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44話 カロンからの出発

 二人の調子も戻り、メル達は次の街イアーナへと行く準備をし始める。

 だが、そんな時リアスは難しい顔を浮かべつつメルへと近づきある一つの疑問を投げかけるのだった……

「聞くの遅れたが、一つ聞いておきたい事がある」


 同日、買い出しに向かおうとしていたメルにリアスは真剣な顔で声を掛けてきた。

 その顔を見ると若干顔が熱くなった気がし、そっと目を逸らしつつ彼女は聞き返す。


「え、えっと何……かな?」

「俺達を襲った奴は……この村の奴だったのか? 理由は――」

「……それは」


 リアスの質問がなんの事が分かったメルはライノへと目を向ける。

 彼が居るこの場で言っても大丈夫なのだろうか? ついて来てもらう以上、知っておいてもらった方が良いのは確かだが……


「あら、アタシは外に居た方が良いかしら?」

「……いや、居てください。一緒に旅をするならいずれ分かる事だ」


 メルはその言葉を聞くと頷き、口を開く。


「犯人はね正確には二人じゃなくてリアスを狙ってたみたい……」

「……俺? つまり首飾りが狙いだったのか……」


 彼の答えに彼女は再び頷く……


「首飾りって何の事かしら?」

「大事な物なんだ……それとその子エスイルをある村に連れて行かないといけないんだ」


 メルはそう聞いた所でそういえば何処に向かうのかを聞いていない事を思い出し……


「リアス……その、気になったんだけど何処の地方に行くつもりなの?」


 リアスへと尋ねた。


「…………え?」

「いや、え? じゃなくてシュレムは勿論、私もエスイルも最終的にどこに行くか聞いてないような……」

「メ、メルちゃん? そう言うのは初めに確認すべきだと思うの……」


 ライノの呆れた様子を見てメルは最もだと感じたが、聞いていないものは聞いていない。

 いや、正しくは聞くぐらいの時間位はあったはずだが、他の事で頭がいっぱいで聞き忘れていた事を彼女は悔やんだ……


「いや、ごめん……エスイルの母親が知り合いだったからてっきり知ってたかと……そう言えばあの人はリラーグには攫われて来たって言ってたな」


 それなのにリアスはメル達へと頭を下げた上に再び地図を広げると……ある地方へと指を指した。


「俺達が向かっているのはルーフ地方の南端……ヴェンローラっという村だ」

「ヴェンローラ? 聞いた事無いな?」


 シュレムは地図を覗き込むと難しい顔をしそう呟く……当然、メルも聞いた事が無い村だった。


「昔読んだ本によると最初の森族(フォーレ)達の殆どが住み着いた村よ、それ以外の森族(フォーレ)はフォーグへと向かったらしいけど……此処はめったに人が寄り付かないと聞くわよ? 一体なにをしに……」

「精霊を産む儀式をする為にその子を連れて行く……」


 彼がエスイルの方を見てそう言うと三人はつられて少年の方へと目を向ける……


「ちょ、ちょっと待ってね。そのその村では出入りがあまりと言うかここ何年か――」

「それが、エスイルのお母さんは村の近辺から攫われて来たみたいなんです……今はリラーグで結婚して住んでますけど……その所為でこの子にその力があるみたいなんです」

「そして、その力を持った者は試練を受けないといけないみたいで……この首飾りが必要ってわけさ……」


 ライノは彼の話を聞くと軽く握った片手を胸の前に持っていき……


「つまり、首飾りはヴェンローラの物でそれを狙ってる人たちが居るって事ね? はぁ……ますます子供だけじゃ危ないじゃないの大人は全く何をしているの!!」

「え、えっと……」


 それについては理由はあるのだが、原因の一つはメルでありそれをどう言ったものかと彼女は迷った。


「笑ってる場合じゃないでしょ!!」

「その、それは原因が私――」


 だが、言わない訳にはいかないだろう……そう考えた彼女は口を開くが――


「単に俺の金が無かったんだ……冒険者の親が居るメル達に頼もうとしたんだけど、場所が場所だし二人のお蔭でまけてもらった金額でも全然足りなくてな……」


 彼女の言葉はリアスによって遮られ、全く嘘をライノへと告げられる。


「そう言う事なの……」

「……ああ、それなのに二人は手を貸してくれたんだよ、冒険者じゃないからってさ……」

「事情は分かったわ……その精霊がって所以外はね、とにかくヴェンローラまで首飾りとエスイルちゃんを守ればいいのね?」


 メルにはリアスがどういう意味で嘘をついたのかが理解は出来なかった。

 だが、エスイルと首飾りを守り通すと言うのは間違いなく――


「はい、そう言う事です」


 彼女は一言の後に強く頷いた。


「まっエスイルはオレ達には弟みたいなもんだからな、ついて行かない訳にはいかないだろう」


 シュレムはそう言うとリアスの肩を叩き、そっと何かを呟いた。

 それを目にしたメルはちょっと……本当にちょっとだけむっとした気分になったが……なんでそうなったのだろう? と疑問をすぐに浮かべた。


「分かったわ、エスイルちゃんはちゃんと守るわよ。首飾りは何とかしなさい同時に守るのはアタシじゃ出来ないわよ?」

「…………」


 二人の様子が目から離れないメルは自分の中にある嫌な気分が何なのか必死に考えるが――


「メルちゃん?」

「は、はい!? よ、よろしくお願いします!」


 急に名前を呼ばれた彼女は慌ててそう答えるとライノはなぜか笑い……


「ええ、よろしくされたわ」


 と答えてくれた……






 翌日メル達は予定通りカロンを出る事にし、世話になった酒場の主人の元へと向かった。

 とはいっても、店を出る前には顔を合わせる訳だが……


「おう、もう出るのか?」

「うん、その……お世話になりました」


 この数日、酒場には客があまり来ない……理由は間違いなくメル達だろう……


「全くだ、お蔭で客が来やしねぇ!!」

「ぅぅ……」


 告げられた言葉はやはり……という物で言い訳も謝る事も出来なかった。

 確かに理由があったとはいえ、ただの酒場の店主まで巻き込んでしまったんだから……


「だがよ、それでも来てくれる奴は居るし、信用ならねぇ奴を追い出せたのは嬢ちゃんのお蔭だ! 今後ともご贔屓に」

「え……?」


 メルが顔を上げると其処には依然不機嫌な店主の顔があり、今のは幻聴か? と考えていると……


「なんだよ、少しも感謝してないならそもそも泊め続けたりしない。気が付いてなかったのか?」


 確かに店主は追い出す所か鍵の着いた部屋まで手配してくれている。

 その事には感謝しない訳が無く忘れる事も無いだろう、だが――


「で、でも……」

「つまり、お得意が居なくなったから俺達がなれってことだな」


 リアスの言葉に店主は頷き、メルの方へと目を向ける。

 何も言葉にはしなかったが、その顔はまるで「どうだ?」と聞いている様で……


「分かった、また……ううん、カロンに来た時はよろしくお願いします」

「あったりまえだ、稼げなくなった分、嬢ちゃん達から巻き上げてやる、逃げるなよ?」

「あら、さっきまでは感謝してたのに素直じゃないわね」


 ライノが笑いつつそう言うと店主は顔を逸らしてしまったが……それが少しでもお礼と償いになるのならとメルは思い。

 この場に適しているであろう言葉を――


「じゃぁ、行ってきます!」


 ――きっと戻ってくる、彼女はその為にあえて行ってきますと告げた。

 店主は怖い顔のままだったが……


「ああ、行って来い! 無事じゃなかったらただじゃおかねぇからな!!」


 無事じゃ無かった時は来れないんじゃ? とメルは思ったが……

 それを言うのは野暮かと感じ黙って頷こうとすると……


「こっちこそ、メルに手を出したらオレがただじゃおかねぇからな……」


 何故か姉であるシュレムは低い声で唸った。


「シュレム!? だ、駄目だよこれ以上迷惑かけたら!!」

「そうだよ! シュレムお姉ちゃん! おじさんは助けてくれたんだからね!!」


 メルとエスイルが慌ててそう言うと姉はどこか居心地の悪そうな顔になり、頭をゆっくりとかく……


「上等だ! ガキどもさっさと行って来い!!」

「ぅぅ……店主さん、その改めて……」

「チッ……」


 行ってきます、もう一度そう言おうとした彼女だったが、店主の舌打ちが聞こえ言葉を飲み込んだ……だが――


「店主さん、じゃねぇ……」

「……え?」


 続く店主の言葉はメルの予想していなかったもので、彼は――


「俺はスレイフだ」


 不機嫌のままメル達へと名を告げ――

 メルは彼の名を聞くと表情を明るくし、答える。


「私はメアルリース、メルです! スレイフさん行ってきます!」

「おう! 今度こそ行ってきな!!」


 メル達は店主の声をうけ酒場を後にする。

 そして、カロンの村を出た彼女達は……イアーナへ向け歩き始めた。


「イアーナの後もやっぱ歩きなのか?」

「いや、イアーナにはタリム方面への馬車が五日に一回はある……イアーナからは遠いから馬車で移動だ」

「よし、じゃまずはイアーナだね!」


 メルはそう意気込むとエスイルの手を引きイアーナに向け足を向け歩き出すが――


「ああ、だけどメル……」

「ん?」


 リアスに呼び止められた彼女が振り返ると三人は別の方へと足を向けている……そう彼女と手を繋いでるエスイル以外は……


「メルちゃんそっちはリラーグよ? イアーナはコッチ」

「ぅぅ……」


 早速道を間違えた事にシルフに頼んでおけば良かったと後悔しつつメルは赤くなった顔を地面へと向け、リアス達の方へと歩き始めた。

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