこの人の事なんだろう、彼は其処に居る男性に近づくと親し気な笑顔を作り声を掛けた。


「久しぶりねリュラートちゃん」

「なんだ、ライノさんじゃないか……今日はどんな材料の情報が欲しいんだ?」


 リュラートと言われた男性の店は小奇麗なものでメル達は驚いた。

 情報屋と言えばクロネコであるリラーグ出の三人にとって情報屋が居る場所を想像しろと言われたらまず、スラム街が浮かぶからだ。

 そんな彼女達が小奇麗な店に感心しているとその情報屋はメル達に目を向け――


「変な護衛だな? 子供ばっかりじゃないか」

「護衛……とは違うのだけどね、ちょっと色々あるのよ」

「今日は頼みがあって来たんだ……」


 リアスがそう言った後、リュラートと言う情報屋は気味の悪い笑みを浮かべ――メルはそれを見て嫌な予感がよぎる。

 彼とは会ったばかりだ……自分は失礼ではないか? と考えた彼女だったがやはり信用が出来ないような感じがしたのだ。


「大丈夫よ、この子の癖みたいな物だから」


 それを察したのかライノににっこりとした笑顔でそう告げられたメルは……


「そ、そうなんですか……」


 とだけ答え、顔に不安が出ない様に意識をしているのか表情が強張っていた。


「それで、頼みってなんだ?」

「まず一つ俺達の情報を売らないで欲しいんだ、それと嘘の情報を流してほしい。どの位かかる?」


 リアスのその言葉に考え込む、リュラートは暫くの沈黙の後……


「金貨二枚だ。ただ……他の情報屋があんたらの情報を売らないとは限らないし、それを押さえるなら十枚だな」


 提示された金額はメルも驚くほどの値段だった。

 流石にリアスも困ったのだろう、メル達へと目を向け――


「流石に手持ちが足りないな……」


 メルは布袋を探って確かめてみると、金貨一枚分位しかなくとてもじゃないが足りる訳が無い。

 そこで姉はどうだろうと目を向けてみるが――


「オレは銅貨一枚も持ってないからな!」


 っと、清々しいまでの態度で言い放つシュレム。


「お、お姉ちゃん!? 持って来なかったの?」


 彼女のそんな様子に驚いたメルはそう聞くが――


「ああ、忘れた!」


 やはりどこか達観した言葉が返ってくるだけだった。

 呆れたメルだったが、彼女は旅が始まってからシュレムが払っている姿を見た事が無いのに気付き溜息をついた。


「酒場にも泊まらないといけないし、私も流石に金貨十枚は無いわ」


 安全を考えればこの街の情報屋を押さえた方が良い、そう思うメルは一つの提案をする。


「皆のお金合わせたら集まらないかな?」


 単純ではあるが、これならば十枚に届くかもしれないと思ったからだ。


「そうだな、一応見てみよう」


 リアス、そしてライノの布袋を受け取ったメルは一枚一枚と数えていく……

 するとエスイルがおずおずとした様子で布袋をメルの元へと持ってきて。


「僕のも使って?」


 と言ってそれを差し出してくれた。

 だが……


「それは取っておいてね?」


 安全の為とはいえ、自分より小さな子にお金を出してもらう訳にはいかないとメルが断ると……


「そうだな、もしもの時の為にそれは取っておいてほしい。もし足りても泊まる宿が無いんじゃ困る」


 メルの言葉に続く様にリアスがエスイルへとそう告げた。

 しかし、少年は引く気が無いみたいで――


「でも……」


 ――と布袋を差し出したまま呟く。


「いやいや二人の言う通りにしとけ、金が無いと旨そうなもん見つけても買えないぞ?」


 それは最もだけど、家に忘れてきた姉が言えたことなのだろうか? と思うメルだったが、それを口にすることなく数えていくと……


「金貨五枚と銀貨三枚、銅貨七枚……皆のを集めてもこれだけか……」

「……駄目ね全然足りないわ」


 十枚には程遠いそれをそれぞれの布袋に戻したメルは溜息をつき――


「仕方ないわね、取りあえず貴方だけでもお願いするわリュラートちゃん」


 受け取った布袋から金貨を二枚取り出したライノは情報屋へと渡す。


「はいよ、毎度あり」


 そう言ってニヤ付きながら金を受け取るリュラートという情報屋を見て、やはり嫌な気がするとメルは思うと一人の人物を思い出す。

 それはリラーグの情報屋クロネコだ。

 確かにクロネコも悪人の様な笑みを浮かべるが、嘘の情報を流したことが一回しかないとメルは聞いていた。

 その一回も結局は母達と協力し、リラーグからギルドを追い出すための作戦の為に折れたとの事だ。

 だからこそ、他の情報屋に不信感があるのかもしれないとメルは思い自分の考えを改めようとしたのだが……


「んじゃ出来る限りの事はさせてもらうぜ」

「…………」


 どういう訳かこのリュラートと言う人の笑みは気味が悪く感じた。


「ええ、よろしくね」


 だが、ライノは馴染みと言う事があるのだろうそう言うと……


「さ、酒場に行きましょう? 今日の宿を決めないとっ!」

「ラ、ライノさん!?」


 メル達の横を通り過ぎその場から離れようと歩き出した。






 暫く歩いた後、酒場へと辿り着いたメル達は店主に声を掛けた。


「あの……」

「ぁあ!? なんだ客か?」


 店の主人の態度はどこか怖く、メルは声を掛けたものの一歩後ろに下がってしまう。


「一部屋しか開いてねぇからな!!」

「……今から探すのも大変だ良いか?」


 だが外はもう暗く、周りには空いている酒場が無いのは探し回った事で分かっていたメルが頷くと――


「その部屋で頼む」


 声を掛けたメルではなくリアスが店主へと告げた。


「チッこっちだ……」


 酒場の店主は苛立った様子で部屋まで案内をし、すぐに部屋から去っていってしまう。

 その様子にメルは不安に思ったのだが、そんな彼女の変化に気が付いたのか怪訝な顔をしたリアスがゆっくりと口を開く――


「メル、情報屋から変だぞ? その途中から顔が怖くなってたけど……」

「……こ、怖い!?」


 怖いと言われた事に少し傷ついたメルだったが、そんなに怖い顔をしていたのか? と気になり部屋にある鏡で自分の顔を確認し始める。


「おいリアス……言っとくがメルだけじゃない、オレもだ……アイツなんか嫌な感じがするんだよ……」


 だが、シュレムも同じだったのだろう、彼女の言葉を聞きメルは鏡から目を離した。


「シュレムも?」

「ああ、クロネコさんとは大違いだ……」

「でも、この街では腕利きなのは確かよ」

「他にあてが無い以上、頼る方が良い……なにせ誤認情報を流させるのは俺達の為なんだからな」


 メルはそう言われエスイルへと目を向ける。

 首飾りを狙っている人が居ると言う事はカロンで味わった……

 当然、エスイルも危険な目に遭う……それが少しでも避けられるのは助かるのには間違いが無い。


「それは、分かってるんだけど……」


 だが彼女にとってには情報屋はクロネコ。

 料金が高い分、その情報は正確で決して裏切らない……頼れる情報屋。

 それに対しリュラートと言う人は何か違う様に感じた。

 だが、それはリラーグの外をあまり知らないメル達だからこそ感じてしまう違和感なのかもしれないと思い、首を傾げる。


「う~ん」

「前にも言ったけどメルが不安がるのは悪くはない……」

「……え?」


 やはり自分の過ぎた心配だろうか? とメルが考えていた時、聞こえてきたのはリアスの言葉……


「情報屋ってのは売れるものは売る、高く売れるものなら尚更だ……金は払ったけど警戒だけは怠らない様にしよう」

「はぁ!? 金払ってもそうなのかよ……」


 リアスの言葉にシュレムは苛ついた様子でそう告げ……それを聞いたライノは真剣な顔でシュレムの肩に手を置いた。


「残念だけど、十枚払えなかった以上……警戒しておいた方が良いわ」

「面倒だなぁ……」


 シュレムの言う通り面倒だと感じたメルだったが、警戒するというのは賛成だ。

 何せ敵は何処から襲って来るのかも分からないのだから……


「じゃぁ、警戒をして馬車の日まで待つって事で良いのかな?」

「ああ、そうしよう……次の馬車の時間は後で調べておくよ」


 この街でも馬車に乗り出て行くまで安心が出来ない事をメルは残念に思いつつ……頷いた。

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